象が転んだ

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整形手術の女〜真夜中の訪問者”その124”

2023年02月17日 03時55分08秒 | 真夜中の訪問者

 夢の中でのお話だが、整形手術を受けてとてもいい女になった人がいた。
 元々その中年女性は、あるスナックの全く冴えない中堅どころのホステスだった。
 正直、”あんな容姿でよくホステスが務まるな”というのが私の第一印象である。
 決して悪い意味ではない。あまりにも普通すぎて、水商売には向かないと思ったからだ。

 夢の中で、私はある飲み屋にいた。
 田舎なら何処にでもありそうな駅前の寂れたスナックである。店内はとても狭く、ホステスは高齢のママを含め二人しかいない。
 それでも不思議と、その空間は私には安らぎをもたらしてくれた。
 私はその女性と不思議と気が合った。何を話す訳でもなく、横にいてくれるだけでだたそれだけで気持ちが和らいだ。
 これと言って特徴のある顔立ちでもなく、少し背が曲がった中肉中背の平凡すぎるスタイルは、ホステスという水商売の定義には程遠くも感じていた。

 私がボーッとしてると、女がポツリと呟く。
 ”ワタシ・・実は整形したの。気づかなかった?”
 私は思わず悪ノリをしてしまう。
 ”整形しても変わらん顔立ちでしょ。何事も普通が一番なのに、何でそんな事するか・・・”
 ”いや、美人になろうと思ってじゃなく、自分を変えたかったの”
 ”今更自分を変えてどうなる?外見を変えた所で運命が変わるなら、整形サギ医は一人勝ちですよ”
 ”そんな簡単なことじゃないのは解ってるつもりだけど、何だかそういう気がした”
 ”神のお告げってやつ?”
 ”いや、霊感っていうやつかな”
 ”そういうのを自らに棲み付く悪の妄想と言うんだよ”
 ”妄想かもしんないけど、運命を変える適切な顔があってもいいと思うの・・”

 私は改めて、その女の顔を見た。
 何もどこも変わってないように思えた。
 ”よーく見て頂戴。ここら辺が変わったでしょ?ココとココとココ・・・”
 私は女の顔を近くで眺めてるうちに、欲情の深い罠に陥った。いや目の前の女が憐れに思え、同情が欲情に変わったのかもしれない。
 大して魅力のない中年女がとても魅惑的に思えてきたのだ。勿論、理由はわからない。
 客は私だけという錆びついた田舎のスナックである。
 ”少しくらいエッチな事しても・・・”
 私は女を抱えあげ、両太ももの上に乗せた。いわゆる”抱っこチャン”状態である。
 女は不思議と軽かった。キスを交わし、両手を背中に回し、思い切り抱きしめた。
 大してエロチックでもなかったが、悪い気はしなかった。私にはこれくらいで丁度良かった。何でもそうだが、程々と普通が丁度いい。


プールサイドにて

 私は女と再び遭う約束をして、スナックを後にした。
 夢の舞台は、とあるスポーツセンター内のプールサイドに変わる。
 別に泳ぐつもりで来た訳じゃない。女がそこでインストラクターをしてるから”一度寄ってみて”と言うので来たまでである。
 凄くいい女になっていた。
 ”また整形したのか?”
 ”どういう意味?小バカにしてんの”
 ”いや前よりずっと良くなってる。目立たないけど凄く良い”

 昭和の世代なら懐かしい響きだが、若い時の生意気な長崎宏子を上品にした様な感じであった。
 ”実は、もう一度整形しようと思ってる。今の顔が気に食わないの。平凡すぎて個性がないみたいで・・”
 ”バカ言うんじゃない。今のままでずっと良い。<平凡の中の非凡>という諺もあるじゃないか”

 女はクスッと笑みを漏らした。
 ”顔が褒められたの、生まれて初めて・・小さい頃から平凡すぎる顔が嫌で嫌で仕方なかったのに、貴方だけよそんなお世辞言ってくれる人は・・”
 ”冗談じゃない。本気で言ってるんだ。目・鼻・口と1つ1つのパーツとして見れば、非凡なんだよ”
 ”お世辞は十分よ。そろそろ仕事に戻らないと・・”
 ”いやお世辞じゃない。俺は本気だ。薄っぺらで安っぽい美人よりも上品な普通の方が女のランクとしては上なんだ”

 女は笑いながら、プールの方へ戻っていく。

 数日後、その女と偶然出会った。
 女は明らかに整形していた。洋風でダイレクトな顔立ちは女の全てを変えていた。いや、悪い意味で変形していた。
 しかし女は、性格も明るくなったみたいで、自信満々で近づいてくるではないか。
 ”どう?今度は大成功よ。主治医も太鼓判を押してくれたし、それに周りの評判もとても良い。どう?今のワ・タ・シ”
 派手でガサツに成り果てた女の顔は、私にはグロテスクな化け物に思えた。
 ”AV女優か風俗で稼ごうと思うのなら、それで構わんかもだが、女としてのアンタはすでに終わっている”
 ”どういう意味?”
 ”LostLadyって言葉を知ってるか?”
 ”いや知らない”
 ”貴婦人が(位と女を捨てて)娼婦になる事だよ”

 彼女はキョトンとしていたが、私には目の前の女が崩壊していくのが目にとる様に理解できた。
 度重なる整形により、老化と劣化が重なり合い、見るも無残な生き物に変異していく。
 人には慣れ親しんだ自分を維持しようという”生存の法則”が備わってる筈だ。そういうのを無視して自分という生態系を維持できる訳がない。
 そうこう思ってると、女の背中が傴僂(せむし)のように折れ曲がり、立つのもやっとという状態になっていく。
 私はその女を見て見ぬふりをして、その場から離れた。
 その時、夢から覚めた。

 普通とか平凡とかが、如何に貴重で素晴らしいものかを我ら人類は知らなさすぎる。
 人は意識的に変わろうとするほど人はグロテスクになる。意識改革とは聞こえはいいが、所詮は悪の妄想に過ぎない。
 つまり、人が人間らしくある為にはどんな容姿であろうが、普通が一番だと思い知らされた夢でもあった。
 

追記〜白人女と女子学生

 その後、2度続けて同じ様な夢を見た。
 最初は、先の夢で出会った女性(日本人)が中年のアメリカ白人女に変わっていた夢だ。
 女は「フィアー・ザ・ウォーキングデッド」に登場するマディソン(キム・クラーク=写真)によく似ていた。
 ”アナタは有名なTVドラマに出てましたよね”と問うと、”今はもうやってないの。それに、何処からも声が掛からないし・・正直、シリコンを胸に埋めて、女を売る商売でもやろうかなって”
 私は彼女の声が前回見た女と同じだった事に驚いた。暫く彼女の顔を見ていた。確かに、姿や格好や雰囲気はよく似ていた。
 ”白人だからって女を安売りするのは理解できない。アンタは強かな女を演じるのがとても上手い。もっと自分に自身を持つべきだ”
 ”何もわかってないくせに・・”
 彼女は日本人である私を蔑視するかのような仕草を見せ、背中をくるりと向けて去っていく。
 私は追いかけようとしたが、その時、目が覚めた。

 2度目は、ある避難所が夢の舞台だった。
 清楚で平凡な女学生だったが、よく見ると最初の夢での中年女を若くした様な雰囲気でもあった。
 それにとても物知りで、私が質問する全てに満点となる回答を与えていた。
 ”アンタは聡明な知能を持ってる。将来は何を目指すのかな”
 ”植物学者になるつもりよ”
 ”今の時代に植物?数理系でも十分行けるのに”
 ”数理よりも植物の方がずっと可能性が広いし、これから人類の運命を決定づけるのは植物に他ならないからよ”
 ”それは植物が人類の食と生を支えてきたから?”
 ”それは表層的なことで、植物の神秘ってもっと深い処にあるのね。つまり、植物をもっと知れば、戦争や醜い争いはなくなる筈だわ”
 ”植物の視点から人類の平和と調和が証明できる?”

 彼女は私との議論がウンザリだと思ったのか、話題を変えた。
 ”アナタは近くに住んでるの?もう何日もお風呂に入ってないから、よかったらお世話になってもいいかしら?”
 ”近くって言っても、電車に乗って1時間ほどの田舎だけど。それに居間は修理中でお風呂とても、お湯が出ると言うだけで貴女には満足出来るかどうか・・”
 ”お湯が出るだけで十分よ。それに臭う女ってイヤでしょ?”
 ”いや、インテリにしてはチャーミングすぎて、そこまでは気づかなかった。スタイルもクラブのホステスでも勿体ない程に魅惑的だし・・・”
 ”いくら褒めても埃も金も何も出てこないわ。それに、ナッシュ博士の事をもっと聞きたいの”
 ”いや、少しネットで調べた程度のもんだけど、君の植物学の参考になればと思って・・”
 ”植物の生態系も人類と同じ様に数学的なパラドクスやジレンマで覆われてるの。そういうのを1つ1つクリアしない限り、植物の神秘って謎のままだわ”

 私達は避難所を後にし、近くにある駅のホームへと向かう。
 クリスマス前だからか、ホームは多くの人や恋人達で賑わっていた。珍しく開放的になった私は、(恋人達がする様に)生意気にも彼女の横顔を眺める。
 特に唇が魅力的だった。私はいきなりこみ上げてくる衝動を抑えきれず、女の唇を強引に奪ってしまう。
 ”ああ、人前で何て事を・・・”
 恥ずかしい自分が情けなかったが、彼女は嫌がる素振りすらしない。
 お互いに黙ったまま時間が過ぎ、気がついたら自宅にいた。
 修復中の居間を二人で整理し、何とか寒い冬を越せるようにレイアウトした。全てが夢中だったが、彼女は気がつくとお風呂に浸かっている。
 私は久しぶりの外出で疲れていたから、先に布団をかぶって寝込んでしまった。
 朝になり、気がつくと彼女が横に寝てるではないか。それも素っ裸のままだ。
 私の横に裸の若い女がいる。
 こういう事実だけでもオメデタイ事なのに、私はただただ女の美しい完成された肢体に見とれていた。

 彼女が目を覚ますと、何かを囁いた。
 ”着てた洋服は全て洗濯機の中に入れといた。だって、臭う女は嫌いでしょ?”
 私は何も言えなかった。私は真っ白な裸体の上に覆いかぶさり、全てを支配しようとした。この状態が永遠に続くのを望んだ。
 その時、夢から覚めた。



4 コメント

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バレンタインデー (tomas)
2023-02-17 12:38:39
の贈り物ってやつなんですかね。
タイプでもタイプじゃなくても
夢に出てきたってことは
女神からのささやかなプレゼントだと思いましょうよ。

それと最近はプチ整形といって
目立たないコストの掛からないやつも流行ってるらしいです。
普通が一番とは言っても
少しでも美しくあり続けたいというのが乙女心ってもんじゃないですか。

マディソン(キムクラーク)さんですが
私には歳食ったネーブキャンベルに思えました。そのキャンベルさんですが、かなり劣化してますよね。 
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tomasさん (象が転んだ)
2023-02-18 05:35:17
ネーブ・キャンベルって
懐かしすぎますね。
ハリウッドの女優さんて、整形の蓄積でオバケになるのが常ですが(笑)、これも職業の属性上仕方ない事ですかね。
女優って全てが見た目ですから、演技派や性格派とか言っても大衆は見た目だけで評価する。
つまり、女優の劣化は我々大衆も一役買ってると言えます。

さてと
若い頃はバレンタインデーとなるとイヤらしい期待ばかりしてたんですが、今では何も感じなくなりました。
メディアも殆ど騒がなくなったから、収益的にも旨味がなくなったんでしょうね。
多分、バレンタインデーもクリスマスも何ら騒がれる事なく消滅するんでしょうか。
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Unknown (1948219suisen)
2023-02-18 10:19:50
普通が一番

私も、そう思います。

人の顔は少しいじると見違えるようになることがありますが、それに味をしめて何度もすると失敗することが多いらしいですね。だいたい何度も整形した人達の顔は同じ顔になって個性がなくなります。人の魅力って、やはり個性だと思うんですね。美人でも3日見続けたら見飽きると言われていますから、それなら最初から整形しないで普通でいたほうが賢いと思います。整形は、失敗することもありますから、そんな危険を避けるためにも。

人は男も女も中身で勝負するべきだと思います。
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ビコさん (象が転んだ)
2023-02-18 19:42:05
どんな顔を理想とするかは人それぞれですが、長い人生で見た場合、”見た目”って殆ど誤差みたいなもんですよね。
でも、会社の面接やオーディションなど初対面の第一印象が物を言う世界では、パッと見が最終的には決め手となる。
それでいて、我々は(一般論では)中身が重要だと言いつつ、見た目をとても意識する。

結局は、見る側も見られる側も”見た目”という呪縛には逆らえないんですかね。
返事になってなくてスミマセン。
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