97歳の老婆は、点滴を打ち、病院で眠っている。
ピンクのパジャマを着て、皺くちゃの顔と痩せ細った小さな体を見ると眠り姫の様だ。
時々目がパッと明いて、天井をジッと見ている事があるが、その目は、焦点が定まらず、現実なのか、夢なのか、意識が飛んでいるみたいだ。
私たちが声をかけても、ぽかーんとして、何を言っているんだろうという顔をしている。
たまに見せる微笑みが救いだった。
真面目なあなたは、お見合いの席で、笑って話しかけてくれた。
慣れないスーツを着て、ネクタイが苦しいと話してくれた。
息子が生まれた時、あなたは戦争に行っていた。
死んだかどうかさえ連絡が来なくて、気になってとても心配したわ。
戦争が終わって、あなたは帰ってきた。
片腕を失って、戦争の夢を何度も見て、夜うなされていた。
そんなあなたを見て、私はとても辛かった。あなたも辛かっただろうけど、私もあなた以上に辛かったのよ。
それから、人々が何事もなかったように時代が通り過ぎ、息子が綺麗なお嫁さんを連れて家へとやって来た。
あなたは、喧嘩したばかりだったから、不貞腐れて、お嫁さんとも話さなかった。
私どうしたらいいか分からなかった。
それから、孫が生まれて、幼稚園に行く頃だったかしらね。あなたは、畑で倒れて、そのまま息を引き取った。
悲しくて、哀しくて、涙が枯れるまで泣いた。
出会った時から、いつか必ずこんな別れが来ると分かっていたけど、とても辛かった。
夢の中で、あなたに時々あっていたけど、天国に一度も呼んでくれなかった。
「お前はまだ、生きろ。」って、あなたがいない世の中で、私どうやって生きたらいいのか分からなかった。
それからも、私は随分と生きた。
最近、私はあなたと歩いた町の夢をよく見るの。
賑やかな夜の町、華やかで、キラキラと輝いていた。
私は、ショーウィンドウに飾ってある洋服を見るのが好きだった。
貧乏だったから買ってはもらえなかったけど、ただ見ているだけで、その服を着ている気分になった。
そんな姿をあなたは優しい目でずっと私の事を見つめていた。
「おばぁちゃん。私の事分かるかなぁ。」孫が老婆に問いかける。相変わらず虚ろな目だけが天井を見つめている。
「母さん。俺の事は分かる?」隣にいた息子も話しかけるが、笑みを浮かべるだけだった。
一時するとまたゆっくりと目を閉じる。
あなたと歩いた夜の町へと旅立って行くのだった。
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ピンクのパジャマを着て、皺くちゃの顔と痩せ細った小さな体を見ると眠り姫の様だ。
時々目がパッと明いて、天井をジッと見ている事があるが、その目は、焦点が定まらず、現実なのか、夢なのか、意識が飛んでいるみたいだ。
私たちが声をかけても、ぽかーんとして、何を言っているんだろうという顔をしている。
たまに見せる微笑みが救いだった。
真面目なあなたは、お見合いの席で、笑って話しかけてくれた。
慣れないスーツを着て、ネクタイが苦しいと話してくれた。
息子が生まれた時、あなたは戦争に行っていた。
死んだかどうかさえ連絡が来なくて、気になってとても心配したわ。
戦争が終わって、あなたは帰ってきた。
片腕を失って、戦争の夢を何度も見て、夜うなされていた。
そんなあなたを見て、私はとても辛かった。あなたも辛かっただろうけど、私もあなた以上に辛かったのよ。
それから、人々が何事もなかったように時代が通り過ぎ、息子が綺麗なお嫁さんを連れて家へとやって来た。
あなたは、喧嘩したばかりだったから、不貞腐れて、お嫁さんとも話さなかった。
私どうしたらいいか分からなかった。
それから、孫が生まれて、幼稚園に行く頃だったかしらね。あなたは、畑で倒れて、そのまま息を引き取った。
悲しくて、哀しくて、涙が枯れるまで泣いた。
出会った時から、いつか必ずこんな別れが来ると分かっていたけど、とても辛かった。
夢の中で、あなたに時々あっていたけど、天国に一度も呼んでくれなかった。
「お前はまだ、生きろ。」って、あなたがいない世の中で、私どうやって生きたらいいのか分からなかった。
それからも、私は随分と生きた。
最近、私はあなたと歩いた町の夢をよく見るの。
賑やかな夜の町、華やかで、キラキラと輝いていた。
私は、ショーウィンドウに飾ってある洋服を見るのが好きだった。
貧乏だったから買ってはもらえなかったけど、ただ見ているだけで、その服を着ている気分になった。
そんな姿をあなたは優しい目でずっと私の事を見つめていた。
「おばぁちゃん。私の事分かるかなぁ。」孫が老婆に問いかける。相変わらず虚ろな目だけが天井を見つめている。
「母さん。俺の事は分かる?」隣にいた息子も話しかけるが、笑みを浮かべるだけだった。
一時するとまたゆっくりと目を閉じる。
あなたと歩いた夜の町へと旅立って行くのだった。
おばちゃまは旦那様への想いを抱いて
旅立っていったのでしょうね
素敵なSTORYありがとうございます
私もあの人の傍へ行きたい・・・・
storyさんから言われるって言うのもいいですね。
人生において、大好きな人と一生添い遂げれたら素敵ですよね。
そんな事を現実で言うと、冗談みたいにとられる事が多くなって、少し寂しい気持ちですが、その分、ブログで発散出来て、私としては、嬉しですよ。
何を言っているかよくわかんなくなりましたが、コメントありがとうございます。(笑)
それは、静かな涙が流れるような…
きれいに始まりキレイに終わりましたね…ほろっ!
ウトウトして、人生で成功した夢を見たら、水道の蛇口からポトリと落ちる水滴の時間ほども立ってなかった。
あっという間に年老いてしまいます。
そういっている間にも、正月だ~。
今年終わりに綺麗に終わりそうですね。
嬉しいことも悲しいこともみ~んな、
過ぎてみれば、幸せな思い出になるのでしょうね。
その瞬間まで、心には情熱を持っていたいです。
1年の終わりに、心が温まるような素敵なお話しをありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
良いお年を・・・
来年もまた、書いていくのかは、謎ですが、皆さんの心に残るようなストーリーを目指していきたいですね。
こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします。
全三話完結にします!
三話だけではもったいない気がしますね。
長く長く続けられたら、続けてください。
書けない私が言うのもなんですが(笑)