【景石を保存化学処理、池底・護岸の玉石や礫敷きも修理】
国の特別史跡・特別名勝「平城京左京三条二坊宮跡庭園」(奈良市三条大路一丁目)の保存整備工事が3月末の完成に向け最後の仕上げ段階に入っている。この宮跡庭園は約1250年前の奈良時代中期に造られた古代の庭園。遺構を1985年度に保存整備し、露出展示という形で実物を一般公開してきた。しかし、それから30年余を経過し園池の景石に亀裂や破損が見られることなどから、2014年度から6年がかりで保存整備工事を進めてきた。
この庭園は1975年に奈良郵便局庁舎の移転に伴う発掘調査で発見された。宮跡庭園という名は「北宮」と記された荷札木簡が出土し、平城宮の離宮的な施設や皇族の邸宅(宮)だったとみられることによる。庭園は平安時代の初めまで存続していたとみられ、奈良時代の当時の姿をそのまま残す貴重な庭園として、1978年に国の特別史跡、92年には国の特別名勝に指定された。この両方に指定されているのは他には平城宮東院庭園と毛越寺庭園(岩手県平泉町)しかない。
庭園中央を占めるのはS字状に屈曲する幅2~7mの小川のような石組みの池。池の底には径20~30cm大の玉石が敷き詰められ、汀も玉石が一列に並んで輪郭を縁取る。池の中など要所要所には数十cmから1m大の景石がアクセントとして約120個配されている。池の総延長は約55m、水深は20~30cm。曲水の宴を催すことができる宴遊施設だったとみられる。池の底2カ所からは水生植物を植えていたと思われる木枠で組まれた桝形も出土した。庭園西側には池を観賞する南北に長い高床式の建物が復原されている。
今回の保存整備工事の最大の課題は亀裂や破損が見られた景石約60個の修理。鎖と滑車のチェーンブロックを使って人力で一つひとつ吊り上げ、洗浄や乾燥、接着、薬剤含浸などの保存化学処理を施したうえ、再びミリ単位の精度で元の位置に戻していった。景石の修理は2017年度までに終了し、昨年度は護岸の玉石や池底石などの修理を行った。最終の今年度は池周辺の礫敷き部分の整備に続いて芝の張り替え、樹木の剪定・伐採などに取り組む。池全体を覆う工事用の素屋根もまもなく取り払われ、再生した古代の庭園が再び姿を現す。