オホクニの「許遠婆<オコバ」と云う言葉を聞いてスセリヒメは、その場にじっと立ち止まること「不能ず」です。その逸る心は、なぜか分からないのですが、そこに置いていたであろうお酒を取り出して、なみなみと大坏に注いで、大急ぎで、今にも馬に乗り、出発しそうにしている夫「オホクニ」に差し出しながら云います。此の時きスセリヒメがオホクニに差し出した坏が
”大御酒坏<オホミサカズキ>”
です。
この時に差しだした「ミさかずき」は「盃」でも「杯」でもありません。素焼きの「大坏」です。その時代に、一般に、神に捧げるために使っていただろうと思えるようなきれいな「大御酒坏<オホミサカズキ>」????を私は持っています。今で言う『猪口』ではありません。大です。口の径は8cmほどの大きさです。写真でどうぞ。
此の「坏」は、5世紀終わりごろの、近畿地方のある古墳から出土したと云われている「坏」です。だから、あのヒメが差し出した「坏」ではありませんが、おそらくこんな坏ではなかったと思ってお見せする次第です。また、この坏には珍しいのですが線刻の絵柄も画かれております。同時期に作られたあまり上級者用ではない坏もおみせしますので比べてみて下さい。なお、この時代の土器は須惠器と呼ばれ、彩色されていない素焼きの土器が使われていました。色柄付けの土器の出現は8世紀になってからだといわれます。
次に、此の土器の側面に付いている絵模様の線刻も見て下さい。丁寧な手作業が伺われます。当時の人の美的感覚が偲ばれますよね。どうでしょうか????