映画のデジタル化は2013年に完了する、らしい。
デジタル化の完了とは、イコールフィルムプリント映画の終了 を意味しているのだろう。
技術の進歩には、必ず光と影両方の側面がある。
マイナーな単館系ミニシアター、アート系、名画座と言われる映画と映画館をずっと愛してきた(わりには足を運んでいないのが罪だとは思う)映画好きとしては、負の面の心配で、心がいっぱいだ。
フィルム映画は、どうなっていくのか。
ミニシアターは激減するのか。
地方の単館系映画館は消滅するのか。
実は、デジタルよりもフィルムの方が、長期保存に適しているということであればフィルムアーカイブはどうなるのか。
以下、あちこちの記事 備忘録 ***************************************
☆東宝株式会社 公式HPより
映画館のデジタル化
○映画=テクノロジーの進歩
「2010年、3D元年」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょうか。
映画は、常に時代の最先端技術とともに進化します。一般的に映画の誕生とされる、フランスのリュミエール兄弟によるシネマトグラフの一般公開(1895年12月28日)から1世紀以上が経ち、テクノロジーの進歩とともに数々の名作が誕生。そして現在、日本では急速に映画のデジタル化の動きが広まっており、それをさらに加速させたのが3D大作映画の公開でした。
3Dについてご説明をする前に、まずは映画館のデジタル化について触れておきたいと思います。
○映画館のデジタル化とは
従来、映画館で作品を上映する際には、アナログフィルムを使用していました。このフィルムを一切使用せず、デジタルデータであるDCP(※)を素材とし、デジタル・プロジェクターで上映する方式のことを「デジタル上映」といいます。
デジタル上映が普及すると、デジタルカメラで撮影した映像をコンピュータで編集し、データ形態で映画館に配信しプロジェクターで上映することが可能となるため、製作・配給・興行のそれぞれの段階で作業の効率化が可能となります。
この動きは、2005年のハリウッドメジャースタジオによるDCI標準化(※)の発表を契機に、アメリカを中心に進んできました。一方、日本では映画興行側(映画館)が受け持つこととなる、サーバーやプロジェクターへの高額な設備投資の関係上、慎重な姿勢が保たれてきました。
しかし、2009年から現在にかけての3D映画の大ヒットを受け、2006年に96スクリーンと言われたデジタル上映可能なスクリーン数は、2010年末時点で763スクリーンと増加し、映画館のデジタル化は一気に進むことになりました。
※DCP(Digital Cinema Package):暗号化・圧縮化された映像・音声・字幕データ等全てを含む上映用ファイル。
※DCI(Digital Cinema Initiatives):デジタルシネマの映写及び配給に関する技術仕様を制定することを目的に、2002年にハリウッドのメジャー映画制作スタジオ7社が設立した業界団体
○デジタル化のメリット
映像品質向上映像や音声がデジタルデータ化されているため、フィルムにおけるテープ表面の磨耗による品質劣化がなく、鮮明な画像を常にお客様に提供することが可能。様々な上映形態の実現1本のファイル転送で複数スクリーンでの上映や、オンライン配信によるスポーツやライブの生中継が可能。字幕版と吹替版の切り替えも簡単に。コスト削減撮影費用、フィルムを扱う人件費、発送・保管にかかるコスト等が削減可能。
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☆シネマトゥデイ映画ニュース 2011年11月24日記事
24日、現在開催中の第12回東京フィルメックスで公開シンポジウム「デジタル化による日本における映画文化のミライについてPart 2」が開催され、瀬々敬久監督、村上淳、大分県のミニシアター「シネマ5」の田井肇氏、日本大学藝術学部映画学科の古賀太教授らが参加し、活発な議論を戦わせた。
冒頭、まず田井氏がミニシアターが置かれている現状を解説。それによると、映画が音声を得た「トーキー」、そして色彩を得た「カラー」に続く映画の革命といわれる「デジタル化」。シネコンを中心にデジタル化は着々と進んでおり、2013年にはすべての映画館のデジタル化が完了予定。それに伴い、35ミリフィルム上映がなくなってゆくことが予想されているという。今回のシンポジウムは、それによりアート系などマイナーな映画が上映の可能性が狭まる「映画文化の多様性の危機」が心配されるというテーマで開催された。
デジタルシネマの設備投資は1,000万円前後。しかし、ミニシアターがその設備を導入するのは困難が伴う。そこで考え出されたのがVPF(バーチャル・プリント・フィー)というシステムである。これはつまり、これまで約20~30万円程度かかっていたフィルムの現像代・輸送コストなどが、デジタル化によって実質ゼロになるため、その分配給会社が浮いたお金をVPFサービサー(現在、日本にはソニー系、ブロードメディア・スタジオなど3社がある)に支払い、映画館からデジタル上映機器の利用料を徴収することで、映画館のデジタル化を推進しようというもの。
現在、アート系と呼ばれるような小規模公開の映画は2~5本程度のフィルムを現像し、それらを全国に巡回させている。たとえば1本のフィルムが5か所の映画館で巡回上映されるとしたら、VPFのシステムでは配給会社が一か所で上映するごとに7~9万円を払わなければいけなくなる。シンポジウム内では、これが、芸術性は高くてもヒットの見込みが低い作品は配給会社が供給を躊躇(ちゅうちょ)するようになり、アート系映画が観られなくなる、というのがこの問題の本質であるとも指摘された。
田井氏は「2013年には日本の映画館のデジタル化が完了するといわれているが、それはつまりデジタル化しきれなかった地方単館系の映画館を苦しめ、廃業させるということによってもたらされるもの」と指摘する。また、仮に現像代20万円を稼ごうとする場合、1週間で160~170人程度を動員しなければならないといい、地方ミニシアターの場合、年間上映される作品の中で興収20万円を超えなかった作品は半数近かったという。さらにわかりやすく解説するために、「キネマ旬報ベスト10」「映画芸術ベスト10」に選ばれた作品で、地方のミニシアターで興収の低かった作品が挙げられると驚きの声が。そこに挙げられた主な作品は『エグザイル/絆』『愛のむきだし』『SR サイタマノラッパー』『チェイサー』『イースタン・プロミス』『ヘヴンズ ストーリー』などなど……。「今までは(1館あたり)10万円すれすれで採算を度外視してでもやってきた映画がゴロゴロある。でもVPFによってデジタル化を遂げた場合、半分以上の映画は配給会社から断られるようになり、上映ができなくなる」という警鐘に言葉を失う会場内。
もちろん日本でも経済産業省がデジタル上映の設備投資に支援金を出すなど、公的な援助も行われている。決してデジタル化は悪の権化というわけではなく、「フレキシブルな上映プログラムが組める」「地方都市でもロードショー作品を早い段階で観ることができる」「オペラやライブ上映といったこれまでにないコンテンツを観ることができる」といったメリットがある。田井氏も「デジタル化という映画史上最大の革命が起きているのに、革命実感がない。デジタル化によって、地方でも東京と同時にロードショーを開始できる。メジャーとマイナーの差が埋められる本当の革命ができるはず。何でデジタル化したのに、映画の入場料が下がらないのかとか、もっとフランクな声が出てきてもいいはずだ」とコメント。いまだ解決策の見えないデジタル問題であるが、日本の映画文化を守るため、これからも活発な議論を期待したい。(取材・文:壬生智裕)
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☆「フィルム映画を捨てないで!」
国際フィルムアーカイブ連盟 70周年記念マニュフェスト 国立近代美術館フィルムセンターHPより
映画フィルムは、わたしたちの文化遺産の欠くことのできない一部であり、また、わたしたちの歴史と生活のユニークな記録ともなっています。フィルム・アーカイブは、公的なものも私的なものも、そうしたフィルムを収集し、安全に保管し、文書化し、現在の人々と未来の世代とが、研究のためあるいは楽しみのために、それらを利用できるようにすることに責任を負っている機関です。
現在、65を越える国々から130以上の加盟がある国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF/フィアフ)とその会員機関は、過去70年にわたって200万以上の映画フィルムを救済してきました。その一方で、特定のジャンルや地域、映画史の時代区分については、その映画作品残存率が10%を大きく下まわっているという事実も知られています。
FIAFはその70周年を機に、世界に向かって新たなスローガン「映画フィルムをすてないで!」を提起します。もしあなた自身のところできちんと映画を保管しておくことができないのなら、FIAFとその会員機関は喜んでそれができるアーカイブを探す手助けをいたします。映画フィルムは、文化的にかけがえのないものであり、それが特に専門家の手にあれば、長期にわたって存続できるものなのです。
今日の映像技術が、デジタルの分野で達成される発展を力にして前進していることは十分に認めつつも、しかしFIAF会員は、今後も映画フィルムを収集しフィルムとして保存し続けることを決意しています。この方針は、デジタル・ボーンの映像遺産を保存するための効果的な方法の開発に対して相互補完的な関係をもつことになります。映画を作りまた保管する、プロとアマチュアとを問わないすべての人々に、また、世界の映画遺産を安全保護することに責任をもつすべての政府関係者に対して、FIAF加盟機関は、強くこの使命遂行への協力を求めます。
「映画フィルムをすてないで!」というスローガンは、フィルムの所有者が、そのフィルムを、より安定したフィルム・キャリアに転写することによって、あるいは明らかに重大な情報欠損を引き起こすことがない解像度でデジタル・ドメインにスキャンすることによって、フィルムのコンテンツを適切に確保し得たと考えたとしても、当のフィルムを投棄・廃棄してはならない、ということを意味しています。フィルム・アーカイブやミュージアムが映画フィルムをフィルムのまま保存することを決意しているのには、次のような理由があります。
●映画フィルムは、映画作家の直接的な監督のもとに創造されたもの、あるいはカメラマンによって捕らえられた歴史的瞬間の記録です。いずれのタイプであれ、それらはますます重要となる可能性を秘めた人造物であり、世界の文化遺産の一部です。フィルムは手で触れることができ、目で読み取ることができるモノであり、美術館・博物館が所蔵する作品や歴史的文物と同様に、慎重な取り扱いを必要とします。
●映画フィルムは物理的・化学的に脆弱であるとも言えますが、適正に保管され怠りなく扱われれば何世紀にもわたって存続できる安定した素材であるとも言えます。その寿命は、のちに開発されたビデオテープのような映像キャリアなどよりもはるかに長いということがすでに証明されています。一方、デジタル情報は、機械的な読み取り/翻訳がなければ価値をもたず、また、デジタル情報が載っているキャリア素材は、物理的・化学的な劣化に対して十分な耐久性を持たず、さらに読み取り/解釈に必要なハードウェアやソフトウェアは陳腐化を免れません。
●映画フィルムは現在のところ映像にとって最良の長期保存メディアです。それはわれわれが手にすることのできる製品のなかでもっとも標準化され国際化されたものの一つであり、今も高解像度メディアとしての可能性を秘めています。フィルムに含まれる情報は定期的な移し替え(マイグレーション)を必要とせず、また、その操作システムの頻繁な更新を必要としません。
●アーカイブの倉庫に保管されているさまざまなフィルムは、そこからあらゆる複製物が作られる原版素材です。それらから複製物の完全さ不完全さが判定されます。デジタル技術が進歩すればするほど、映像の内容に手を加えたり、恣意的に改変することが容易になってしまいます。しかしながら、不正な改変や不当な歪曲が行われたとしても、もとのフィルムが適切に保管されていれば、比較することによって、いつでもそうした違いを見つけだすことができます。
映画フィルムを決してすてないで!――たとえ、あなたが何か良い新製品が現れたと思ったとしても。将来、どんな映像技術が現れたとしても、今あるフィルムのコピーこそは、わたしたちを過去の業績と確かな何かとに結びつけてくれているのです。フィルム・プリントは存続します。フィルムをすてないで!
デジタル化の完了とは、イコールフィルムプリント映画の終了 を意味しているのだろう。
技術の進歩には、必ず光と影両方の側面がある。
マイナーな単館系ミニシアター、アート系、名画座と言われる映画と映画館をずっと愛してきた(わりには足を運んでいないのが罪だとは思う)映画好きとしては、負の面の心配で、心がいっぱいだ。
フィルム映画は、どうなっていくのか。
ミニシアターは激減するのか。
地方の単館系映画館は消滅するのか。
実は、デジタルよりもフィルムの方が、長期保存に適しているということであればフィルムアーカイブはどうなるのか。
以下、あちこちの記事 備忘録 ***************************************
☆東宝株式会社 公式HPより
映画館のデジタル化
○映画=テクノロジーの進歩
「2010年、3D元年」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょうか。
映画は、常に時代の最先端技術とともに進化します。一般的に映画の誕生とされる、フランスのリュミエール兄弟によるシネマトグラフの一般公開(1895年12月28日)から1世紀以上が経ち、テクノロジーの進歩とともに数々の名作が誕生。そして現在、日本では急速に映画のデジタル化の動きが広まっており、それをさらに加速させたのが3D大作映画の公開でした。
3Dについてご説明をする前に、まずは映画館のデジタル化について触れておきたいと思います。
○映画館のデジタル化とは
従来、映画館で作品を上映する際には、アナログフィルムを使用していました。このフィルムを一切使用せず、デジタルデータであるDCP(※)を素材とし、デジタル・プロジェクターで上映する方式のことを「デジタル上映」といいます。
デジタル上映が普及すると、デジタルカメラで撮影した映像をコンピュータで編集し、データ形態で映画館に配信しプロジェクターで上映することが可能となるため、製作・配給・興行のそれぞれの段階で作業の効率化が可能となります。
この動きは、2005年のハリウッドメジャースタジオによるDCI標準化(※)の発表を契機に、アメリカを中心に進んできました。一方、日本では映画興行側(映画館)が受け持つこととなる、サーバーやプロジェクターへの高額な設備投資の関係上、慎重な姿勢が保たれてきました。
しかし、2009年から現在にかけての3D映画の大ヒットを受け、2006年に96スクリーンと言われたデジタル上映可能なスクリーン数は、2010年末時点で763スクリーンと増加し、映画館のデジタル化は一気に進むことになりました。
※DCP(Digital Cinema Package):暗号化・圧縮化された映像・音声・字幕データ等全てを含む上映用ファイル。
※DCI(Digital Cinema Initiatives):デジタルシネマの映写及び配給に関する技術仕様を制定することを目的に、2002年にハリウッドのメジャー映画制作スタジオ7社が設立した業界団体
○デジタル化のメリット
映像品質向上映像や音声がデジタルデータ化されているため、フィルムにおけるテープ表面の磨耗による品質劣化がなく、鮮明な画像を常にお客様に提供することが可能。様々な上映形態の実現1本のファイル転送で複数スクリーンでの上映や、オンライン配信によるスポーツやライブの生中継が可能。字幕版と吹替版の切り替えも簡単に。コスト削減撮影費用、フィルムを扱う人件費、発送・保管にかかるコスト等が削減可能。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
☆シネマトゥデイ映画ニュース 2011年11月24日記事
24日、現在開催中の第12回東京フィルメックスで公開シンポジウム「デジタル化による日本における映画文化のミライについてPart 2」が開催され、瀬々敬久監督、村上淳、大分県のミニシアター「シネマ5」の田井肇氏、日本大学藝術学部映画学科の古賀太教授らが参加し、活発な議論を戦わせた。
冒頭、まず田井氏がミニシアターが置かれている現状を解説。それによると、映画が音声を得た「トーキー」、そして色彩を得た「カラー」に続く映画の革命といわれる「デジタル化」。シネコンを中心にデジタル化は着々と進んでおり、2013年にはすべての映画館のデジタル化が完了予定。それに伴い、35ミリフィルム上映がなくなってゆくことが予想されているという。今回のシンポジウムは、それによりアート系などマイナーな映画が上映の可能性が狭まる「映画文化の多様性の危機」が心配されるというテーマで開催された。
デジタルシネマの設備投資は1,000万円前後。しかし、ミニシアターがその設備を導入するのは困難が伴う。そこで考え出されたのがVPF(バーチャル・プリント・フィー)というシステムである。これはつまり、これまで約20~30万円程度かかっていたフィルムの現像代・輸送コストなどが、デジタル化によって実質ゼロになるため、その分配給会社が浮いたお金をVPFサービサー(現在、日本にはソニー系、ブロードメディア・スタジオなど3社がある)に支払い、映画館からデジタル上映機器の利用料を徴収することで、映画館のデジタル化を推進しようというもの。
現在、アート系と呼ばれるような小規模公開の映画は2~5本程度のフィルムを現像し、それらを全国に巡回させている。たとえば1本のフィルムが5か所の映画館で巡回上映されるとしたら、VPFのシステムでは配給会社が一か所で上映するごとに7~9万円を払わなければいけなくなる。シンポジウム内では、これが、芸術性は高くてもヒットの見込みが低い作品は配給会社が供給を躊躇(ちゅうちょ)するようになり、アート系映画が観られなくなる、というのがこの問題の本質であるとも指摘された。
田井氏は「2013年には日本の映画館のデジタル化が完了するといわれているが、それはつまりデジタル化しきれなかった地方単館系の映画館を苦しめ、廃業させるということによってもたらされるもの」と指摘する。また、仮に現像代20万円を稼ごうとする場合、1週間で160~170人程度を動員しなければならないといい、地方ミニシアターの場合、年間上映される作品の中で興収20万円を超えなかった作品は半数近かったという。さらにわかりやすく解説するために、「キネマ旬報ベスト10」「映画芸術ベスト10」に選ばれた作品で、地方のミニシアターで興収の低かった作品が挙げられると驚きの声が。そこに挙げられた主な作品は『エグザイル/絆』『愛のむきだし』『SR サイタマノラッパー』『チェイサー』『イースタン・プロミス』『ヘヴンズ ストーリー』などなど……。「今までは(1館あたり)10万円すれすれで採算を度外視してでもやってきた映画がゴロゴロある。でもVPFによってデジタル化を遂げた場合、半分以上の映画は配給会社から断られるようになり、上映ができなくなる」という警鐘に言葉を失う会場内。
もちろん日本でも経済産業省がデジタル上映の設備投資に支援金を出すなど、公的な援助も行われている。決してデジタル化は悪の権化というわけではなく、「フレキシブルな上映プログラムが組める」「地方都市でもロードショー作品を早い段階で観ることができる」「オペラやライブ上映といったこれまでにないコンテンツを観ることができる」といったメリットがある。田井氏も「デジタル化という映画史上最大の革命が起きているのに、革命実感がない。デジタル化によって、地方でも東京と同時にロードショーを開始できる。メジャーとマイナーの差が埋められる本当の革命ができるはず。何でデジタル化したのに、映画の入場料が下がらないのかとか、もっとフランクな声が出てきてもいいはずだ」とコメント。いまだ解決策の見えないデジタル問題であるが、日本の映画文化を守るため、これからも活発な議論を期待したい。(取材・文:壬生智裕)
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☆「フィルム映画を捨てないで!」
国際フィルムアーカイブ連盟 70周年記念マニュフェスト 国立近代美術館フィルムセンターHPより
映画フィルムは、わたしたちの文化遺産の欠くことのできない一部であり、また、わたしたちの歴史と生活のユニークな記録ともなっています。フィルム・アーカイブは、公的なものも私的なものも、そうしたフィルムを収集し、安全に保管し、文書化し、現在の人々と未来の世代とが、研究のためあるいは楽しみのために、それらを利用できるようにすることに責任を負っている機関です。
現在、65を越える国々から130以上の加盟がある国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF/フィアフ)とその会員機関は、過去70年にわたって200万以上の映画フィルムを救済してきました。その一方で、特定のジャンルや地域、映画史の時代区分については、その映画作品残存率が10%を大きく下まわっているという事実も知られています。
FIAFはその70周年を機に、世界に向かって新たなスローガン「映画フィルムをすてないで!」を提起します。もしあなた自身のところできちんと映画を保管しておくことができないのなら、FIAFとその会員機関は喜んでそれができるアーカイブを探す手助けをいたします。映画フィルムは、文化的にかけがえのないものであり、それが特に専門家の手にあれば、長期にわたって存続できるものなのです。
今日の映像技術が、デジタルの分野で達成される発展を力にして前進していることは十分に認めつつも、しかしFIAF会員は、今後も映画フィルムを収集しフィルムとして保存し続けることを決意しています。この方針は、デジタル・ボーンの映像遺産を保存するための効果的な方法の開発に対して相互補完的な関係をもつことになります。映画を作りまた保管する、プロとアマチュアとを問わないすべての人々に、また、世界の映画遺産を安全保護することに責任をもつすべての政府関係者に対して、FIAF加盟機関は、強くこの使命遂行への協力を求めます。
「映画フィルムをすてないで!」というスローガンは、フィルムの所有者が、そのフィルムを、より安定したフィルム・キャリアに転写することによって、あるいは明らかに重大な情報欠損を引き起こすことがない解像度でデジタル・ドメインにスキャンすることによって、フィルムのコンテンツを適切に確保し得たと考えたとしても、当のフィルムを投棄・廃棄してはならない、ということを意味しています。フィルム・アーカイブやミュージアムが映画フィルムをフィルムのまま保存することを決意しているのには、次のような理由があります。
●映画フィルムは、映画作家の直接的な監督のもとに創造されたもの、あるいはカメラマンによって捕らえられた歴史的瞬間の記録です。いずれのタイプであれ、それらはますます重要となる可能性を秘めた人造物であり、世界の文化遺産の一部です。フィルムは手で触れることができ、目で読み取ることができるモノであり、美術館・博物館が所蔵する作品や歴史的文物と同様に、慎重な取り扱いを必要とします。
●映画フィルムは物理的・化学的に脆弱であるとも言えますが、適正に保管され怠りなく扱われれば何世紀にもわたって存続できる安定した素材であるとも言えます。その寿命は、のちに開発されたビデオテープのような映像キャリアなどよりもはるかに長いということがすでに証明されています。一方、デジタル情報は、機械的な読み取り/翻訳がなければ価値をもたず、また、デジタル情報が載っているキャリア素材は、物理的・化学的な劣化に対して十分な耐久性を持たず、さらに読み取り/解釈に必要なハードウェアやソフトウェアは陳腐化を免れません。
●映画フィルムは現在のところ映像にとって最良の長期保存メディアです。それはわれわれが手にすることのできる製品のなかでもっとも標準化され国際化されたものの一つであり、今も高解像度メディアとしての可能性を秘めています。フィルムに含まれる情報は定期的な移し替え(マイグレーション)を必要とせず、また、その操作システムの頻繁な更新を必要としません。
●アーカイブの倉庫に保管されているさまざまなフィルムは、そこからあらゆる複製物が作られる原版素材です。それらから複製物の完全さ不完全さが判定されます。デジタル技術が進歩すればするほど、映像の内容に手を加えたり、恣意的に改変することが容易になってしまいます。しかしながら、不正な改変や不当な歪曲が行われたとしても、もとのフィルムが適切に保管されていれば、比較することによって、いつでもそうした違いを見つけだすことができます。
映画フィルムを決してすてないで!――たとえ、あなたが何か良い新製品が現れたと思ったとしても。将来、どんな映像技術が現れたとしても、今あるフィルムのコピーこそは、わたしたちを過去の業績と確かな何かとに結びつけてくれているのです。フィルム・プリントは存続します。フィルムをすてないで!