象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

♫TOKYOは夜の・・・〜真夜中の訪問者”その139”

2024年04月10日 04時37分37秒 | 真夜中の訪問者

 夢の中で、私はあるホテルの一室にいた。
 が、どうも隣の部屋がうるさすぎる。
 若い連中がどんちゃん騒ぎしてるのだろうか?思わず”今の若いもんは”とて口に出そうになる。
 時計を見ると、まだ夜の9時だ。寝るには早すぎるし、外へ出て飲み歩くほど若くもない。

 せっかく東京に来たんだからと、ホテル内をぶらついてみる。
 各フロアの部屋を散策してる途中で、私はふと”何の為にこのホテルに来たんだろう”と自分を疑い始めていた。その上、このホテルには異様な空気が漂ってもいた。
 確かに、仕事でもないし遊びでもない。”何でこのホテルに泊まってるんだろうか”と不思議に思いつつ、目の前の部屋を1つ1つ片っ端からノックしてみる。
 そんな中、ドアが少し開いてた部屋があったが、何の反応もない。勇気と覚悟を持って中に入ると、部屋を明々と照らして、サラリーマンらしき男が1人で寝ている。


TOKYOは夜の10時

 ”東京ってこんなもんか。意外にも無防備で大らかなんだ”
 首を捻りながら感心してると、その部屋の隣では若者らが集まり大騒ぎをしている。
 ”何処も同じなんだな”と、これまた心の中で相槌を打つ。

 このホテルは大きく3つの棟に分かれ、フロントロビーがある中央のビルが、その両側に2つのビルにより挟まった形となっている。
 3つのビルはわざわざ1階に降りなくとも、互いのビルを繋ぐスロープが数階ごとに用意されていた。
 ”さすがは東京だ。建物のコンセプトも実に洗練されている”
 ウツになりかけてた私だが、少しだけ元気が漲ってきた。
 ”そう、今俺は東京にいるんだ。そう、日本が誇る世界の国際都市東京だぞ”
 すっかりTOKYOの気分に浸った私はスロープを伝い、隣のビルへと移る。
 が、どうもこのビルはビジネス関連のビルらしく、どこもかしこも鍵が掛かっていた。更に、廊下は真っ暗で、誰もいないのは明らかだ。
 これまた(悪い癖で)、片っ端からドアを開けてみるが、殆どが閉まっていた。が、1つだけ空いてた部屋がある。中に入ると、20坪ほどの広さの空テナントである。
 ガラーンとした誰もいない部屋は殺伐としていたが、広い窓から眺める東京は、良くも悪しきもごく普通の大都市だった。

 再びウツになりそうだったので、中央のビルの1階ロビーに戻る。
 時計の針は既に10時近くを指していた。私はフロントに用意されたマニュアルを確認し、もう一方のビルへ移る。
 このビルは、1、2階が飲食店で占められ、それ以上の階は(マニュアルを見る限り)マンションを含めた雑居ビルのようである。
 流石に、飲食店が集中したフロアは賑やかであった。が、賑やかすぎても困るし、かと言って寂しすぎても困る。

 今度は、派手なネオンで彩られた店のサインを注意深く確認し、1人でも入れる様な店の扉を叩いた。恐る恐る中を見ると、バーと言うより、和式風のカウンターだけが用意された1人居酒屋に近い。
 ここに来て、ようやく自分の空間に落ち着いた気がした。
 ♪東京は夜の10時、早く私は呑みたい♪のだ。


元木大介登場

 目の前の大型スクリーンにはプロ野球中継が映し出されていた。勿論、巨人軍が主催のゲームである。
 私は子供の頃を思い出しながら、プロ野球に浸っていた。何を飲んで何を食ってたかは記憶にない。只々、この状態と空間をこのままにしておきたかった。

 すると、私の横に元巨人軍の元木大介氏がやってきたではないか。
 ”スミマセン、ここいいですか?”
 ”ああ、全然構いませんよ。もしかしたらジャイアンツの・・・”
 ”ああそうです。もうコーチを辞めて、今は全くのフリーです。どうです。東京は・・”
 ”良くもないし、悪くもないってとこですか。でもここが一番私には合ってると思います”
 ”それは良かった。私もこの店が一番のお気に入りです”

 私と元木さんは1時間ほど喋っただろうか・・・気がつくと、私はホテルの一室に戻っていた。
 周りは真っ暗だった。
 今から思うと、私が泊まった部屋は単に寝る為だけの部屋だったらしい。
 ま、それでもいいじゃないか。元木さんとも出会った事だし、それだけでいいとしようじゃないか。それに、幸い隣の部屋も静かになったみたいだし・・

 私は眠りにつく筈だった。いや、そのつもりだった。しかし、どうもこの暗さが不自然に思えてならない。
 TOKYOは眠らない大都市である。しかし、私の目の前にある東京は死んでる様にも思えた。
 私は目を閉じ、隣のビルの薄暗い部屋を思い出していた。
 ”このホテルは既に死んでいる。でなければ、あの薄暗さは何と説明できようか?・・・いやここは東京ではない。私が東京にいる筈がない・・”
 そうこうする内に、私は眠りに付いた。
 真夜中の2時頃にその夢から覚めた。
 いや、その筈だった。最初に起きた時は、自分の部屋が夢で見たホテルの一室に思えた。とても薄暗い部屋だったからだ。


夢から覚めて〜東京は夜の9時

 私は薄暗いのがイヤで、小さなLED電球を点けて寝るようにしている。
 確かに、最初に起きた時は薄暗いままだった。そう、夢からは完全には覚めていなかったのである。
 その後もう一眠りして、寝返りを打つと、小さなオレンジ色の光が目に差し込んできた。
 ようやく自分の世界に戻ったみたいで、少しホッとする。 

 夢の中では、3種類の東京を見た感じがした。1つは賑やかな大都市の東京と、もう1つは暗く沈んだ東京、そして3つ目は、昔ながらの”巨人・大鵬・卵焼き”の東京である。
 その中で一番印象に残ったのが、2番目の暗く沈んだ東京であった。確かに、そこから眺めた東京は”既に終わった大都市”に見えた。
 でもその時見た東京は、ごく普通の東京だった。所詮、国際都市とても、バブルで膨らみすぎた東京だが、死んだ目をしてるようにも思えた。

 昔、「東京は夜の7時」(1993)という歌があったのを思い出す。
 様々なフレーズを延々と組み合わせただけの安っぽい歌だったが、ディスコやクラブミュージックの流れに乗り、カルト的人気を誇ったとされる。確かに、歌詞には何ら意味はなく、曲は単調なままである。
 そう言えば、戦後の東京も江戸の優雅な文化を切り捨て、世界の雑多な文化を切り貼りして作った、騒がしいだけの安っぽい国際都市に成り下がった様にも思える。

 夢では”東京は夜の10時”だったが、大ヒットした歌同様に、既に死んだ東京だった。
 それでも、栄光?の巨人軍の元木大介氏に出会えた事は一番の収穫だった。
 いや、そう思う事にしよう。



2 コメント

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Unknown (HooRoo)
2024-04-18 13:15:18
今となっては
♪TOKYOは・・・♪と歌っても
誰も反応しないんじゃないかしら
日本は当時はいい時代だったのよ
バブルの余韻がまだ残ってって

今どき
夜の7時といっても
多くの一般男性は仕事中じゃないかしら
昭和の日本の
懐かしき良き時代を感じさせる歌でもあるのかな
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Hooさん (象が転んだ)
2024-04-18 23:28:44
あの頃は
何やっても許されてたんですよ。
どんな薄っぺらな歌でもヒットし
気前が良いから、海外でもチヤホヤされた。
言われる通り
当時の社会人は夜の7時には遊び回ってたんですよね。
今では考えられない事ですが
これも時代というものでしょうか。
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