【近世の箱枕や香枕、宝船図なども】
帝塚山大学付属博物館(奈良市帝塚山)で第18回企画展示「眠具ーねむりの道具と文化」が開かれている。近世の箱枕や陶製香枕に加え、古墳時代の玉枕、中国⋅北宋時代の陶製枕、さらには宝船図など夢に関わる資料も展示されている。(下の写真は大阪府高槻市⋅阿武山古墳出土の玉枕=復元品)
企画展の参観は日経新聞10月5日付朝刊で「『殿様枕』とめまい」という記事を目にしたことから。国立循環器病研究センターが1月、高い枕を使っていると脳卒中の一因である突発性椎骨動脈解離の発症リスクが高まるとして「殿様枕症候群」と名付けたという。折よく「眠具」展開催中。そこで江戸時代の枕の実物を見ようと思い立ったわけだ。
上と下の写真は江戸~明治時代の「漆塗船底箱枕」。いずれも髷や結髪が崩れないよう、高さがやや高め。下の枕は底が弧を描き髪形が崩れないよう、頭の動きに合わせ左右に揺れる。
江戸~明治時代には化粧道具や貴重品を収納できる引き出し付きの物入れ枕も作られた。それにしても、どの箱枕もかなり高い。日経の記事によると、当時から「4寸(約12㎝)だと髪形が乱れないが3寸(約9㎝)の方が長生きする」といった説があったそうだ。
下は明治~大正時代の陶製香枕。中に香を入れて焚くと、良い香りに包まれて寝ることができる。
中には約1000年前の中国製も。北宋時代(960~1127)の磁州窯(現河北省磁県)の「白地劃花牡丹文枕」。牡丹の文様に透明の釉薬をかけた優美な一品だ。
枕以外には宝船図なども展示中。京都⋅五條天神社の宝船図は舟に稲穂が乗ったシンプルな構図。この天神社の図柄が宝船図の最古のものとの説もあるそうだ。
「聖護院門跡 宝船図」(明治時代)には帆に悪夢を食べてくれるという貘(バク)の文字、その周りには七福神を象徴するもの、例えば百足(毘沙門天)、巾着(布袋)、鶴⋅松(福禄寿)などか描かれている。企画展示の会期は11月2日まで。
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