◆~本と歩こう⑮~◆
こんにちは。市民レポーターの 三井玲子 (みつい れいこ)です。
今回は、8月22日(土)午後、甲府市役所1階市民活動室にて行われた、
生涯学習課主催:まちなかの文化芸術イベント
「奥山眞佐子ワークショップ」(朗読)④「樋口一葉さんと甲州」のご報告です
奥山さん主演の舞台公演ポスターの数々
この日、2回目の講演時の天気は、外の景色が見えなくなるほどの激しい雷雨に!()
受付では、消毒・検温と問診でコロナ感染対策が行われ、朗読会が始まりました。
(講座はソーシャルディスタンス確保のため、2回にわけて講演されました)
初めに、奥山さんからのご挨拶と最近の活動報告がありました。
今回は感染症拡大防止のため、体操や発声などのワークショップは省略。
「その分も、みなさんに朗読を楽しんでいただければ」、と奥山さん。
まずは、樋口一葉の母・あやめさん(後の多喜)の物語。(父・大吉の日記より)
駆け落ちで一緒になった夫・大吉さん(後の則義)との暮らしぶりを語ります。
兄・泉太郎と父・則義の死後、十代で一家の主となった一葉さん。
奥山さんの朗読から、気丈に生きようとする一葉さんの姿が立ち上がってきます。
合間に、時代背景や出版状況などの解説もまじえて。より物語への理解が深まります。
自由と平等を尊重し、反対意見も載せた『明六雑誌』。当時はまだ女性の参政権も無い時代でした。
そんな折に、萩の舎の知人女性が、小説で多額な原稿料を得たことが刺激になり、一葉さんは、裁縫の得意な妹・くに子さんのつてで、東京朝日新聞の記者、半井桃水(なからいとうすい)に師事。
職業小説家として、生計を立てようとした一葉さんの意気込みが伝わってきました。
『一葉日記』より。心無い噂に、萩の舎(はぎのや)での信頼を失って。
身の潔白を示すため、小説の師である半井桃水との絶縁を決意する一葉さん。
絶縁後の発表作、小説『うもれ木』より。
個人の幸せよりも、家名や家族の名誉、国家の繁栄が尊重された明治時代。
職人の兄を支えながらも、恋に散った妹・お蝶のひたむきさが伝わってきました。
明治時代の人々の生き様を感じながら、奥山さんの朗読を味わったひとときでした。
講演後、奥山さんにインタビュー。樋口一葉作品への思いを伺いました。
―今回の講演で伝えたかったこと―
「明治時代に比べて、今は物質的には豊かになりましたが、生きづらさは変わっていないというか。
社会や人の心にも余裕が無くなっている気がします。
戦争やコロナなど、時代は変わっても、命以外に大切なものなんて無いでしょう?
自然環境も含めて、命を大事に、今の人たちにも前向きに生きてほしいと思います」
「樋口一葉の作品は、登場人物のことをとても丁寧に描いていると思います。
相手の話をゆっくり聞くような、そんな心の余裕が感じられます。
樋口一葉の作品に出てくる人たちは、クセがある人や、思慮が足りない人もいますが、
人のせいにしないひと が中心にいると思います。そこが一葉作品の魅力ですね」
●奥山眞佐子さんプロフィール● イベントチラシより抜粋
女優。甲府市出身。甲府第二高等学校(現・甲府西高等学校)演劇部出身。
大学卒業後、数々のTVドラマ、CM、映画、舞台に出演。
NHK「花子とアン」で山梨ことばを指導。甲州弁の普及に尽力。
ひとり芝居は33年、樋口一葉の世界を表現して23年。
2019年 第33回前田晁文化賞受賞。
今年9月27日(日)の三越劇場では「一葉日記そして うもれ木」上演予定。
(コロナ対策により動画配信に変更)
~本と歩こう⑮~
(※書影は出版社の許可を得ています)
『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 作:樋口一葉 河出書房新社 文庫本 2004年
訳:松浦理英子「たけくらべ」、藤沢周「やみ夜」、阿部和重「十三夜」、井辻朱美「うもれ木」、篠原一「わかれ道」
奥山さんが朗読された小説「うもれ木」が収められています。
うもれ木とは、樹木が水中や土中に埋もれて化石化したもので、世間から顧みられない身の上を意味します。
時代の流れに翻弄された薩摩焼絵師の兄・入江籟三と、兄友への恋慕で死を選んだ妹・お蝶の物語です。
―奥山眞佐子さんのこれからのご活躍も楽しみにしています。ありがとうございました。―