ある本作りの関係で、『特攻 自殺兵器となった学徒兵兄弟の証言』(岩井忠正・岩井忠熊、新日本出版社、2002年)を読みました。
書名のとおり、あの戦争で兄弟で特攻隊員となり、戦後を生き抜いてきた方の証言です。
特攻といっても飛行機ではなくて海上と海中の特攻兵器です。お兄さんは「回天」(かいてん)という人間魚雷の部隊と、もう1つは「伏竜」(ふくりゅう)という、これは予想される敵の本土上陸作戦で、潜水服を着て敵の上陸地点の海中に潜み、押し寄せる上陸用舟艇などを海中から攻撃する部隊ですが、この2つの部隊に所属していました。
また弟さんは「震洋」(しんよう)という今で言うモーターボートの特攻船の部隊に所属していました。2人は大学生でしたが徴兵猶予停止となり徴兵検査を受けてともに海軍に入ることになりました。
詳しい証言の内容はぜひとも読んでもらえればいいのですが、この本は私にとってはとても衝撃的でした。というのも、私たちは口では簡単に「戦争に反対する」とか「戦争をさせない国にするために」とか言っていますが、本当にそのことをどこまでわかっているのか、ということを突きつけられたように感じたからです。
当時、慶応大学と京都大学の学生という頭のできる優秀な若者でした。そして2人とも口に出して公言することは無かったけど「この戦争は間違っている。日本は負けるだろう」と思っていました。でも結局は特攻隊員になり、確実に死ぬことから逃れられない日々を過ごしてきたのです。
私も含めて現代に生きる戦争を知らない若い人たちはあの時代を生きた人たちに向かって「だったらなぜ戦争に反対しなかったのか」と問いかけることがあります。それは当然の問いかけです。でもそれは本当にあの時代のことを理解した上での問いかけなのでしょうか。
その理解するということについて、まだまだ私たちには知らないことが無限にある。あまりにも歴史について知らなさすぎるのではないか。そんな思いを強く持ちました。
今の時代状況について戦争体験者の人たちが「当時によく似てきた」と言われます。それを聞くたびに「そうなんだ。それはなんとかしなければ」と思うのですが、でもなかなかそこから自分で1歩、動き出すことは難しいのが私たちの毎日の現状です。
しかし、そこを変えていかないといけない。もっともっと歴史を学び、それを力に行動していかないと、本当はとても大変なことになる。放っておけば、再び日本が戦争をする国になることはそれほど遠い日のことではないでしょう。
そして私は恐ろしく思いました。私自身がそのことに手を貸すことになるのではないかと…。そのことをこの本は教えてくれます。