小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

ベトナム・カンボジアの旅1

2006年08月01日 | 旅行記

夕方、直行便でハノイ着。緑の多い街並が素晴らしい。日本とはまったく違う時間が流れている落ち着いた佇まい。政治経済の中心としての首都という印象はない。古い歴史をもつどこかの地方都市のようだ。
ただバイクがやたら走っているという程度の活気はある。ヘルメットを被っている人は皆無なのはどうしてか。石油が値上がりしているが、人々の生活に支障はないのだろうか。
バイクに乗る女性たちが一様にスカーフで顔を覆っている。イスラム女性のようだ。日焼け防止と排気ガス対策とのこと。とてもお洒落な感じだ。ほとんどのベトナム女性はスリムでスタイルがよろしい。

観光客向けのベトナム創作料理レストラン「ワイルドロータス」で食事。洗練された内装と贅沢な空間と調度品の数々。東京の高級レストランでも、これだけの雰囲気は味わえないだろう。前半のサラダ、生春巻きは申し分ないが、メインの魚、肉料理はいまいちだった。中華風の創作料理かな。しめのフルーツ盛り合わせには堪能した。マンゴー、ドラゴンフルーツ、パイナップル、マンゴスチン、ランプータンなどがたっぷりある。これだけでも空腹は満たされる量だ。つまり食べすぎた。

翌日、ハロン湾へ。道中、陶器づくりで有名なバッチャン村と戦争孤児や身体の不自由な人が働く土産物屋による。こういう場所に立ち寄るのはツアー観光の定番であるが、私としてはほどほどに見てなるべく買わないという方針を貫く。とはいえ、木彫りのコースーターと絵はがきを買う。募金箱の2箇所に寄付する。

さて、世界遺産として登録されているハロン湾は、その景観が中国の桂林に似ていることで有名らしい。日本人なら松島を思い浮かべるだろう。でも海全体の色は薄い青。やや白っぽく、インドシナ半島の大地から流れてきた栄養が豊富な感じだ。そうだ、この辺は暖流しかないのかと、妙に感心してしまった。
船上で食事した後、漁師が偶然に発見したという鍾乳洞を見学する。東洋一の広大さというが、沖縄のそれは追い越されたのか。
なかは鮮やかな照明で演出され、さながら「カリブの海賊」の洞窟のような雰囲気である。ファミリー向けの観光スポットとして中国からの旅行客も多いらしい。インドシナとは、インドと中国からの文明や宗教、そして人間が入り込み複雑で豊穣な土地である。ベトナムだけは特に中国の影響が強いのではないか。華僑の歴史も古く、ベトナム料理が他の地域に比べことさら辛くなく、調理や味付けも繊細な印象なのは、やはり中国の影響が大なのだろう。ただし、両国は歴史的にはそれほど親密ではない。

ハノイへ帰る帰路、多くの人々が田植えに勤しんでいた。機械を使わずに田植えをする姿に、都会生れの私は妙に感動した。日も暮れかかっているのに人々は手を休めない。この労働力が都会に流失しないことを願う。田植えは年に3回。米の輸出は世界第2位だという。

夜はベトナム風フランス料理。昨夜と同じ魚が出る。
その後、有名なタンロン水上人形劇にいく。古い時代の映画館のようなシアターで懐かしい感じがした。
客席はほぼ満席。老若男女、欧米人も多い。民族楽器の演奏に始まり、奥行き5メートル幅10メートル位のプールが舞台で、背景は農村風の絵が描かれている幕が張られ、そこから大小の人形が次から次と出てくる。田植え、カエル捕り、水牛、ボートレースなどのベトナムならではの農村行事、さらに陰陽五行思想を髣髴とさせる竜、亀、獅子、鳳凰が出てくる伝説的なエピソードが織り交ぜられる。
人形のアテレコは民族楽器を担当している女性で、すべてベトナム語であるが、ストーリー展開は分かりやすい。極彩色の照明や花火、煙幕を多用した派手な演出で、子供から年寄りまで大いに盛り上がる。
とにかくおめでたいエピソードが連続で、夕方田植えをしていたお百姓さんたちが見たら、泣いて喜ぶのではないか。この人形劇のコンセプトは豊作祈願にあることは間違いない。

観光地ばかり廻ったのだが、ベトナムにはもはや戦禍はなく、人々の意識も未来に向いている。
いや、それは表面的な見方か・・。


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