象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

双子の女占い師〜真夜中の訪問者”その140”

2024年04月18日 05時37分54秒 | 真夜中の訪問者

 アマプラで「GetReady」(2023)というドラマが配信されていた。
 多額の報酬と引き換えに手段を選ばず患者の命を救う正体不明の闇医者を描いた1話完結のドラマだが、妻夫木聡演じる執刀医がブラックジャックとダブり、少し期待を持った。が、これと言って面白くも興味を引くものでもなかった。
 そんな中、妻夫木をサポートする藤原竜也が、インチキ占い師に騙されるシーンがある。
 幾らドラマだと言え、8万円ものお金を前金で払うバカがこの世にいるとも思えないが、そこはドラマである。それに、頭だけバニー(ガール)の格好をした女占い師は、ごく普通の婆さんである。 
 こう書いた時点で、どのドラマの質感が理解できそうなのだが・・・


ある執刀医の判断

 私が連載モノのTVドラマが好きになれない理由の1つに、脚本の軽薄さある。全てが中途に終り、オペのセットも貧弱で、キャストも貧相ならスタッフにもやる気が見られない。
 何事も中途な気持ちで取り掛かると、中途な結果に終わるの典型でもあった。
 そんな事を思いながら眠りに付いた。

 夢の中で私は、真っ白な部屋の中にいた。
 どこかで見た様な部屋だったが、ドラマ「GetReady」に出てくる部屋のセットである。
 私はある執刀医のマネジャーをやっていたが、気まぐれな医師は事もあろうに簡単なミスを犯し、総理大臣を死なせてしまう。
 ”何てを事してくれたんだ。アンタは総理に一番信頼されてるから紹介したのに”
 私は開口一番に不平を吐き出す。
 ”彼は生きるに値しない。支持率は高いが、弱者から金を巻き上げ、一族にバラまいてるだけだ”と、執刀医には反省の色の1つもない。
 ”10億のギャラは無効になるし、契約違反で俺らは潰されるぞ”
 ”心配御無用。オペは十全を尽くした。それに最初から助からない命だった”
 ”そんな事はない”
 ”いや、肺に打ち込まれたのは散弾だったから、その内の数発が心臓にまで達し、既に出血多量でショック死状態だった”
 ”でも、それを救うのがアンタの役目だろう。何度もそんなオペは成功させてきた筈だ。それでアンタは今、この地位にいる”

 執刀医は常に冷静だった。
 ”患者に貧賤はない。総理大臣であろうが物乞いであろうが、私はベストを尽くす。今回は明らかに手遅れだった。多分、発見をわざと遅らせたのだろう”
 ”身内の策略って事か?”
 ”一族の陰謀かもしれない”
 ”役に立たないと判ったから消されたのか?”
 ”歴史的に見れば、大衆の為になる総理など1人も存在しない。存在するのは一族の繁栄だけだ”
 ”だからって・・・でもどうやって説明する?”
 ”モニターには全てが映し出されている。それだけで十分だろう。救えるか救えないかの問題だけで、殺した訳じゃない”
 ”契約には明記されてあるから、心配御無用って事か?”
 ”ま、そういう事だ”

 男は手短に説明すると、その場を去っていく。
 

女占い師と映画館

 私は途方に暮れていた。総理大臣の死が想定外だったのではなく、契約の10億がチャラになった事が無念であった。
 世の中は全てカネで動く。ブラックジャックみたいな執刀医は、マンガの中での世界でのみ存在する。総理大臣が1人死んだからとて、時代は何事もなかったかの如く普通に流れる。
 私は目の前にいた執刀医のお陰で、今の地位を築いてきた。彼がいなかったら、世捨て人も同然だった。それを救ったのが彼だったが、流石に今回は彼の行為は理解に苦しむ。
 というのも、何時もより時間が掛かってたからだ。まるで、確実に死に誘導させるが如くゆっくりと時間を掛け、オペを実行していたからだ。
 奴の腕なら、オペと見せかけ、幾らでも人を殺せる。総理はその犠牲者の第一号となった訳だ。確かに、総理や政治家も含め、生きる価値のない人間はゴマンといる。総理もその一人だった。
 ”何かがあった筈だ・・・”

 私は、ある女占い師を頼った。地域でも1、2番を競う辣腕の賭け師だ。
 その女は中国人にしては洗練されてて、双子で占い師をやっていた。故に、当たり外れも多かったが、妹に当たれば、高い確率で全てを見通した。
 前回、私の執刀医を紹介したのも、その妹だった。つまり、私はその女のお陰で命からがら生き延びている。
 契約は前金と成功報酬から成り、前金とても件案により異なるが、殆どは数万ほどで、成功報酬となるとその額の10倍〜50倍ほどになる。
 故に、如何に巧く前金を抑えるかが試されるのだ。因みに、前回は前金で2万ほどを支払い、成功報酬として50万ほどを支払った記憶がある。今の自分を思うと、それでもずうっと安いくらいだ。

 事務所は、繁華街アーケードの入り組んだ所にある雑居ビルの地下1階にあった。
 警察の検閲を恐れてか、何時もは閉まってるので、予約が必要であった。暗証番号を入力し、2段階認証で姉妹のHPにアクセスする。一見すれば、怪し気なサイトと見間違う程で、多くの人が敬遠する。
 ”日時と場所はそちらの都合に任せる。できるだけ早く返事をもらいたい”と書いて、3分の時間制限に引っかからない様にログアウトした。
 すぐにメールが届いた。無器用な日本語から、すぐに妹だと確認できた。
 ”ラッキーだ。今回も大当たりだろう”

 この双子の姉妹は、最初は無学で人のいい姉を使って巧く騙し、その後に妹が登場し、見事なまでに大金をボッタくる。お陰で、見破られる事なく、多くの財を成す事に成功している。
 私の場合、私が貧乏だと雰囲気や言葉で明らかに判るせいか、2度とも妹が相手にしてくれたのだろう。
 確かに、その時は彼女が”美人局”だとは、露にも思わなかった。いや、万が一そうだとしても構わなかった。私は、この怪しい仕事から1日も早く抜けだしたかったのである。
 約束した場所は、ある映画館であった。女占い師はロングの黒いコートを羽織っている。
 最初遭った時は、薄暗い事務所内だったので、彼女を女として意識する事はなかったが、明るい所でよく見ると、実に妖艶で小悪魔的な女である。年齢は25、6であろうか、どう見ても占い師と言うより、コンパニオンと言った雰囲気だ。
 私達は、大して人気のない作品を選び、小さめのシアターに入った。
 

ハニースーツと美人局

 中はガラーンとしてて、観客は数人ほどしかいなかった。座席指定だが、殆ど貸切状態なので、敢えて仕切りのないツインシートに座る。
周りを十分に確認すると、女は気が落ち着いたせいか、軽く事務的な挨拶をする。
 ”再び呼んでくれて有難う。今日は仕事の話は抜きにして、この雰囲気を楽しみましょ”
 女はいきなり黒のロングコートを脱ぎ始めた。顕になった女の肢体は、何とバニーガールの衣装に包まれていた。
 濃い茶色の網タイツに、2つの乳房を盛り上げる様にして纏った、これまた黒いタイトなレザータッチのバニースーツに、只々私は見惚れていた。
 ”何を企んでいるのだろう?何か裏にあるのだろうか?これもオプションの1つなのか?”
 私は全身が欲情する気持ちを必死で抑えた
 ”実は、今日相談したいのは・・・”
 女は私の口を軽く人差し指で抑える。
 ”今言ったはずよ。仕事の話は抜きにしてって・・焦っては将来は見通せないわ”
 ”ああ、判ってるつもりだ。でも、心の準備ってものもある”
 ”この衣装、気に食わなかった?”
 ”いや・・全然似合ってるよ。でも頭が少し混乱して・・・”
 ”何も考えることないのよ。今日は全てを忘れて楽しみましょ?”

 私は返す言葉もなかった。
 全ては彼女のペースだった。
 いくらボッタクられるかは想像もつかない。確か初めて遭った時は、女は占い師を始めたばかりで、ここまでの余裕がなかったが、今はかなりの財を成してる筈だ。 
 そして今はバニーガール姿である。何時もこんな格好で得意客を誘惑するのだろうか?
 ハニートラップと美人局は表裏一体だが、誘惑と権力と脅しに弱い私はどう対抗したらいいのか、自分を見失いしないかけている。

 そうこう考えてる内に、彼女はツインシートに立てかけてある薄い毛布を纏っていた。
 ”ここ少し寒いわ。貴方寒くない?”
 ”いや、丁度いいくらいだけど・・”

 私は毛布で彼女の顕になった悩ましい肢体が隠れた事で、少し落ち着きを取り戻す。
 ”ああ今日は仕事の話はナシにしよう。でも1つ聞きたい事がある。イヤらしい意味じゃないんだ”
 ”この衣装のこと?まさかハニートラップとだと思ってるの?”
 ”普通はそう思うさ。日本には美人局って言葉がある。つまりその・・”
 ”私がワナを仕掛けてるとでも?”
 ”いやそういう訳じゃなく、何かを思ってるのなら正直に話してほしいんだ。別に悪い意味じゃなくて・・”
 ”普通は変に思うわよね。2度目の出会いで、バニーガールの衣装だから、ビックリしたでしょ?”
 ”最初はビックリしたけど、でも似合ってるから・・こういうのも悪くはないかなと”

 女は毛布を私にも被せた。
 周りから見れば、親密な恋人同士である。
 ”今日はお互いに駆け引きなしだ。思う存分楽しもう。人はいつかは死ぬんだから・・”
 ”誰か死んだの?特に親しい人とか?”
 ”いや、地球上では誰かが死んで、誰かが生まれてくる。どんな理由であろうと、それはごく自然な事なんだ”
 ”なんだか哲学っぽくなってきたね”

 私は彼女を抱き寄せた。レザータッチの衣装の上からでも、女の乳房の盛り上がりと質感ははっきりと確認できた。
 興奮は欲情に、そして幻想を打ち破りそうな勢いに変わる。
 私は女の両股の間に二の腕を強引に突っ込んだ。右腕で女の右足を抑え、左腕でもう1つの足をこじ開ける。
 女は肢体を翻すが、私は逃さなかった。捕食者の如く、背を向けた彼女の股間を背後から右手が荒々しく弄っていた。
 私は夢中になり、黒いバニースーツに包まれた彼女の肉体を貪るも、犯すのを躊躇っている。既に女のスーツの半分ほどはハダけ、両乳房は顕になったものの、下半身の方は包まれたままだ。
 半裸状態の彼女は再びこちらに向きなおり、お互いの激しさが交差する。
 欲情が頂点に達し、現実が幻想を駆逐する。女の全てを支配したと確信した瞬間、夢から覚めた。


最後に

 かなり濃密でリアルな夢だったが、不思議と女占い師の顔を覚えてはいない。が、レザースーツと網タイツの質感だけが不思議と強く印象に残っている。
 ここ最近は鬱っぽいせいか寝付きがとても悪い。故に夢を見るなんて、とても不思議に思えた。
 実は、先日書いた「#139」「#138」もずっと前に見た夢である。正直言うと、ここ数ヶ月は夢すら見ていない。
 でも今回の夢は、鬱解消のターニングポイントとなりそうな夢でもあった。



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