ご近所のWさんの快気祝いということで呑みに行った。前立腺がんになったが、全摘手術をやって成功したとのこと。転移もなく術後はすこぶる良好。仕事も再開しているという。
これは目出度いということの運び、じゃ呑みましょうと・・。最近、愚生はドクターチェックにより前立腺エコー検査をうけて後、多少の肥大が認められかつ胆のうに結石が見つかった。いちおう薬を処方され、都合毎日薬剤を3錠飲むこととあいなった。
Wさんからは、前々から前立腺についての話をうかがいたかったのである。男性しか所有しない臓器を「前が立つ」と表記するなんて、命名した学者もなかなかの御仁である。この前立腺、役が立たなくなると、男にとって厄介な問題を惹き起こす。
ともあれ、Wさんの話をきく。
下半身だけに効く麻酔を打たされ、Wさんはお腹の周りに7か所も穴を開けられ、かつ下腹部(臍の下あたり)に5㎝ばかり縦に切られた。目は見え、音は聴こえるから、内視鏡の先から伸びるはさみのようなメスの、「パチンパチン」と臓器の組織を切り取る音が鮮明に聴こえたという。
そんなこんなで「人間のからだって凄いですよ。穴を開けられても自分で修復する。傷なんて、ほらこんなに盛り上がるくらいに穴がふさっがてきた」と、自慢げに術後の傷跡を見せながら語るのだが、酒のつまみにはちょっとね・・。愚生は例の「オートポイエーシス理論」を面白おかしくひとくさり・・。
しかし、彼の不養生あれこれの話は大いに参考になった。夜中に1,2回は起きる頻尿に悩む愚生からすれば、他人事とは思えないほどに身につまされる。Wさんは代々続く表具屋の職人さんだが、一歳年上の団塊世代であり、世間話をしなくても話はあう。町会のつながりで親しくさせていただいていたが、個人的な話をしたのは初めて。
驚いたことに、若い頃はロックバンドをつくって、ボーカルを担当していたとのこと。流行の長髪とジーンズを着る若者だったらしいが、今の職人さん姿からは想像におよばない。いやいや、その日玄関から現れたときはピンクっぽい綿パンに渋このみのグレーのカーディガン。それでいて、履物は「つっかけ」ときた。しかも訳のわからない可愛いポシェットを肩から斜めにかけて、こりゃやっぱり下町のモダーン爺さんかしら。
オフのときは、そうか結構若づくりをするんだな、と合点がいった。
件のバンドだが、なんとビートルズとストーンズのコピーをしていたとのこと。「All You Need Is Love」とか「Here, There And Everywhere」などを唄って、若い女の子からモテモテだったらしい。身長もまあ高く、ガタイもいいから目立っていたはず。新宿の何某というところにも出たり、イベントにも参加して楽しかったときの思い出話に花が咲いた。でも、Wさんがほんとに好きなバンド、唄いたかったのはストーンズだった・・。
▲ブライアン・ジョーンズがいるとき。小生はこの時代はジャズ一辺倒であった。
まあ、歳をとれば身体だけではない人生いろいろ悩みもあるわけで、まあご近所に打ち解けて話し合える友だちができたとお互い悦びあった。
この日はまた近所に住む外人、ハワイ出身のリチャードと親しく話すことになる。おまけに見たこともない缶ビールをご馳走になった。まことに面白い一夜というか、偶然が重なる特別な日、記憶に残る夜を過ごした。彼のことは、別の機会に書くことがあるかもしれない。
▲妻が秘蔵するストーンズのポスターを公開。