258)水素分子(H2)の抗酸化作用

図:不対電子をもつ原子や分子はフリーラジカルと呼ばれ、他の物質から電子を奪おうとする。電子を奪われた物質は酸化されたことになる。電子を与えることのできる物質(ビタミンCやポリフェノールなど)は物質の酸化を防ぐことができる(抗酸化作用)。水素は活性酸素のうち細胞障害作用の最も強いヒドロキシラジカルのみを消去し、細胞機能にも関与しているスーパーオキシドや過酸化水素は消去しないことが示されている。また、水素は生体膜を拡散し種々の細胞内小器官に浸透しうる(血液脳関門も容易に通過する)ので、活性酸素による酸化障害の治療法として理想的な特徴を持っている。

258)水素分子(H2)の抗酸化作用

【活性酸素とフリーラジカル】
酸素の働きの一つに「酸化」というものがあります。鉄くぎがいつのまにか赤くさびたり、ゴムが古くなると弾力を失ってボロボロになったりするのも酸化の結果です。私たちの体内でも、呼吸によって取り入れられた酸素の一部が「活性酸素」と呼ばれる酸化力の強い分子に変化し、細胞を酸化することによって、がんや動脈硬化など多くの病気の原因となっています。機械もサビついてくると故障が多くなるのと同じことです。
全ての物質は原子からできています。原子というのは物質を構成する最小の単位であり、原子核を中心にその周りを電気的に負(マイナス)に帯電した電子が回っているという形で現されます。通常、電子は一つの軌道に2個づつ対をなして収容されますが、原子の種類によっては一つの軌道に電子が一個しか存在しないことがあります。このような「
不対電子」を持つ原子または分子をフリーラジカル(遊離活性基)と定義しています。
本来、電子は軌道で対をなっている時がエネルギー的に最も安定した状態になります。そのためにフリーラジカルは一般的には不安定で、他の分子から電子を取って自分は安定になろうとします。フリーラジカルとは、不対電子をもっているために、非常に反応性の高まっている原子や分子なのです。
私たちが呼吸によって取り込んだ酸素がエネルギーを産生する過程で
スーパーオキシド・ラジカルという活性酸素が発生します。ふつうの酸素分子は16個の電子の持っていますが、スーパーオキシド・ラジカルは17個の電子をもっており、そのうち1個が不対電子になりフリーラジカルとなるのです。スーパーオキシド・ラジカルは体内の消去酵素(スーパーオキシド・ディスムターゼ、略してSOD)によって過酸化水素(H2O2)に変わり、過酸化水素はカタラーゼという消去酵素によって除去されます。しかし、活性酸素の一部は微量元素(鉄イオンや銅イオン)やスーパーオキシドと反応して、ヒドロキシルラジカル(・OH)が発生します。ヒドロキシルラジカルも一つの不対電子をもっており、その酸化力は活性酸素のなかで最も強力で、細胞を構成する全ての物質を手当たりしだいに酸化して障害をおこします。
「酸化」するというのは活性酸素やフリーラジカルが、ある物質の持っている電子を奪い取ることを意味します。酸化の本来の定義は「
電子を奪うこと」なのです。一方、ある物質が別の物質から電子をもらうことを「還元」といいます。フリーラジカルというのは、言い換えれば相手の電子を奪う(酸化する)性質が非常に強い性質のものです。
DNAから電子が奪われると誤った遺伝情報が作られ、がん細胞の発生につながります。DNA以外にも、体の土台をなしている蛋白質や脂肪からも電子を奪い酸化して細胞の機能の障害を引き起こし、ひいては組織や臓器の機能の低下を招いて、がんになりやすい体になるのです。

【ヒドロキシラジカルを消去する水素分子(H2)】
野菜や果物や豆類などの植物性食品や漢方薬ががんの予防や治療に効果がある最も大きな理由として、抗酸化物質の存在があります。つまり、植物性の食品や薬草や生薬には、フラボノイドやカテキンなどポリフェノール(polyphenol)と呼ばれる成分が豊富に含まれ、このポリフェノールが抗酸化作用を示すからです。
ポリとは「たくさんの」という意味で、「ポリフェノール」とは分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環などの芳香環に結合したOH基)を持つ植物成分の総称で、イソフラボン、カテキン、アントシアニン、フラボノールなどが含まれ、その数は5000種以上に及ぶと言われています。水酸基(OH)が水素供与体となってフリーラジカルを安定化させるため、強い抗酸化作用を示し、その結果、がんや動脈硬化性疾患の予防効果など様々な健康作用を示す理由となっています。
抗酸化作用」というのは、「酸素の化合物から酸素を奪う作用」または「ある物質に水素と化合させる作用」で、一般的には「分子に電子を与える作用」です。抗酸化物質というのは、抗酸化作用(=還元作用)をもった物質のことで、ポリフェノールはその水酸基(OH基)の水素原子を活性酸素などのフリーラジカルに与えることができるので抗酸化作用をもつことになります。
以上のことを理解すると、水素分子(H2)は理想的な抗酸化物質と推測されます。実際、近年、水素分子が虚血再還流障害や急性肺障害など様々な疾患モデルを使った動物実験や、さらに2型糖尿病やメタボリック症候群など人間の疾患を対象にした臨床試験でも、その有用性が示され、水素の医療応用の研究が急速に進み、多方面での医療用途の可能性が注目されています。
水素(原子番号1、元素記号H)は、物質を構成する元素としては宇宙で最も量が多いのですが、地球の大気中には1ppm以下の微量しか存在しません。水素分子(H2)は最も軽く、常温では無色無臭の気体で、非常に燃えやすい特徴を持っています。水素は大気中で5%以上になると空気中の酸素と反応して爆発します。酸素と激しく反応するということは、酸化性物質と非常に高い反応性(抗酸化作用)を持つことを意味します。
水素は私たちの体内でも発生しています。すなわち、食品中の非消化性食物繊維を大腸内の腸内細菌が発酵する過程で水素が発生しています。また、水素含有ガスの吸入は潜函病(せんかんびょう)の治療に使用され、人体に極めて安全性が高いことも証明されています。(潜函病はダイバーなどの高気圧環境下にいた人が水面に上がることによって急激な減圧により生体内に生じた窒素気泡によって起こる病気です)
太田成男・日本医大教授(細胞生物学)らは2007年に、水素含有ガスが、体に最も有害な活性酸素であるヒドロキシラジカルを効率よく除去し、脳虚血後の障害を軽減できることを報告しました(Nature Medicine 13: 688-94, 2007)。すなわち、脳の血液の流れを一時的に止め、活性酸素を大量に発生させたラット(虚血再灌流モデル)に1~4%の水素を含んだガスを吸わせると、脳のダメージが軽減することを明らかにしました。
この研究では、
水素は活性酸素のうち細胞障害作用の最も強い活性酸素(ヒドロキシラジカル)のみを消去し、細胞機能にも関与しているスーパーオキシドや過酸化水素は消去しないことを示しています。また、水素は生体膜を拡散し種々の細胞内小器官に浸透しうる(血液脳関門も容易に通過する)ので、活性酸素による酸化障害の治療法として理想的な特徴を持っています
水素は気体として吸入させるだけでなく、水溶液として経口投与、静脈内投与、あるいは局所投与によっても効果が得られます。
漢方薬やビタミンCやCoQ10やαリポ酸などの抗酸化作用に加えて水素ガス入浴、水素ガス吸入、水素水点滴、水素水飲用など様々な方法で水素分子を体内に取り込むことは、美容や抗老化だけでなく、がんの治療にも有効です。

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