前回のブログの最後に「MOMAT館(所蔵作品展)に足を伸ばした。身体がふるえるような、嬉しい驚きに遭遇したのである」と書き残した。そのことを書く前に、さらに嬉しいトピックを発見した。木口版画家の柄澤齊さんについては、これまで版画芸術家としてだけでなく、文芸・芸術評論やミステリー小説を書く多才な人としても再三紹介している。なので詳しいことは省くが、山梨南アルプスの麓に住む柄澤さんが、最近『棟方志功展 . . . 本文を読む
過日、竹橋の東京国立近代美術館で開催している『棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ』に行ってきた。前回と同様に妻のたっての要望。祝日の前日、陽気はことのほか桂く、文句なしの散歩日和に思えた。疲れることは承知の上だが、ガウディ展のときのような混雑はないとの情報もあり、「まあ、行ってみるか」と重い腰を上げたのである。
棟方志功は、子供のころから知っていた。その頃は芸術に特に親しんでいたわけでは . . . 本文を読む
急遽、マイナンバーカードについての私見を覚書として残すことにした。
一昨日のこと(11/22)、グーグルニュースのまとめサイト(各メディアの主要トピックニュース・地方新聞含)を読んでいたら、NHKニュースの「暗証番号 設定必要ないマイナンバーカード12月中に導入へ」という見出しに目が留まった。記事としては以下の通り(ですます調を直し)。
総務省は、認知症の人や高齢者に加え、 . . . 本文を読む
ついこの前、一年以上も遠のいていた谷中墓地に行く。のぼりが辛い蛍坂を見ると、やり切れなさが先に立つ。春先の墓地に行けば、土は匂い立っている。冬は霜が降りるし、夏はいろんな虫が這いつくばっている。秋は桜の葉が黄色から真紅になる。銀杏の実も落ちはじめる。
墓地のメイン通りは桜並木で、そこの土は踏み固められて面白くない。古い墓石の間の、人通りのない通路のような、雑草が生えている土がいい。ここは懐かしい . . . 本文を読む
何年ぶりだろうか、竹下さんにお会いできたのは。ほんとにコロナ禍は長く、大きな災いをもたらしたと思う。今年の3月か4月頃にも来日して講演会をなさったはずだが、入院中の身だったので行けなかったのは無念。今回は2回、講演というより軽いトークの会が開催された。来春に出版される本の内容にそった話になるらしい。初回のトークの日は、訪問診療の日で行けず、2回目の日仏会館の方に出席した。
竹下さんの集いは、これ . . . 本文を読む
今年のはじめ、神楽坂にデザイン事務所をもつ友人を訪ねた。きけば年内に多摩市に移り住み、仕事を減らしながらブックカフェをつくるとのこと。高齢化にそなえて、彼なりの考えや目算があるのだろう。そういえば、お互いに齢を喰って慌てふためくことのないよう、歳相応の心構えをもちたいものだ、と話し合ったこともあったかな。
どちらかといえば東京の下町生まれの小生、新宿より西側のJR中央線沿線や小田急、京王線の私鉄 . . . 本文を読む
がんを患って、自分の生死の目途がついたとき、ブログには政治、社会的なテーマは避けようと決めた。なぜなら、昨今、書くことの根拠、エビデンスのことごとくが希薄で、信用のならないものに思えてきた。情報ソースはすべからくメディア経由であり、ITのSNSなどだが、それらはもはや信のおけない媒体であると、自分のなかではほぼ断定している。
そうなのだ、自分にはそれらを客観的に取捨選択する確信、判断基準を持ち得 . . . 本文を読む
新潟県十日町に近い津南温泉から、只見線の大白川駅へ。
いま内外から熱い視線をあびるJR只見線は、福島県会津若松駅と新潟県魚沼市の小出駅を結ぶローカル秘境列車。沿線沿いの幾つかの駅が山間の秘境にあり、四季折々に自然の超絶景が見られ、列車とのコラボレーション写真は旅情をかきたてる。大規模な水害で不通になった区間もあるせいか、単線を走る小さな列車と人を寄せつかせない秘境との構図は、なんとも儚く、そして . . . 本文を読む
信越本線に乗って柿崎から柏崎へ。バスに乗り換えて寺泊に行く。
柏崎駅前は、原発の最寄り駅なのであろう、ローカル駅とは思えない景観をみせる。駅前のタクシー乗り場には5,6台のクルマが待機していた。
そのうち特急列車がとまったのだろう、まとまった人々が次々にタクシーに乗り込んで行った。半数はスーツ姿であったが、何か技術者を思わせる実直で頭が切れそうな男たち。たぶん柏崎刈羽原発の関係者かしらん。
. . . 本文を読む
10月は生誕月であるが、罹病してほぼ一年。早ければ3カ月、平均余命・・年の命だと御託宣を受けた。ま、なんとか丸一年を身過ぎ世過ぎ、無事に生きていることを歓びたい。
何よりも、読者ほか誰彼問わずに、愚生を案じてくれた方々に感謝の念をあらわしたい。ありがとうございます。
また、この日を祈念して、2ヶ月前から計画、準備してくれた妻には、万感の思いをこめて感謝と労いの言葉をとどけます。 . . . 本文を読む
■『ポール・ヴァ―ゼンの植物標本』から 堀江敏幸の「記憶の葉緑素」を読む
30年ほど前のこと。フランスのリヨン、長距離バスの待ち合わせで2、3時間、待つことに・・。作家の堀江敏幸は、旧聖堂のある広場で古道具屋「オロバンシュ」(※注)にふらっと立ち寄る。書籍コーナーもあったが、理系の雑書が多く、数学、サイエンス系の専門書で占められていた。そのなかに紛れていたルソーの『ある散歩者 . . . 本文を読む
スマホのOSはグーグルなので、撮った写真が「フォト」というアプリでクラウド上にストックされる。15GBまでは無料で、まだ10GBも空きがある。だから焦る必要はないのだけれど、古い写真を整理しようと思い立った。過去のストックをさかのぼって整理していたら熊谷守一絵画展(近代美術館※➡注)の写真群があった。そのなかになんと柳原義達の彫刻があった。過日、このブログにも載せた『孤独なる彫刻』という著書のトビ . . . 本文を読む
病院を退院した翌々日だったか、千葉県市原の「湖畔美術館」に行った。➡『末盛千枝子と舟越家の人々』
その末盛千枝子さんが、先週月曜日・朝刊の半面記事「あの人に迫る」で近況が特集されていた。10年間続けた「3.11絵本プロジェクトいわて」はいちおう区切りをつけたものの、すべての人に絵本を読んで欲しいという思いは、いまだに尽きることのないご様子だった。
御年82歳ながらお元気そうでうらやましい。大震 . . . 本文を読む
以下の文章はいわば能書きにあたるので、タイトルにある「夢二式美人に『可愛い』の源泉をみる」の結論をはやく読まれたい方はどうぞジャンプされたし
「侘び、寂び」と同じように、世界にむけて現代の日本人の精神性あるいは心性を表わす言葉とは何か?
議論はあろうが、いちばんの候補といえるのは「可愛い」だ、と思ったのはいつの頃だったか。竹内整一が考察した「やさしさ」に関する一連の著作を読んだときか。それと . . . 本文を読む
前回記事の続き
竹下夢二(1884~1934年)は、画家としてだけではない、様々な才能に秀でたマルチタレントだった。ウィキをちょいと引用する。
・・数多くの美人画を残しており、その抒情的な作品は「夢二式美人」と呼ばれた。大正ロマンを代表する画家で、「大正の浮世絵師」などと呼ばれたこともある。文筆の分野でも、詩、歌謡、童話など創作しており、中でも、詩『宵待草』には曲が付けられて大衆歌として受け、 . . . 本文を読む