凛とした寒気が祖谷の山々を、山麓の木々を、山里の家々を凍てついて
すっぽりと包んでしまったかのようで、索漠とした風景は暮らしには
厳しいものがある、が、この厳しい暮らしを耐えてこそ巡りくる美しい風景と
喜びの暮らしが訪れるのであり、それは、新鮮な美しさであろう
美しさは索漠とした暮らしと風景に裏打ちされたもので、だからこそ感性に
響くのであろう
集落に住むお年寄りの暮らしにはこの索漠とした暮らしと風景に身を委ねて
翻弄されながらも耐えて年を重ねる度にやがて、余裕を持ち、智慧を重ねて
楽しむことが出来るのではないかと思う
それは、おそらく、無意識のうちであろうが、だからこそあの屈託の無い笑顔を
深い皺を重ねた顔に、自然と浮かべてしまうのではないだろうか
常日ごろから索漠を楽しむことがあっても良いのではないかと思うことである
索漠とした暮らしのある自然の美しさと感動は人の暮らしの匂いのない自然よりも
一段と感性を揺さぶられる深い感動を齎してくれるようである
「いづれの花か散らで残るべき。散るゆえによりて、咲く頃あればめづらしきなり」
山寺や谷渡り来て鐘冴ゆる
罅の手に米寿の祝儀光りをり
悴みて鍬持ちかねし老婦かな
突にして雪折れ弾け闇夜かな
雪しづり木々の強さを推し測り
寒燈に里静まりて推敲句
鹿も滑る