先月はほとんど自宅に引きこもっていた。こんな状態が、今月、来月も続くかと思うとやりきれない。愚痴とか不平などをブログに書き綴る、不穏の「日乗」なぞ誰も読みはしまい。非常であるからこそしかるべきルーチンを淡々とこなす。できるならば、明日につながる希望を書き綴りたい。そんなことを考えるだけで、無為徒食の日々が過ぎてゆく・・。
筆者は東京台東区に暮らしている。ご承知のように、地元の病院と特養ホームで件のクラスター感染が起きた。感染ルートなどは明らかにされていない。死者も出た。東京における感染拡大の口火を切ったケースとなり、嬉しくない全国的ニュースとして喧伝された。
この施設は、前者は永寿総合病院、後者は谷中特別養護老人ホーム。
地元であるばかりか、筆者とは少なからずも所縁があり、悲しいかな動揺を覚えた。永寿病院は、妻が以前にここで手術した病院で、年に何回か定期検診を受けている。筆者も、年に1回の健康診断を永寿病院で世話になった(現在は近くのクリニック)。
だから、永寿でクラスター感染が生じたことは、他人事とは思えず、軽い震撼、ショックを受けた。つい2日ほど前には、感染者が100人を超え、死亡者も7人が出て、行く末が憂慮されている(今日3人が逝去された)。
谷中の特養もまた深い繋がりがある。亡母が寝たきりになったとき、専門スタッフの方から懇切なアドバイスをいただいた。また、町会役員だった時、婦人部の有志のみなさんが奉仕活動をしていて、筆者はその広報をお手伝いした(といっても2、3回のことで、濃密とはいいがたい)。
このようなご縁があったので、その時に入所されていた高齢者たちの穏やかな表情、彼らを支えているスタッフたちの献身的な働きなどがありありと思い出される。筆者がポンコツ寸前になったら、ここでご厄介になれないものか、と夢想したこともある。
筆者にとって日常的にゆかりのある場所で、世界に蔓延する新型コロナのクラスター感染が発生したことは、生半可な感染対策ではなく謹慎するに値する「引きこもり」を実践しなければならない。
▲4月になって雪が降った日(3月29日)。自室から見る桜、花冷えの冴えない景色。希望を見出したい思いで撮ったのだが・・。
蛇足:世情を騒擾させたコロナ禍のなか、2月から3月にかけて毎日楽しみにしていたことがあった。今をときめく講談師、神田松之丞あらため真打になった神田伯山のYouTube『伯山TV』がたちあがった。新宿、浅草、池袋で行われた、真打披露公演における口上および楽屋の模様が毎日公開された。定席をつとめる前座・二つ目、そして出演者の面々が入り乱れての登場。凄い&面白い。
松之丞の師匠神田松鯉さん(全ての口上、跳ねた後の打上に連日の御出席、素晴しい!)、目上の姉弟子らも毎日駆けつける。楽屋の人間模様はもちろん、師匠たちの微妙なやりとりが面白く、何とも言えない。こんな映像は前代未聞であるが、貴重な資料映像となるに違いない。
さらに、これらの一連の披露公演が終了したら、なんと松之丞時代の最後の公演『畦倉重四郎』全19席連続の読みが日毎に公開された。5日間連日の単独興行を行った、ファン垂涎の大岡越前もののピカレスク講談、曰くつきの『畦倉重四郎』。このチケットを取るのは、マニアの間では奇跡といわれた。それが今や、いつでもどこでも見られる。
それにしても神田伯山の迫真の講釈、様々な人間を演じわける渾身の語り・・。かくもリアリティ溢れたっぷりと、江戸の世の物語がまざまざと独力で再現される。その語りの芸の精進、その凄さ、ひたむきさがひしひし伝わってくる。
講談の世界とはまさに、これほどに面白かったのか、と目から鱗の体験を、毎日19日間も味わさせてもらった。コロナ禍のなかで、日々の愉しみがあったことは、まさに救われる思いであり、天才伯山に謝意を表したい。
#01】畔倉重四郎「悪事の馴れ初め」(1席目)【全19席】
▲4Kの高画質映像、YouTubeでも珍しい、いや画期的だ。
若さに違わぬ迫真と迫力。ポピュラーミュージックで言われるところの音圧の強さ。何より語りに独自の調子がある。伯山は元は談志に憧れ噺家を志したというけれど、噺家で言えばかつての名人たちは皆それぞれの調子を持っていましたよね。
金馬、文楽、圓生、柳橋、志ん生・・・。落語にしても講談にしても語りの調子があることで演者独自の世界観に聴くものが呑み込まれる。そこが一人芝居とは違うところ。近頃の噺家は、上手いと言われる者でも一人芝居が多くて嘆かわしい嘆かわしい。
談志が存命なら伯山をどう評しますかね。
「談志が存命なら伯山をどう評しますかね。」
ご存じかどうか知りませんが、伯山がこの世界に入ったのは、談志に惚れちまったからです。学生の頃、談志の独演会に所沢まで行った。そのときの『らくだ』にど嵌りした。一時間たっても鳥肌たったままで、この時の経験をいろんなところで語っています。
講談師をめざしたのも、談志の講談が面白かったからで、競争相手の少ない講談界なら早く真打になれる、という彼なりの読み・戦略があったそうですよ・・。
さて、談志なら伯山をどう評したか。
もちろんあーだこーだ言いながら、いちゃもんなんぞ付けたんじゃないでしょうか。
でも、談志は、伯山に自分と同じ匂いを嗅ぎつけたでしょうね。
毒舌、癖の強さ、世間への斜め読み、好物へのこだわりなど、談志の生きざまをトレースしたかのような伯山のふるまい。同業者に対する遠慮のない嫌味、批判、なおかつ容赦のないところ、嫌われ者になる資格は充分あります。でも、それが面白く、芸談になるところがまた伯山の凄みであり、談志愛の片りんをみせているわけで・・。
あ、いけね、長くなっちまった。
トミオカさん、そういえばお元気になって下界に戻られたんですね。おめでとうございます! これでまた、FBにて嫌味な突っ込みを入れさせてもらえますね。
ですが、こちとらの上を行く、逆ツッコミが返されるわけで、いじりいじられる関係も復活した、、ということにしておきましょう。
それでは、また。これに懲りず、お願いします。
FBから、なんの通知もなかったし、シグナルにも気づかなかったんです。ほんとです。
最近FBにほとんどアクセスもしなくなって、そのせいで使い方も忘れる始末。
お怒りごもっともです。この場をかりて、お詫びいたしやす。これじゃ、駄目ですか、トミオカさん。