399)水素ガス吸入の間質性肺炎予防効果。

図:抗がん剤治療や胸部の放射線治療は、ヒドロキシル・ラジカル(・OH)の発生によって肺胞上皮細胞を傷害し、さらに肺間質組織の酸化傷害や炎症によって肺胞壁の浮腫や炎症細胞の浸潤が起こって間質性肺炎となる。さらに炎症が持続すると間質の線維化(結合組織の増加)が進行して肺線維症となる。間質性肺炎や肺線維症の発症は放射線治療や抗がん剤治療の重篤な副作用となる。分子状水素(H2)はヒドロキシル・ラジカル消去作用や、シグナル伝達系や遺伝子発現に作用して抗酸化酵素の誘導や抗炎症作用を示す。放射線治療や抗がん剤治療による間質性肺炎や肺線維症の予防や治療の対策として水素の効果が指摘されている。

399)水素ガス吸入の間質性肺炎予防効果。

【抗がん剤や放射線治療の副作用はほぼ100%に発生する】
一般的に、抗がん剤や放射線照射は増殖の早い「細胞分裂を行っているがん細胞」をターゲットにしています。細胞分裂していないがん細胞は抗がん剤や放射線治療の感受性が低いので生き残りますが、細胞分裂を行っている細胞の多くは抗がん剤や放射線で死滅します。
しかし、抗がん剤も放射線もがん細胞と正常細胞を区別できません。したがって、「細胞増殖の盛んな正常細胞」も抗がん剤や放射線治療で死滅したりダメージを受けます。
例えば、細胞増殖が盛んな白血球や消化管粘膜上皮細胞や毛根細胞は抗がん剤で死滅しやすいので、抗がん剤の副作用として白血球減少や消化器症状(吐き気や食欲不振や便秘や下痢など)や脱毛が起こります。
副作用は治療中に現れる急性のもの以外に、治療が終了して長期間経過したあとに現れる晩期の副作用(後遺症)があります。2次がん(がん治療が原因で新たに発生するがん)のように何年も経過してから発生する副作用もあります。
程度の差はありますが、基本的には抗がん剤治療と放射線治療の副作用は、これらの治療を受けた患者さんのほぼ100%に発生すると言っても過言ではありません。
抗がん剤や放射線のダメージは細胞分裂している細胞だけに起こる訳ではありません。細胞分裂していない心筋細胞神経細胞もダメージを受け、心筋傷害(心機能低下)末梢神経障害(しびれ、味覚障害など)認知機能の低下などの副作用が発生します。肺組織の間質に炎症や線維化が起こる間質性肺炎も細胞分裂している細胞の傷害とは関連がありません。
このような心筋や神経や肺や腎臓や肝臓など多くの組織に対して抗がん剤や放射線はダメージを与えますが、その主なメカニズムは活性酸素の産生です。
活性酸素、特に細胞傷害性が強いヒドロキシル・ラジカル(Hydroxyl radicals)が細胞や組織の酸化傷害を引き起こし、炎症性細胞の浸潤、炎症性サイトカインの産生、線維芽細胞からの結合組織の産生亢進などの炎症反応を引き起こします。
このように、抗がん剤や放射線照射の副作用には、正常細胞の細胞分裂が阻害されて発生する場合(白血球減少や脱毛)と、ヒドロキシル・ラジカルなどの活性酸素の発生による細胞のダメージによる場合(間質性肺炎、心筋傷害、神経障害など)があります。(下図)

図:正常細胞もがん細胞も細胞分裂によって数を増やす。放射線や抗がん剤は細胞分裂している細胞の分裂過程を阻害することによって1個が2個になる所をゼロにする(分裂期で細胞を死滅させる)治療である。そのため、細胞増殖の盛んな細胞がダメージを受け、「分裂の盛んながん細胞」が死滅すれば治療効果(有効性)になるが、「細胞分裂を行っている正常細胞」も死滅させると副作用になる(左)。また、放射線と抗がん剤は組織にヒドロキシル・ラジカルなどの活性酸素の産生を増やして組織や細胞にダメージを与える。ダメージを受けた組織は炎症性サイトカインの産生や結合組織の産生が起こり、炎症が進行すると組織構造の破壊や機能低下が生じる。
 
【間質性肺炎とは】
肺は鼻と気管支を通して肺胞に空気を取り込み、空気中の酸素を体内に取り込んだり老廃物の二酸化炭素を排出する「呼吸」を行う器官です。
気管支は分岐を繰り返して無数の細気管支になり、細気管支の先端に肺胞がぶどうのように密集しています。この肺胞でガス交換が行われます。肺胞から取り込んだ酸素は間質(結合組織)にある毛細血管の中の赤血球に取り込まれて全身に酸素が運ばれます。
間質とは血管やリンパ管や神経などがある結合組織です。肺の場合、気管支粘膜の上皮細胞や肺胞上皮細胞を支持する結合組織(線維芽細胞やコラーゲン線維や血管やリンパ管や神経などが存在する)です。(下図)
図:細気管支の先端に肺胞がぶどうのように密集しており、この肺胞でガス交換が行われる。肺胞から取り込んだ酸素は間質(結合組織)にある毛細血管の中の赤血球に取り込まれて全身に酸素が運ばれる。間質には血管やリンパ管や神経や免疫細胞や線維芽細胞やコラーゲン線維などが存在する。
 
肺炎(pneumonia)とは肺の炎症性疾患の総称です。気管支に細菌感染などで炎症が起こると「気管支炎」と呼ばれ、肺胞に細菌や真菌などが感染すると「肺胞性肺炎」になります。
肺の間質組織に炎症を来す疾患を「間質性肺炎(interstitial pneumonia)」あるいは「間質性肺臓炎(interstitial pneumonitis)」と言い、間質性肺炎が進行して結合組織が増えて線維化した状態を「肺線維症(pulmonary fibrosis、lung fibrosis)」と言います。
間質性肺炎を引き起こす原因として、薬剤・膠原病(自己免疫疾患)・ウイルス感染・放射線などがあります。原因不明の場合も多くあります。
間質に炎症や線維化が起こるとガス交換機能が大きく障害されるので、呼吸困難(息切れ)が起こります。治療法はステロイドによって炎症や線維化を抑制することですが、一般的には治療が困難なことが多い病気です。
 
抗がん剤による間質性肺炎は基本的にどんな抗がん剤でも起こり得るものであり,古いものではブレオマイシンによる肺障害が有名です。ブレオマイシンは1962年に放線菌から発見された抗がん剤で、間質性肺炎の実験モデルの作成法として利用されているくらい用量依存的に間質性肺炎が発生します。
非小細胞肺がんの治療薬のゲフィチニブ(イレッサ)は発売当初は間質性肺炎による副作用死が数多く発生し問題になりました。
放射線照射による肺障害はヒドロキシル・ラジカルの発生が主な原因です。放射線による細胞ダメージの60~70%はヒドロキシラジカルによって引き起こされると言われています。
抗がん剤による肺障害の発生機序は、薬剤やその代謝産物による直接的な細胞傷害や、アレルギー反応など免疫機序による細胞傷害などが関与していますが、細胞傷害にはヒドロキシル・ラジカルなどの活性酸素が大きく関与しています。
 
【水素は間質性肺炎を予防する】
水素含有溶液のエアロゾル吸入が放射線肺臓炎の予防に効果が期待されています。以下のような論文があります。
 
A possible prevention strategy of radiation pneumonitis: combine radiotherapy with aerosol inhalation of hydrogen-rich solution.(放射線肺臓炎の可能な予防戦略:放射線治療と水素含有溶液のエアロゾル吸入の併用)Med Sci Monit. 17(4): HY1-4, 2011年
【要旨】
放射線治療は、がん治療の重要な治療法の一つである。放射線治療において照射放射線量を増やす際に放射線肺臓炎の発生が大きな問題であり、この放射線誘発性合併症を防止することが重要である。
水素はヒドロキシラジカルとペルオキシナイトライトラジカルを選択的に消去することによって、効果的かつ安全な放射線防護剤としての可能性を有することが、近年の多くの研究で示されている。
電離放射線で誘発される細胞損傷の大部分は、ヒドロキシルラジカルによって引き起こされているので、水素を豊富に溶存している溶液のエアロゾル吸入と放射線療法を組み合わせることは、放射線肺臓炎を予防するための効果的かつ新たな戦略になりうると思われる。水素は爆発性であるが、分子状水素で飽和した生理食塩水などの水素含有溶液は安全である。
 
肺がんや乳がん、ホジキンリンパ腫、転移性肺がんなどに対する放射線治療では、放射線が当たる肺の領域に放射線肺臓炎が起こり、これが致命的な副作用になることがあります。
ヒドロキシラジカル(hydroxyl radicals)ペルオキシナイトライト・ラジカル(peroxynitrite radicals)は非常に強い酸化剤であり、細胞の核酸や脂質やタンパク質と反応し、DNAの変異や細胞脂質の過酸化やタンパク質のダメージを引き起こして細胞を傷害します。
ヒドロキシラジカルやペルオキシナイトライトラジカルによる細胞傷害を水素分子が防ぐ作用があることが様々な実験モデルで示されています」。
さらに水素は、細胞内シグナル伝達系や遺伝子発現に作用し、グルタチオンやスーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD)などの抗酸化物質や抗酸化酵素の産生を増やす作用が報告されています。
肺胞の上皮細胞がダメージを受けて、肺胞壁の浮腫や血管内の血栓形成、肺胞内への出血、白血球などの炎症性細胞の浸潤が起こり、炎症性サイトカインは活性酸素の産生が増え、線維芽細胞が増殖してコラーゲンなどの結合組織が増えてきます。
このような間質性肺炎や肺線維症の発生を、ヒドロキシル・ラジカルやペルオキシナイトライト・ラジカルを消去する水素が予防する可能性があり、投与法として水素を含有した溶液のエアロゾルの可能性を指摘しています。
水素が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行を抑制する効果があるという報告もあります。
 
Hydrogen Therapy may be a Novel and Effective Treatment for COPD.(水素治療は慢性閉塞性肺疾患に対する新規で有効な治療法かもしれない)Front Pharmacol. 2011 Apr 12;2:19. doi: 10.3389/fphar.2011.00019. eCollection 2011.
 
COPDは、タバコや有毒ガスや微粒子の長期間の吸入によって肺の慢性的な炎症が起こり、肺胞の破壊が進行する病気です。COPDの発症機序に活性酸素、とくにヒドロキシル・ラジカルとペルオキシナイトライト・ラジカルの関与が大きいため、この2つのラジカルを消去する水素はCOPDの進行抑制に効果がある可能性を報告しています。
 
肺疾患以外にも、2型糖尿病、メタボリック症候群、脳梗塞、神経変性性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病など)、潰瘍性大腸炎や慢性関節リュウマチなどの自己免疫疾患や慢性炎症性疾患など多くの疾患に対して水素の有効性が報告されています。抗がん剤の様々な副作用の軽減効果も報告されています。
 
【水素は抗がん剤の副作用を軽減する】
シスプラチンの副作用を水素が軽減する効果が報告されています。
シスプラチンは多くのがんに効果がある抗がん剤ですが、腎臓毒性が用量制限毒性(dose-limiting toxicity)となっており、腎臓障害が発生すると十分な量を投与できなくなります。

シスプラチンは腎臓細胞のミトコンドリアのダメージを引き起こして活性酸素のヒドロキシラジカルの産生量を増やし、このヒドロキシラジカルによって腎臓細胞が酸化障害を受けることが腎毒性の主な原因になっています。

一方、シスプラチンは細胞における還元型グルタチオンの産生量を減少させるので、細胞の抗酸化力が低下し、腎臓が酸化障害によるダメージを受けやすくなります。
このように、ヒドロキシラジカルを主体とする活性酸素による酸化ストレスの増大が、シスプラチンの副作用の原因になっています。

ヒドロキシラジカルのスカベンジャー(消去物質)は、シスプラチンの腎臓障害を軽減できることが動物実験で示されています。

水素分子はヒドロキシラジカルを強力に消去する活性を持っています。水素分子の投与が、シスプラチンの抗腫瘍効果を弱めることなく、その腎毒性を軽減することがマウスを使った実験で報告されています。
 
Molecular hydrogen alleviates nephrotoxicity induced by an anti-cancer drug cisplatin without compromising anti-tumor activity in mice.(水素分子は抗腫瘍効果を弱めることなく、抗がん剤シスプラチンによる腎臓毒性を軽減する)Cancer Chemother Pharmacol. 64(4):753-61. 2009年
 
【要旨】
目的:シスプラチンは多くのがんの治療に広く使用されている抗がん剤であるが、シスプラチンの投与は酸化ストレス増大による腎臓毒性によって制限されることが多い。私たちの研究グループは水素分子(H2)が抗酸化剤として有効であることを報告してきた。(Ohsawa et al. in Nat Med 13:688-694, 2007)。この研究では、酸化ストレスを軽減する効果によって、水素分子がシスプラチンの抗腫瘍効果を阻害することなく、副作用を軽減することを明らかにした。
方法:マウスにシスプラチン(腹腔内に17mg/kg)を投与した後、水素を1%含有する空気の充満したケージで飼育した。また、水素含有ガスの吸入の代わりに、水素水(0.8mMのH2を含む水)を自由に飲用させた。有効性は、酸化ストレス、死亡率、体重減少について評価して対象グループと比較検討した。腎臓障害の程度は、腎臓の病理学的所見、血清クレアチニンと尿素窒素(BUN)の測定によって評価した。
結果
1)水素の吸入は、シスプラチンによって引き起こされる死亡と体重減少を改善し、腎臓障害を軽減した
シスプラチンを17mg/kg1回投与したマウス(対象群)は、シスプラチン投与2日目から死亡し始め、6日目の生存率は60%であった。一方、シスプラチン投与後1%水素含有空気の充満したケージで飼育したグループ(水素投与群)では、5日目まで生存率は100%で、9日目の生存率は80%であった。
シスプラチン投与3日後の体重減少は、対象群が9.7%で、水素吸入群が3.5%であった。
シスプラチン投与72時間後には、血清クレアチニンと尿素窒素は約2~4倍に上昇した。シスプラチン投与72時間後の血清クレアチニン値の平均値は、対象群が9.6mg/Lに対して水素吸入群は5.7mg/L、尿素窒素(BUN)値の平均は、対象群が863mg/Lに対して水素吸入群は477mg/Lであり、1%水素含有空気の吸入によって腎臓障害の軽減を認めた。
2)水素水の飲用で水素を体内に投与できる
水素分子は水に溶解し、0.8mMの飽和濃度に達した。血中の水素濃度を測定するためには数mlの血液が必要なので、ラットを用いて、水素水の飲用で水素が血中に移行するかどうかを検討した。水素水をラット1匹(230g)当たり3.5mlを胃内にカテーテルで注入し、3分後に血中の水素濃度を測定した。血中の水素濃度は、食後投与で3.7倍、空腹時投与で7.6倍に上昇した。すなわち、水素水の飲用で、体内に水素分子を投与することができることが示された。
3)マウスにシスプラチン投与後、水素水を自由に飲用させると、酸化ストレス、死亡率、体重減少が改善した
腎臓における酸化ストレスの評価として、脂質の過酸化によって生じるmalondialdehyde (MDA)の量を測定した。シスプラチン投与によって腎臓組織のMDAは約1.5倍に上昇したが、水素水を飲用した群では正常レベルに低下した。
水素水の飲用は、病理学的検査で腎臓細胞のアポトーシス(細胞死)の減少を認め、血清クレアチニンとBUNで評価した腎臓障害も軽減した。その効果は1%水素含有空気とほぼ同じレベルであった。
4)水素水はシスプラチンの副作用を顕著に軽減したが、シスプラチンの抗腫瘍効果は弱めないことを、培養細胞を使った実験(in vitro)と移植腫瘍マウスを使った実験(in vivo)で確認した。
結論水素はシスプラチンの副作用を軽減するので、抗がん剤治療中の患者のQOL(生活の質)を改善する効果が期待できる
 
【注釈】

シスプラチンは白金製剤で、細胞分裂しているがん細胞のDNAにダメージを与えて抗がん作用を発揮します(DNAの構成塩基のアデニン、グアニンのN-7位に結合してDNAを架橋して細胞分裂を阻害する)。この抗がん作用には水素分子は何ら影響を及ぼしません。

シスプラチンはSH(sulph-hydryl)基に親和性があるため、SH基を持っているグルタチオン(GSH)の枯渇を引き起こします。その結果、抗酸化力が低下し、活性酸素、とくにヒドロキシラジカルが蓄積して、腎臓障害を引き起こします。
シスプラチンは主に腎臓から排泄されるため、腎臓に最もダメージを与えます。

DNAにダメージを与える抗がん剤は、通常は細胞分裂している細胞(骨髄細胞、腸粘膜細胞など)にダメージを与えて副作用を引き起こします。
しかし、抗がん剤治療によって活性酸素の産生量が増えたり、抗酸化力が損なわれると、分裂をしていない細胞にも酸化障害によってダメージを与えます。

多くの抗酸化剤(ビタミンE、ビタミンC、セレン、カロテノイド、メラトニンなど)がシスプラチンの腎臓毒性を軽減する効果があることが動物実験で確かめられています。水素分子は、これらと比較して、より高い効果が期待できます。

その理由は、水素はヒドロキシル・ラジカルのみを消去し、スーパーオキシドや過酸化水素には作用しないからです。
ヒドロキシル・ラジカルは細胞傷害を引き起こす有害な活性酸素ですが、スーパーオキシドや過酸化水素は、正常細胞の増殖やシグナル伝達や、生体の防御機構にも重要な役割を果たしています。したがって、水素は抗がん剤による酸化ストレスを軽減する理想的な抗酸化剤と言えます。

αリポ酸やセレンやコエンザイムQ10などの抗酸化剤のサプリメントの摂取に加え、水素ガスの入浴、水素水の飲用、水素ガス吸入は、抗がん剤の副作用軽減に極めて有用です。
 
【水素は酸化ストレスや炎症を抑制してがん細胞の発生や増殖を抑える】
酸化ストレスや炎症反応はがん細胞の発生や増殖を促進するので、抗酸化作用(ヒドロキシルラジカル消去作用)や抗炎症作用のある水素分子が抗腫瘍効果を発揮する可能性があります。
培養がん細胞(ヒト舌がん細胞、線維肉腫細胞)を使った実験で、培養液に水素を溶存させるとがん細胞の増殖が抑制されるという結果が報告されています。(Oncol Res. 17: 247-255, 2008年)
動物実験では、マウスに放射線を照射して胸腺リンパ腫を発生させる発がん実験において、水素の投与ががんの発生を抑制する効果が報告されています。(Int J Biol Sci. 7: 297-300,2011年)
水素には血管新生を阻害する作用が報告されています。抗がん剤や放射線治療に血管新生阻害作用のある方法を併用すると抗腫瘍効果を高めることができます。
潰瘍性大腸炎のラットの実験モデルで、水素の投与は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現を抑制する作用が報告されています。(J Surg Res. 185(1):174-81. 2013年)
水素分子には様々な実験系で、炎症過程を増悪させる炎症性サイトカイン(IL-1やTNF-αなど)やNF-κBシグナル伝達系を抑制する作用が報告されています。これらの抗炎症効果は血管新生阻害や直接的な抗がん作用によってがん細胞の増殖を抑えます。
ただし、放射線治療や抗がん剤治療においては、ヒドロキシラジカルなどの活性酸素の産生ががん細胞を死滅させる効果と関連していることが多いので、放射線照射中や抗がん剤投与の最中(がん細胞を死滅させているとき)には水素の摂取は推奨できません。(259話参照)
しかし、照射や投与を行っていない間は積極的に水素を体内に取り入れることは、これらの治療の副作用軽減やがん細胞の増殖抑制に効果が期待できます。(放射線照射中や抗がん剤の点滴中でなければ水素ガスの吸入は問題ない
抗がん剤治療中でも、その薬の作用が活性酸素と関係ない抗がん剤(分子標的薬、抗体薬、代謝阻害剤など)では、それらの抗がん剤の内服あるいは投与を受けている最中でも水素の摂取は問題ありません。
 
【簡易水素ガス発生装置を用いた水素吸入療法】
首都大学東京と日本のケミカルメーカー(株式会社パル・コーポレーション)による産学公連携の研究で、分子状水素ガス(H2)を大量に発生できる発泡水素発生材(発砲水素材)開発されました。水素ガスが目で確認でき、家庭で安全に使える化学製品です。 
この発泡水素発生材は、素材は全て食品添加物で調合され、水に沈めるだけで始まる化学反応で、純度99.9%の分子状水素ガス(H2)を1グラムあたり500ml~600mlと大量に発生させます。
原理は、<酸化カルシウム粉末>+<アルミニウム粉末>+<水>が反応して<アルミン酸カルシウム>+<水素ガス>が発生するという反応です。 
この発泡水素材は1グラム当たり500ml以上の水素ガスを発生します。1モルの水素(H2)は2グラムで、体積は22.4リットルになります(22.4リットルの中にアボガドロ数の約6x[10の23乗]個の水素分子が存在する)。したがって、25グラムの発泡水素材から発生する12.5リットルの水素ガスは約1.1グラムの水素分子に相当します。現在販売されている水素水の水素分子の濃度は1ppm前後です。1ppmというのは、その水素水1リットルの中に1mgの水素分子が溶けていることを意味します。

1mg(ミリグラム)は1g(グラム)の1000分の1ですので、25gの発泡水素材が発生する水素ガスの量は、市販されている水素水の約1000リットルに相当する量だと言えます。(発生した水素ガスを全て吸入できるわけでは無いので、あくまでも利用できる水素の量での比較です)。
この発泡水素材を使用して簡易に水素ガスを吸入できる器具を用いて、抗がん剤や放射線治療の副作用軽減や慢性炎症性疾患や自己免疫疾患など様々な疾患の治療に数年前から利用していますが、確かに効果はあるようです。(患者さんのリピート率が高いので効果が期待できると判断)
水素の効能から、抗がん剤治療の抗腫瘍効果を妨げずに、抗がん剤治療による間質性肺炎や心筋傷害や神経障害(しびれ、味覚障害、難聴など)の予防効果が期待できます。水素ガス吸入水素入浴を積極的に利用する価値はあるように感じています。
 
水素ガス吸入療法:
 
 
水素ガス入浴:
 
銀座東京クリニックでは水素ガス入浴や水素ガス吸入を健康増進や病気の治療目的で利用しています。詳細は以下のサイトをご覧下さい。
 
 

◎ 自宅でできる『水素ガス吸入療法』についてはこちらへ

ハイドリッチ

水素を最も効率的に体内に取り入ることができる水素ガス吸入を自宅で安全に実践できる製品です 

◎ 安全性の高い水素ガス吸入機  MHG-2000α

精製水(蒸留水)の電気分解により水素ガスを発生させます。 6.0〜7.5%の高濃度の水素ガスを長時間および長期間吸入する場合に適しています。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 398)糖質制限... 400) 医薬品の... »