【和名の語源は属名「クレロデンドルム」が転じて?】
インド北部のアッサム~ヒマラヤ地方原産のシソ科(旧クマツヅラ科)クサギ属の常緑小低木(樹高1~2m)。花期は11~12月頃で、垂れ下がった長さ30cmほどの総状花序に華やかな白い花を横向きにたくさん付ける。花径3~4cmの合弁花で、花冠は5つに裂けて雄しべが長く突き出す。
学名は「Clerodendrum wallichii(クレドデンドルム・ウォリッキー)」。属名は「運命」と「樹木」を意味するギリシャ語の合成語。これはセイロン島(スリランカ)で最初に発見された同属の植物2種が「幸運の木」「不運の木」と呼ばれたことに由来するそうだ。種小名はデンマーク生まれの医師・植物学者ナサニエル・ウォリッチ(1786~1854)の名前に因む。ウォリッチはイギリス東インド会社在勤中に多くの植物標本を収集したことで知られ、クラリンドウのほかヒメツバキ、ドンベア(アオイ科)、塊根植物の奇峰錦(ベンケイソウ科)など多くの学名に名が残る。
クラリンドウの渡来時期や和名の語源ははっきりしていない。「リンドウ」と付くが、リンドウ科のリンドウとは全く無関係。可能性がありそうなのが属名のクレドデンドルムが訛ってクラリンドウになったのではないかという説だ。お茶の水女子大学の教授だった植物学者津山尚(たかし)さんも、横文字が日本音化して命名されたルイラソウ(ゴマノハグサ科)などの例を挙げながら、クラリンドウも「属名の不明瞭な発音から由来したものではないだろうか」と研究報告書に記している。