【 弘法大師開山の眼病平癒⋅厄除けの霊場】
滝谷不動尊(大阪府富田林市)に初参拝した。「瀧谷のお不動さん」として知られるが、正式名は瀧谷不動明王寺。平安時代の821年に弘法大師空海が開山した。本堂に祀られる本尊、不動明王(重要文化財)は「目の神様」や「どじょう不動様」などとも呼ばれる。ここに伝わる眼病平癒の“身代わりどじょう”という独特な信仰に好奇心がそそられた。
近鉄瀧谷不動駅から東へ徒歩15分ほど。その境内は車が行き交う府道の峠を少し下った所に広がっていた。府道を挟んで北側に本堂や多宝塔、南側に瀧不動堂、西国三十三所堂、 三宝荒神堂などが立地する。
本堂にお参りし御朱印を頂いた後、早速、瀧不動堂のそばにある身代わりどじょうの放流場へ。紅葉を眺めながら緩やかな参道を下ると、右手に瀧不動堂、正面奥に瀧行場、左にどじょうの流し場が見えてきた。その途中、右側に一願不動堂 (下の写真)と2体の瀧地蔵が鎮座していた。
「身代わりどじょうの由来」と題した案内板のそばの建物に、小さなどじょうが1匹ずつ入ったコップがずらりと並べられていた。由来によると、このどじょう流しは魚や鳥を放つ仏教の「放生」の伝統に沿ったもので「放たれたどじょうが身代わりになって自分の目を助けてくれる」という。
並んだコップの上に「お知らせ」が貼られていた。「諸般の事情により一杯二百円を本年十月一日より三百円とさせていただきます」。前回100円が200円になったのは2020年12月だったという。諸物価高騰の時節柄とはいえ、4年あまりで3倍とは!
「つい数年前まで 100円だったのに」。どじょう流しにやって来た参拝者の口からもそんな苦笑が漏れていた。どじょうは「ここから流して」と書かれた挿入口から流すと、白いパイプを伝って眼下の小川に放たれる。
この後、再び紅葉を愛でながら石段を上り、惣拝所、西国三十三所堂、三宝荒神堂を巡った。惣拝所は聖観音をお祀りしており、その背後の建物に安置した西国三十三所を一堂に拝礼できる。色鮮やかなステンドガラスが印象的だった。
西国三十三所堂は半円形の建物で、1番札所の那智山青岸渡寺から33番谷汲山華厳寺まで本尊の仏像が扇状に並ぶ。ここ1カ所で全山のお砂踏みができるわけだ。
さらに石段を上ると三宝荒神堂(上の写真)に達する。そこからの眺めが絶景だった 。本堂の裏山に立つ二重の多宝塔が見えた。
瀧谷不動尊は眼病平癒だけでなく、商売繁盛や交通安全、厄除け祈願などでも広く信仰を集める。境内には時折、車の交通安全を祈祷する太鼓の音が鳴り響いていた。