小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

木枯らしや幻であれ店じまい

2019年01月27日 | 日記

日暮里駅から谷中方面に向かうと、谷中銀座商店街が見渡せる階段の上にでる。そこから見える夕陽の景色が美しい。作家の森まゆみさんらが命名した「夕焼けだんだん」は、今は観光客が足をとめ、記念写真を撮りあうモニュメントの階段になった。目立ちにくいのだが、その階段上の傍らにあるビル2階に古本屋がある。「古書信天翁(あほうどり)」さんである。

残念ながら、今月いっぱいで閉店すると聞いた。ほぼ10年近くにはなるだろう、集客には不利な2階という条件のもとで営業されてきた。廉価本を路上に陳列して客寄せに工夫したり、各地の古本市への出店営業、『日本の古本屋』というネット書店に参加するなど、あの手この手で店を切り盛りしていたのだけれど・・。

出版不況やまず読書環境も激変、当然のごとく古本業への影響も深刻であったのか・・。偶々ネット情報を見て閉店を知り、驚いて店に行ったら想像をこえて賑やかであった。

対応に忙しいなか、店主さんから少し話がきけた。個人的にもいろいろ事情があるご様子だが、定職について新たなスタートを歩むとのこと。忸怩たる思いもあろうが、人生の再出発への強い決意も感じられた。今後のご活躍を期待するぞ、とそれなりのエールを送るしかできなかった。

ところで、いやらしい話になるが、閉店の際の半額セールでもあった。閉店の告知は年頭であったらしく、目ぼしいものはあらかた売れてしまったらしい。それでも、橋本治の『歌舞伎画文集』と曲亭馬琴が編纂した歳時記の文庫本をもとめ、しめて1350円とは申しわけない。

まだ品出しをしてない在庫もあるらしく、閉店までにもういちど棚を充実させるとのこと。半年ほど前にお邪魔した時に、本が溜まってきたから折を見て売りたいという話しをした。以前にダンボール箱5箱ほど買い取っていただいたことがある。そのときはわが家にも来てくれたこと、現在、3.5箱分の量ほど処分したい本があるなど、と勝手な話をして店を後にした。

 

「古書信天翁」さんの、これまでの健闘とこれからのご活躍を祈って拙い俳句、二句をひねり出した。ご笑覧されたし。

玄冬に閉店ながら店主あり

木枯らしや幻であれ店じまい



▲橋本治はそもそもイラストレーターとしてデビューした。絵心ある歌舞伎の研究者への途もあったのだ、と治ちゃんの才能に惚れ直す。

▲右は中村芝翫(先代?)、左は市川左団次三世

▲先々代の中村勘三郎の見得なのか・・。

▲構図、バランス、余白の美しさ。素晴らしき役者絵の数々。橋本治はやっぱり天才だ。



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