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トランプが夢に出てきたのは、今回で何と5度目である。それも、前回「その110」の22年7月以来だから、2年と7ヶ月ぶりである。
勿論、夢の中の事だから自慢する事でもないが、最近は夢すら見なくなったから、こうした著名人が登場する夢はしっかりと記憶に残っている。
ただ、トランプが夢に登場するのは決まって非常時である。過去を遡っても、最初はトランプ大統領が女性スキャンダルで窮地に追い込まれた時(その27)、2度目はソレイマニ氏暗殺とウクライナ機撃墜疑惑で、アメリカとイランに大きな緊張が走った時(その31)、3度目は再選を目指す中、コロナ感染で入院し、トランプ政権最大の危機の時(その48)。
そして前回「その110」は、トランプ元大統領が続選に失敗し、バイデン政権にその座を奪われた時だ。
その夢の中で、トランプは必死に喘いでいた。プーチンの独裁と権力に必死に抗ってた様に思えたし、”今までの自分の生き方も理念も哲学も間違ってたかもしれない。でも、ここで立ち止まってては何も始まらない。俺は一人でも戦い続ける”との言葉には、不思議と説得力があった。
私はその記事の中で、”トランプが再び大統領になり、アメリカが変わるとも良くなるとも思えない。つまり、役立たずの老人は消えゆくべきなのだ”とまとめた。
そして今、それは現実のものとなろうとしている・・・
その男、検査員につき・・
夢の中で、私は広い体育館の中に幾つも用意されたテーブルの1つに座っていた。
そのテーブル群の中央に座っていたのが、何とトランプ大統領だった。実際にTVで見るトランプよりもずっと凛々しく頼もしくも思えた。
背筋をピンと伸ばしつつも深く考え込んでいた金髪の老人は、やがて側近らが用意した書類に目を通し、捜査官を一人一人指名しては、彼らの意見に耳を傾けていた。
一通り意見を聞き終えると、再び老人は考え込んだ。
私は横に座ってる男に事の真相を尋ねると、どうやら”プーチン暗殺計画”で話が進んでるらしい。つまり、今回ここにいる連中は、その対策案を一人一人が用意し、集まっていたのだ。
”プーチン暗殺なんて聞かされてないぞ”と不満を零しそうになったその時、トランプ大統領は私に顔を向け、一言言い放つ。
”君は検査員だと聞いている。何かいい案や凝った策はないのか”
”俺が検査員・・?”
私ないきなりの尋問に近い質問に、我を失いそうになる。
”既に君は調べてるつもりだろうが、報告をして欲しいんだ。何でも気付いた事を言ってくれ”
大統領の横にいる側近が付け加えた。
”報告と言っても、何も聞かされてはいないし、何をどう答えたらいいのか・・”
私は心の動揺をそのまま伝えた。
”何でもいい。君が思ってる事や何か閃いた事を教えてくれ”
青い目を大きく見開いた大統領は念を押す。
”仮にですが、スパイを送るにしても、多重的な組織にして送り込まないと全滅する。通常のやり方ではプーチンを暗殺できる確率はゼロに近い”
私は、時間を稼ぐ為に出任せを言った。
”どうしたらその確率を上げれるのかな?アンタにはその策があるのか?”
側近は答えを欲しがっていた。
”その為には、スパイの配置と組織のシステムの組み方と進め方が問題になる”
私は大統領の本音を知りたく、時間稼ぎの為に問題を提示した。
”勿論、それは承知の上だ。具体的にどうすべきかを聞いてるんだ”
大統領は少し苛立ってるようだ。
”プーチンの周りには沢山の取り巻きがいます。軍人からエリートまでその属性はバラバラです。そこで、その属性に応じたスパイを用意し、取り囲む様にして1人1人根気よく潰していく”
私は苦し紛れに言い放つ。
ランダムさの確率と食事会
”それだと、かなり大規模に複雑になるな。もっといい方法はないのか”
側近も苛立ってるようだ。
”抽象的になるよりかはマシでしょう。高度な命令系統を駆使し、多重にスパイを組み合わせる事で、多彩で柔軟な作戦を可能にする”
私はここでも出任せに近い事を言った。
”実際、どれだけのスパイが必要になるのかな?こちらとしては全面戦争だけは避けたいんだよ”
大統領は苛立ちを抑える。
”1人5役のスパイを演じる事ができるエキスパートが10人いれば、最小の組合せで5!=120人、クローンやダミーを使えば、最大で5¹⁰=1,953,125人にも達します。要は使い方次第です”
”そんな、SF映画みたいな事が実際に出来るのか?”
”要はトリックです。ランダムネスの科学を使えば不可能じゃない。つまり、相手を撹乱するだけで、プーチン政権は大きく混乱する”
”偶然の科学か・・・で、プーチンを倒せる確率はどれ位なのかな”
トランプの顔色が少しだけ明るくなる。
”机上の計算ですが、うまく混乱させる事ができれば、半々の確率で行けます。勿論、ランダムさの乱数の大きさにもよりますが・・”
ここでも私は出任せを言った。
”面白そうじゃないか、その案で進めよう。今すぐ、全米中の著名な数学者や確率論者を集めろ!いますぐにだ”
大統領は、ある書類を私に回した。
それは、大統領のサインが記された契約書で、金額(報酬)の欄が空白になっている。
”そこに好きな金額を書き給え。後日食事に招待するから、その時までに決めといてくれ・・”
私は頭の中が真っ白になった。
そこで、夢の舞台が変わった。
私は、大統領の側近が申し出たビルの前にいた。約束の場所は、そのビルの5階にある。大統領の食事会の場所にしては、不相応でみすぼらしかったが、約束の報酬を貰うには背に腹は変えられない。
少し怪しくも感じたが、エレベータに乗り、食事会の会場フロアへと向かう。するとそこには、私と同じ検査員が2人いた。
彼らもまた食事会に呼ばれたらしいが、話を聞くと食事だけで、報酬を貰う権利があるのは私だけだった。
ガラーンとした無機質で貧相な広い部屋には、白いテーブルが幾つも並べられ、まるで生協の食堂みたいな雰囲気だ。
”こんな所で大統領が食事するのかな?”
私が首を傾げてると、”ここに3人分のハンバーグ定食が用意されてるから、食べて待ってろ”って事だろうか・・まんまと騙されたのだろうか?これじゃ、アンタの報酬も信用できないね”ともう1人の同僚が言い放つ。
”確かに、アイデアだけ持ち逃げして、トンズラしたのかもしれない。あのハゲ爺め、予想通りのゲスな野郎だ”
私は、ありとあらゆる悪態を吐きながら、テーブルの上に置かれてる分厚いハンバーグを口にした。だが、そのハンバーグは本物だった。普段私が口にした事のない様な食感と風味が口の中一杯に広がる。
”ひょっとしたら、ウソじゃないかも知れない”
そう思った時、私達の背後にあるドアの音が鳴る。
”トントン・・”
思わず私が振り返ったその時、夢が覚めた。
最後に〜プーチン暗殺の法則
私がこの夢を見た、その翌日のニュースで、トランプ大統領が”戦争を仕掛けたのはプーチン氏じゃない”と、極端なロシア寄りの発言をした事が話題になっていた。
更に、”ゼレンスキーが停戦交渉を難しくしてる”と批判し、”プーチンが望めばウクライナ全土を占領出来ただろう”とまで言い切った。
もし、この発言が真実だとしたら、私が見た夢は私の脳がランダムに作り上げた単なるフィクションとなる。が、今回のトランプ発言がプーチンを暗殺する為のディール(駆引き)だとしたら、私が見た夢は正夢となる。
確かに、トランプはプーチンと仲がいい。が故に、プーチンの弱点を知り尽くしてると言えなくもない。勿論、その逆も真なりだが・・
事実、4年前にトランプが大統領選に破れ、失脚してた頃、プーチンは独裁者として絶頂期にあり、ウクライナを侵攻し、旧ソ連を崩壊させた西側諸国を混乱の渦に突き落とした。
つまり、それをトランプが手放しで喜んでいたとは到底思えない。むしろ、屈辱にも似た感覚だったろう。
つまり、トランプがプーチンに対し、嫉妬や復讐の念を抱いてたとしても不思議はない。事実、夢に登場したトランプは非常に冷静で強かだった。
冷静に考えれば、プーチン暗殺のシナリオの可能性はかなり低いが、全くないとも言い切れない。というのも、予測不能なランダムな世界では、突如として急カーブを描く事が半々の確率で起こるとされる。
つまり、トランプの親露寄りの発言が反プーチンに覆る事も、当然の様に起こりうるだろう。言い換えれば、”神はサイコロを振らない”が、現実にサイコロは投げられている。
例えば、量子力学の曖昧さが示す様に、”観測される現象が偶然や確率に支配される事がある”とすれば、”そこには必ず法則があり、決定されるべき数式がある”とアインシュタインは反論したが、それに従えば、プーチン暗殺のシナリオにも”実現されうる数式が存在する”筈である。
そういう意味では、夢にしては色々と考えさせられるシナリオでもあった。
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