がんの予防や治療における漢方治療の存在意義を考察しています。がん治療に役立つ情報も紹介しています。
「漢方がん治療」を考える
436)β-カリオフィレンとカンナビジオールの相乗効果
図:大麻(マリファナ)や農業用大麻(ヘンプ)に含まれるカンナビジオールはヒスタミン受容体の5-HT1Aやペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)、TRPVなどへの作用やカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)へ作用して生理作用を発揮する。黒こしょうなどの香辛料やコパイバや大麻の精油に含まれるセスキテルペンのβ-カリオフィレンはCB2の選択的アゴニストとして作用する。このような作用機序で、カンナビジオールとβ-カリオフィレンは相乗的に作用して抗炎症作用・鎮痛作用・抗不安作用・抗うつ作用などを示す。その結果、この2つの組合せは、様々な炎症性疾患や疼痛性疾患や神経変性疾患やがんに対して治療効果を発揮する。
436)β-カリオフィレンとカンナビジオールの相乗効果
【体内には大麻成分のカンナビノイドが結合する受容体がある】
大麻草には400を超える化合物が分離・同定されていますが、そのうち約80がカンナビノイドと呼ばれる大麻草固有の成分です。カンナビノイドのうち幾つかは体の中のカンナビノイド受容体に結合することによって様々な薬効を発揮します。
カンナビノイド受容体はGタンパク質共役型受容体(7回膜貫通型受容体)で、CB1とCB2の2種類が見つかっています。(434話参照)
カンナビノイド受容体タイプ1(CB1)は中枢神経系において様々な神経伝達調節を行っており、記憶・認知、運動制御、食欲調節、報酬系の制御、鎮痛など多岐にわたる生理作用を担っています。
カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)は免疫細胞や白血球に多く発現し、免疫機能や炎症の制御に関与しています。
CB1は中枢神経系に多く発現し、CB2は免疫細胞に多く発現するという特徴はありますが、カンナビノイド受容体(CB1とCB2)は他の多くの組織の細胞にも存在し、多彩な生理機能の調節に関与しています。
カンナビノイド受容体のCB1やCB2に結合する内因性カンナビノイドとしてアナンダミド(Anandamide)や2-アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol)などが発見されています。
内因性カンナビノイドのアナンダミドと2-アラキドノイルグリセロールは細胞膜のリン脂質からホスホリパーゼによって生成されるアラキドン酸の代謝産物です。生理的あるいは病的刺激によってオンデマンド(要求に応じて)に細胞膜のリン脂質を分解して合成・分泌されて、カンナビノイド受容体を刺激して生理作用を示すのです。
つまり、体内には内因性カンナビノイド(AEAや2-AG)と、それらを合成する酵素や分解する酵素、カンナビノイド受容体によって内因性カンナビノイド・システムが存在します。
この内因性カンナビノイド・システムが関与している疾患として、多発性硬化症、脊髄損傷、神経障害性疼痛、がん、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、緑内障、肥満、メタボリック症候群、骨粗鬆症などが報告されています。
これらの疾患の治療に内因性カンナビノイド・システムの正常化や活性化が有効である可能性が示唆されているのです。
現在、カンナビノイド受容体に作用する物質は100種類以上が知られています。すなわち、生体内で合成される内因性カンナビノイド(アナンダミド、2-アラキドノイルグリセロールなど)、大麻草(Cannabis sative)に含まれる植物性カンナビノイド(テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオールなど)、医薬品の開発目的で合成されている合成カンナビノイドなどがあります(下図)。
図:カンナビノイド受容体(CB1, CB2)はGタンパク質共役型受容体(7回膜貫通型受容体)の一種で、 この受容体に作用する物質として、生体内で合成される内因性カンナビノイド(アナンダミドなど)、大麻草(Cannabis sativa L.)に含まれる植物性カンナビノイド(Δ9-テトラヒドロカンナビノールなど)、医薬品の開発目的で合成されている合成カンナビノイドなどがある。
【大麻と医療大麻と合成カンナビノイド】
日本では大麻取締法で大麻の医療目的での使用も禁じられているため、精神変容作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)を製剤化したものや、大麻(マリファナ)抽出物由来の医薬品などは日本では一切使用できません。しかし、欧米では医療大麻や合成THCなどが
使用されるようになっています。
ドロナビノール(Dronabinol)は合成したΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)製剤で、商品名はマリノール(Marinol)と言い、米国やドイツなどで処方薬として認可されています。THCには食欲増進や吐き気止め作用があり、エイズ患者の食欲不振や体重減少、抗がん剤治療による吐き気や嘔吐に対する治療に使われています。
米国では物質規制法のスケジュールIII薬物になっており、処方薬として利用可能で、非麻薬性で精神的あるいは身体的依存の危険性は低い薬として認められています。これは大麻草自体がスケジュールI(濫用の危険があり、医療的用途がない)のままであることに矛盾していることが指摘されています。
ナビロン(Nabilone)もTHCを模倣した合成カンナビノイドで商品名をセサメット(Cesamet)と言い、米国やカナダや英国などで承認されています。エイズ患者の食欲不振や体重減少、抗がん剤治療に伴う吐き気や嘔吐、多発性硬化症などの神経障害性疼痛の治療に使用されています。
ナビキシモルス(Nabiximols)はΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)をほぼ同量含む大麻抽出エキスを製剤化したもので、商品名サティベックス(Sativex)として多くの国で認可されています。多発性硬化症患者の痙縮、疼痛、過活動膀胱などの症状の改善の目的で使用され、カナダではがん性疼痛の緩和でも使用が認可されています。
ここで重要なことは、合成THCしか含まない製薬(ドロナビノールやナビロン)の内服は、マリファナの喫煙に比べると、効果は弱く、副作用が強いという点です。
大麻抽出エキスを製剤化したナビキシモルス(商品名サティベックス)の方が合成THCの単剤よりも効果が高く、副作用も少ないようです。その理由として、THCの精神変容作用をカンナビジオールなどの他のカンナビノイドなどが軽減させるためと考えられています。
大麻から分離された単一成分を使うより、大麻草に含まれる全ての成分を一緒に使う方が効果が強く、副作用も少なくなるということです。
しかし、ナビキシモルスの効果も大麻の吸入には及ばないようです。ナビキシモルス(商品名:サティベックス)は舌下にスプレーして摂取します。内服すると肝臓で代謝を受けて効果が弱くなるからです。舌下よりマリファナの喫煙で肺から吸入した方が効果の発現が早く、効果も高いことが報告されています。
通常、どこかの国で認可されておれば、日本で未承認の薬でも「医師の個人輸入」で輸入して患者さんに処方することが許されています。その唯一の例外が大麻製剤です。大麻取締法で大麻(マリファナ)および合成THCの使用が医療用途でも禁止されているからです。
日本では、医療目的であっても大麻を所持するだけで処罰されます。そのため、海外での使用を希望する患者さんが増えています。
大麻草のカンナビノイドはΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)が主成分ですが、精油成分のテルペノイドも含まれており、大麻の薬効においてカンナビノイドとテルペノイドの相乗効果の重要性が指摘されています。サティベックスにもテルペノイドが含まれています。テルペノイドとして、カンナビノイド受容体CB2の選択的アゴニストのβ-カリオフィレンの薬効が注目されています。
【カンナビノイドとテルペノイドの相乗作用】
大麻(マリファナ)の主成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)のみでは効能が弱く、精神変容作用など副作用が強いという欠点があり、病気の治療に使うには限界があります。THCについで多く含まれるカンナビジオール(CBD)は、THCの治療効果を高め、精神変容作用を軽減する効果があり、THCとCBDの合剤の方がTHC単剤より有用であることが知られています。
CBD以外の精神作用がないカンナビノイドのテトラヒドロカンナビヴァリン(tetrahydrocannabivarin)、カンナビゲロール(cannabigerol)、 カンナビクロメン(cannabichromene)なども大麻の薬効や、THCの副作用軽減に関与しています。
さらに、大麻に含まれる精油成分のテルペン類も、カンナビノイドの効果を高める作用が指摘されています。
テルペン類とカンナビノイドは共通の前駆物質から合成されます。したがって、テルペンの中にカンナビノイドと似た作用を示すものがあっても不思議ではありません。
大麻に含まれるテルペンとしてリモネン(limonene)、ミルセン(myrcene)、α-ピネン(α-pinene)、リナロール(linalool)、β-カリオフィレン(β-caryophyllene)、カリオフィレン・オキサイド(caryophyllene oxide)、ネロリドール(nerolidol)、フィトール(phytol)などが知られています。これらは、大麻草以外の植物や香辛料などに広く含まれており、食品からも摂取しています。
これらのテルペンは米国食品医薬品局(FDA)やその他の多くの国の機関で「generally recognized as safe(GRAS)」に分類されている安全性の高い食品添加物に分類されています。
大麻の抗炎症作用と鎮痛作用においては、カンナビノイドとテルペンの相乗効果が報告されています。
すなわち、カンナビノイドもテルペンも抗炎症作用や鎮痛作用があり、これらの作用においてカンナビノイドとテルペンが相乗的に作用して効果を高めることが報告されています。
農業用大麻から抽出したHemp Oil Drops(Endoca社の15%CBD)の分析表をみると、カンナビジオールが15%に対して、テルペン類で最も含有量が多いのがβカリオフィレンで、その含量は約1~2%です。つまり、カンナビジオールの10分の1程度含まれています。
動物実験などで、カンナビジオールとβカリオフィレンをそれぞれ単独で使用するより、それらを併用する方が、抗炎症作用と鎮痛作用が強くなることが報告されています。
【カンナビジオールはカンナビノイド受容体とは関係ない機序で鎮痛作用を示す】
カンナビジオールは抗がん剤による神経障害性疼痛を軽減することが報告されています。
以下のような報告があります。
Cannabidiol inhibits paclitaxel-induced neuropathic pain through 5-HT(1A) receptors without diminishing nervous system function or chemotherapy efficacy. (カンナビジオールは、神経系の機能や抗がん剤の効果を減弱することなく、5HT1A受容体を介してパクリタキセル誘発性の神経障害性疼痛を阻止する)Br J Pharmacol. 171(3):636-45.2014年
【要旨】
研究の背景と目的:パクリタキセルは末梢神経にダメージを与えて痛みを引き起こす副作用があり、これによって抗がん剤治療を中断せざるを得ない場合もある。我々は以前の研究において、精神変容作用を持たないカンナビノイド(大麻に含まれるある種の成分の総称)の一つであるカンナビジオールが、パクリタキセルによる機械的および温熱による疼痛感受性の亢進を阻止する作用を有することをマウスを使った実験で明らかにした。
抗がん剤による末梢神経障害を阻害するカンナビジオールの作用のメカニズムを明らかにし、カンナビジオールの作用が神経機能や抗がん剤の抗腫瘍効果を減弱させる作用がないかどうかを検討した。
主な結果:マウス(C57Bl/6 mice)を使った実験で、パクリタキセルで誘発される機械的刺激に対する疼痛感受性の亢進はカンナビジオール(2.5~10mg/体重1kg)の投与によって阻止された。この効果は5−HT(1A)受容体のアンタゴニスト(拮抗薬、阻害薬)であるWAY100635の同時投与によって減弱したが、カンナビノイド受容体のCB1のアンタゴニスト(SR141716)やCB2のアンタゴニスト(SR144528)では減弱しなかった。カンナビジオールの投与によってマウスの学習機能や認知機能などに低下は認めなかった。
培養乳がん細胞を用いた実験では、パクリタキセルとカンナビジオールの併用は、相加あるいは相乗的な抗腫瘍効果の増強を示した。
結論:今回の実験結果より、カンナビジオールはパクリタキセルによって引き起こされる神経障害を予防する効果を示し、その作用機序として5-HT1A受容体を介する機序が示唆された。さらに、学習効果や認知機能などの神経系の働きに悪影響は及ぼさず、乳がん細胞に対するパクリタキセルの抗腫瘍効果を減弱させることはなかった。
以上のことから、パクリタキセルによる抗がん剤治療にカンナビジオールを併用することは、神経障害の発生予防や軽減において有効で安全な治療法と言える。
【カンナビジオールにはCB2の作動薬としての働きもある】
CB1のアゴニストが食欲を高める作用があることが知られています。そこでCB1のアンタゴニストが食欲を低下させて肥満の治療薬としてリモナバン(Rimonabant)が開発され、発売になりました。しかし、抑うつや自殺企図の副作用が問題になって発売中止になっています。つまり、CB1を選択的に阻害すると、精神面や情動での異常が起こるようです。(CB1の活性化は抗不安や抗うつ作用があり人間を幸福にさせる働きがあることを示唆しています)
カンナビジオールについては、テトラヒドロカンナビノール(THC)のCB1アゴニスト作用に対して阻害作用を示すことによってTHCの精神変容作用を抑制します。CB2についてはいろいろと異なる報告がありますが、CB2のアンタゴニスト(阻害薬)としての作用やアゴニスト(作動薬)としての作用など状況によって異なるようです。
CB2のアゴニスト(作動薬)としての作用もあるようです。以下のような論文があります。
Cannabidiol decreases body weight gain in rats: involvement of CB2 receptors.(カンナビジオールはラットにおける体重増加を抑制する:CB2受容体の関与)Neurosci Lett. 490(1):82-4. 2011年
【要旨】
カンナビジオールは大麻草(Cannabis sativa)に含まれる主要なカンナビノイドの一種で精神作用がなく、様々な病気への治療効果が報告されている。
食事摂取やエネルギー代謝の制御に内因性カンナビノイドシステムが重要な役割を担っていることが知られている。そこで、ラットにおける体重増加に対するカンナビジオール投与の効果を検討した。
オスのWistarラット(実験開始時体重:260 ± 20 g)を用い、カンナビジオールを1日体重1kg当たり2.5mgか5mgを腹腔内に14日間連続で投与し、体重増加の経過を観察した。
両方の用量でカンナビジオールは体重増加を統計的有意に抑制し、5mg/kg投与の方が2.5mg/kg投与より効果は高かった。
CB2受容体の選択的アンタゴニスト(阻害剤)のAM630を投与すると、カンナビジオールの体重増加を抑制する作用は阻止された。
この結果は、カンナビジオールはCB2受容体を活性化することによって体重増加を抑制することを示している。
CB2受容体は体重増加の制御に関わっていることが示唆されるので、体重コントロールの方法としてCB2受容体の選択的なリガンドに関して、さらに研究が必要である。
β-カリオフィレンの鎮痛効果については435話で解説しました。
β-カリオフィレンはnMのレベルでCB2受容体に結合してアゴニスト(作動薬)として作用し、抗炎症作用と鎮痛作用と抗不安・抗うつ作用があるので、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛や心因性疼痛といった疼痛の軽減に効果が期待できます。
【CB2活性化とCB1阻害は肝障害を軽減する】
以下のような報告があります。
Role of cannabinoid receptors in hepatic fibrosis and apoptosis associated with bile duct ligation in rats.(ラットにおける胆管閉塞による肝臓の線維化とアポトーシスにおけるカンナビノイド受容体の役割)Eur J Pharmacol. 742:118-24. 2014年
(要約)ラットを使った実験で胆管を糸と結紮して胆汁の流れをせき止めると、肝臓に胆汁がうっ滞して、肝細胞が傷害され、細胞死(アポトーシス)や炎症や線維化が起こります。
この実験モデルを用いて、CB2受容体のアゴニストのβ-カリオフィレン、CB1受容体のアンタゴニストのヘモプレッシン(hemopressin)、β-カリオフィレンとCB2受容体アンタゴニストのAM630の併用についてそれらの効果を、トランスアミナーゼ値、ビリルビン値、コラーゲン量、アポトーシスなどを指標に検討しています。
その結果、CB2受容体アゴニスト(作動薬)のβ-カリオフィレンを投与したマウスとCB1受容体アンタゴニスト(阻害薬)のヘモプレッシンを投与したマウスでは、肝細胞の傷害(トランスアミナーゼの上昇など)や線維化の程度が抑制されました。β-カリオフィレンの投与群では肝細胞のアポトーシスも抑制されました。
胆汁うっ滞を生じるような肝臓疾患の治療にCB2受容体の活性化とCB1受容体の阻害の組合せは治療効果が期待できるという論文です。
カンナビジオールはCB1を阻害して肝障害を軽減することは425話で紹介しています。
つまり、カンナビジオールとβカリオフィレンの併用はCB1を阻害し、CB2を活性化する方法となる可能性があります。
【CB2受容体の選択的アゴニストはトリプル・ネガティブの乳がんの増殖を抑える】
CB2受容体の選択的アゴニストの抗がん作用も注目されています。以下のような論文が今月発表されています。
Selective, Nontoxic CB2 Cannabinoid o-Quinone with in Vivo Activity against Triple-Negative Breast Cancer.(トリプル・ネガティブの乳がんに対してin vivoで抗腫瘍活性を示す非毒性のCB2の選択的アゴニストのo-Quinone)J Med Chem. 58(5):2256-64. 2015年
【要旨】
トリプル・ネガティブの乳がんは非常に悪性度の高い性質を示し、治療に有効な標的がないため、患者の予後は一般に悪い。
この論文ではカンナビノイド受容体タイプ2(CB2)の選択的アゴニストのquinone/cannabinoid pharmacophoresを合成し、ヒトのトリプル・ネガティブの乳がん細胞をマウスに移植するin vivoの実験モデルで抗腫瘍効果を検討している。
このCB2選択的アゴニスト作用を示す物質は、ヒトのトリプル・ネガティブの乳がん細胞の培養細胞に細胞死を誘導した。
キノンとカンナビノイドの組合せは、がん細胞のCB2受容体の活性化と酸化ストレスの誘導を介してアポトーシス(細胞死)を誘導する。
正常な乳腺上皮細胞には毒性を示さなかった。
以上の結果から、CB2選択的アゴニストはトリプル・ネガティブ乳がんの治療に効果が期待できる。
マウスを使った実験で、β-カリオフィレンがNK細胞活性を高める作用が報告されています。(Eur J Pharmacol. 576(1-3):180-8. 2007年)
マウスにがん細胞を移植するとマウスのNK細胞活性は抑制されますが、β-カリオフィレンを1日体重1kg当たり20mgの投与で、NK細胞活性は正常に戻ったという報告です。
以上のような最近の研究から、セスキテルペンのβ-カリオフィレンとカンナビジオールの併用は、多発性硬化症や線維筋痛症や抗がん剤などによる神経障害性疼痛の治療や、炎症性疾患や不安障害やがん治療などに試してみる価値はありそうです。
CB2の活性化が有効な疾患として以下のようなものが報告されています。
- 手術後疼痛
- 慢性炎症性疼痛
- 神経障害性疼痛
- 骨転移を含むがん性疼痛
- 掻痒症
- パーキンソン病
- ハンチントン病
- 筋萎縮性側索硬化症
- 多発性硬化症
- 自己免疫性ぶどう膜炎
- エイズ脳炎
- アルコール性神経障害
- 不安関連障害
- 双極障害や人格障害や注意欠陥・多動性障害や物質使用障害における衝動
- コカイン依存
- 外傷性脳障害
- 脳卒中
- 動脈硬化症
- 全身性硬化症
- 炎症性腸疾患
- アルコール性肝疾患などの慢性肝障害
- 糖尿病性腎症
- 骨粗しょう症
- 咳
- がん(乳がん、前立腺がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、転移性骨腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、神経膠腫など)
(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2012 Dec 5; 367(1607): 3353–3363.の表1より)
β-カリオフィレンは食品添加物として安価に入手できます。動物実験の結果などから2~20mg/kg/dayをジュースやお茶やオリーブオイルや亜麻仁油などに混ぜて服用するのが良さそうです。アロマテラピーのように蒸発させて肺から取込ませるのも良いかもしれませんが、内服で生体利用性が高いと報告されていますので、内服が最も簡単です。
カンナビジオール(CBD)はカンナビジオールを高濃度に含むHemp Oilを使って1日50~200mgあるいはそれ以上が妥当だと思います。
この場合、CBDは費用がかかるので、最初はβ-カリオフィレンだけで様子をみて、効果がでなければCBDを追加してみると良いかもしれません。
β-カリオフィレンは食品添加物グレードの純度85%のものを30g/6000円でクリニックで提供しています。神経障害性疼痛などの疼痛性疾患、クロンー病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、関節リュウマチなどの自己免疫疾患、各種のがんの治療として試してみる価値はありそうです。
がん性疼痛でオピオイドで十分なコントロールができない患者さんで、βカリオフィレンで疼痛がコントロールできた例などを経験しています。
● βカリオフィレンの購入に関してはこちらのサイトで紹介しています。
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