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「宇治川は白く霧たちこめ、男山も淋しく独りたち、葛城、笠置、雲井にそびえて常ならば面白かる可きに、思ある身は皆是涙のよすがのみ、二三の丸の方を見れば、鳥居、松平等が死を決して戦はむとの準備(そなへ)をなす様なり。我が住む本丸は叉外の軒端の瓦にも、黄金を敷き、内は唐木、檜の、柱鴨居、上段も下段も金襖に極彩色の花鳥を画きたり、太閤の在まし昔も思い出て、この城も兵火にかかるならむと察すれば、人世の無常に不覚の涙ぞこぼれける。
勝俊は種々に思い乱れしが、今はひたすら世の厭はしきのみ、少将の位階も、万石の封土も塵芥の如し、心に決すことありしが掌(たなごころ)を打ち慣らして、家の老の某を呼び城を去りぬ。数日の後に勝俊は政所の御殿に在りて、伏見、大津の矢叫をも聞かず、隈なき中秋の月をながめて心を澄したりと。」
とあります。何かあの講釈師神田白山の話の中い引き込まれたような思いにさせられますよね。どうでしょうかね????
「宇治川は白く霧たちこめ、男山も淋しく独りたち、葛城、笠置、雲井にそびえて常ならば面白かる可きに、思ある身は皆是涙のよすがのみ、二三の丸の方を見れば、鳥居、松平等が死を決して戦はむとの準備(そなへ)をなす様なり。我が住む本丸は叉外の軒端の瓦にも、黄金を敷き、内は唐木、檜の、柱鴨居、上段も下段も金襖に極彩色の花鳥を画きたり、太閤の在まし昔も思い出て、この城も兵火にかかるならむと察すれば、人世の無常に不覚の涙ぞこぼれける。
勝俊は種々に思い乱れしが、今はひたすら世の厭はしきのみ、少将の位階も、万石の封土も塵芥の如し、心に決すことありしが掌(たなごころ)を打ち慣らして、家の老の某を呼び城を去りぬ。数日の後に勝俊は政所の御殿に在りて、伏見、大津の矢叫をも聞かず、隈なき中秋の月をながめて心を澄したりと。」
とあります。何かあの講釈師神田白山の話の中い引き込まれたような思いにさせられますよね。どうでしょうかね????