【古事記や万葉集にも登場、古名は「みら」】
ヒガンバナ科ネギ属の多年草。原産地は中国西南部といわれ、古い時代に渡来し食用や薬用として栽培されてきた。ギョウザやニラレバ炒めなどによく使われる。8~9月頃、根元から高さ40~60cmの花茎を伸ばし、先端に白い小花を半球状に多数付ける。花は径1cmほど。星形の6弁花に見えるが、実際は花弁3枚とその下の苞3枚から成る。春に咲くハナニラ(花韮)は南米原産の帰化植物で、ニラとは全く別の植物で食用にはならない。
古名は「美良(みら)」。万葉集に1首詠まれている。「伎波都久(きはつく)の岡のくくみらわれ摘めど籠(こ)にも満たなふ背なと摘まさね」(巻14―3444)。「くくみら」は「茎韮」でニラの花茎を指す。このみらが「にら」に転嫁したのではないかといわれる。古事記にも「加美良(かみら)」として登場する。中世に宮中で使われた女房詞(にようぼうことば)ではネギを表す「葱(き)」が「一文字」と呼ばれたのに対し、ニラは「二文字」と呼ばれた。
ニラは栄養価が高い。漢方では葉が「韮白(きゅうはく)」、乾燥した種子は「韮子(きゅうし)」として強壮・健胃・整腸・風邪予防などの生薬として用いられる。匂いの原因物質は硫化アリルなどの硫黄酸化物。国内では高知県香南市やギョウザの町として有名な栃木県宇都宮市周辺が主産地になっている。ただニラはその強い匂いからニンニクやタマネギなどとともに精進料理では「五葷(ごくん)」と呼ばれ忌避されることが多い。禅宗のお寺の門前で見かける石碑「不許葷酒入山門」も、修行の妨げになる臭気の強い野菜類や酒の持ち込みを禁じることを示す。「足許にゆふぐれながき韮の花」(大野林火)