ええと、大ちゃんの「ロミオとジュリエット」に関する与太話です。
去年のオペラ座もそうでしたが、こういう物語性のあるプログラムって解釈するのが面白い。
あくまで競技用のプログラムなので、「如何に点を取るか」がまず第一に考えられているのだとは思いますが、そこは私は専門外なのでおいといて(笑)。
こういうのって、その振付師が(そしてスケーターが)、物語をどういう風に解釈したのかが伺われるような気がして、そこが自分的に楽しかったりします。
特に大ちゃんは、「一つの作品として見て欲しい」という発言からも伺えるように、物語としての見せ方にも拘るタイプなんでしょうね。だから余計に面白い。
例によって、単なる駄話なのであんまり本気にしないで読んで下さい。
***
という訳で「ロミオとジュリエット」なんですが、実はまだ原作読んでません。
なので今回はちょっと反則して、あんちょこ本を使おうと思います。
私の長年の愛読書でもあるこれ↓
誰も書かなかった眠り姫の罠―32編の物語の知られざる真相…
古い本なんで、アマゾンには新品がない…。
おとぎ話や古典の名作などおなじみの物語を、心理学的な切り口で解説した一冊。従来のイメージを覆すような解釈も多く、視野が広がって面白いです。
以下、この本の「ロミオとジュリエット」のページより。斜体は引用文。()内は私の追記。
***
私も原作は読んでないのですが、「ロミオをジュリエット」と言えば一番に思い浮かぶのはあのバルコニーのシーンですよね。
そのせいか、ロミオには何となく、ロマンチックで優しい王子様的な男性のイメージがありました。
が。実際のロミオの行動はこんな感じらしい。
“そもそもことの原因は、このマキューシオ(ロミオの親友)が、ジュリエットの従兄弟と喧嘩して殺されてしまったこと。親友を殺されたロミオはかっとなって、この従兄弟を殺してしまったのが今度の、両家の争いの発端なのです。”
“おまけにロミオはパリス(ジュリエットの婚約者)まで殺してしまったくらいです。”
ここまでで既に死者3名。実は結構血なまぐさい話だったんですね。
という訳でロミオは、
“腕っぷしの強い、猪突猛進といったタイプの人物のようで、とかく想像されている純情な優男というイメージからは、ほど遠いのです。”
そんなロミオがジュリエットと恋に落ち、悲劇的な結末を迎えるまでの5日間のドタバタを描いたのがこの物語なんですが。
“若きシェイクスピアが、これに独創的な味付けをしていたことは、見落とされがちです。(中略)全体に亘り〈星の運命〉という一筋が貫かれているのです。”
ジュリエットの従兄弟を殺してしまった時のロミオの台詞が
“「ああ、俺も運命のフール(道化)になってしまった」です。”
しかし実際にはロミオは、ここで初めて運命の道化となったのではない。考え無しに突っ走る彼自身の性格がかかる事態を招いた訳で、彼はもともと星の運命のフールだった。シェイクスピアはこれを書いた頃から、性格と運命を結びつけていた(後のシェイクスピア作品では、より明確に「運命とは性格である」ことが打ち出されている)。…というのがこの本における「ロミオとジュリエット」の解説です。
***
これを読んだ後で大ちゃんのFSを見ると面白い。
まず冒頭。「オペラ座の怪人」では、過去を回想するオルゴールの音を効果的に使い、壮大な物語の幕開けを表現していました。
一方、「ロミオとジュリエット」では、まるで彼らの未来に横たわる暗い運命を暗示するような、最初の出足からして重苦しい音楽。初めから星の運命に捕われていたロミオ。そうとも知らずジュリエットと出会い、甘い時間を過ごしたのも束の間。感情のままに振り回す刃が、やがて彼自身を追い詰めて行く。運命に追い立てられるように破滅へと向かい、そして…。
何気にモロゾフさんのこのプログラムは、ロミオの本質をよく掴んでるなあ…と思うのは私のヒイキ目なんでしょうか。
でも正直、「ロミオとジュリエット」をやると聞いた時には、従来の「純情な優男」のロミオ像になるのかなあと思って、それはちょっと嫌かもと思っていたのでなにげに嬉しかったんですよね。
「シャキーン!」という効果音(?)と共に剣を抜き放ち、斬り合いに突入するサーキュラーステップはかなりお気に入りです。血の気多いぞロミオ。
***
大ちゃんの演技に私が惹かれる理由のひとつが、これを見て改めて分かったような気がします。
リアルなんですよね、感情が。
彼の演じるロミオは、夢の中の王子様ではなく、現実にいるそこら辺の、考えの足りない16歳の男の子に見える。
♪やばい恋 青い恋 もう後戻りはできない …という渡辺美里の歌の一節が似合うような、未熟で不器用な恋をする少年。
彼がもっと大人であれば、恋も加減やブレーキを覚えて、もっと上手く乗り切ることもできたろう。だけど立ち止まることも知らず、アクセル全開で駆け抜けて行くような恋は、大人になってしまうとできない訳で、大人はそこに一抹の寂しさを覚える、かも知れない。
愚かにも全開で恋して死んでしまったロミオとジュリエット、考えようによっては幸せなのかも…などと思ってみたり。いや、悲劇は悲劇に違いないんだけど、もうそういう恋ができない大人たちからみれば、ちょっとだけ羨ましい存在だったりして。
…なんてことを考えてしまいました。
付記。
上記のあんちょこ本は、これ↓の続編です。
誰も書かなかった白雪姫の復讐―34編の物語の意外な真相…
文庫も出てるみたいですが、やっぱり新品の在庫はないみたいです…。
誰も書かなかった白雪姫の復讐
文庫版の表紙が怖い。ハードカバーの方は、田口智子さんの美麗なイラストがステキなんですが。
去年のオペラ座もそうでしたが、こういう物語性のあるプログラムって解釈するのが面白い。
あくまで競技用のプログラムなので、「如何に点を取るか」がまず第一に考えられているのだとは思いますが、そこは私は専門外なのでおいといて(笑)。
こういうのって、その振付師が(そしてスケーターが)、物語をどういう風に解釈したのかが伺われるような気がして、そこが自分的に楽しかったりします。
特に大ちゃんは、「一つの作品として見て欲しい」という発言からも伺えるように、物語としての見せ方にも拘るタイプなんでしょうね。だから余計に面白い。
例によって、単なる駄話なのであんまり本気にしないで読んで下さい。
***
という訳で「ロミオとジュリエット」なんですが、実はまだ原作読んでません。
なので今回はちょっと反則して、あんちょこ本を使おうと思います。
私の長年の愛読書でもあるこれ↓
誰も書かなかった眠り姫の罠―32編の物語の知られざる真相…
古い本なんで、アマゾンには新品がない…。
おとぎ話や古典の名作などおなじみの物語を、心理学的な切り口で解説した一冊。従来のイメージを覆すような解釈も多く、視野が広がって面白いです。
以下、この本の「ロミオとジュリエット」のページより。斜体は引用文。()内は私の追記。
***
私も原作は読んでないのですが、「ロミオをジュリエット」と言えば一番に思い浮かぶのはあのバルコニーのシーンですよね。
そのせいか、ロミオには何となく、ロマンチックで優しい王子様的な男性のイメージがありました。
が。実際のロミオの行動はこんな感じらしい。
“そもそもことの原因は、このマキューシオ(ロミオの親友)が、ジュリエットの従兄弟と喧嘩して殺されてしまったこと。親友を殺されたロミオはかっとなって、この従兄弟を殺してしまったのが今度の、両家の争いの発端なのです。”
“おまけにロミオはパリス(ジュリエットの婚約者)まで殺してしまったくらいです。”
ここまでで既に死者3名。実は結構血なまぐさい話だったんですね。
という訳でロミオは、
“腕っぷしの強い、猪突猛進といったタイプの人物のようで、とかく想像されている純情な優男というイメージからは、ほど遠いのです。”
そんなロミオがジュリエットと恋に落ち、悲劇的な結末を迎えるまでの5日間のドタバタを描いたのがこの物語なんですが。
“若きシェイクスピアが、これに独創的な味付けをしていたことは、見落とされがちです。(中略)全体に亘り〈星の運命〉という一筋が貫かれているのです。”
ジュリエットの従兄弟を殺してしまった時のロミオの台詞が
“「ああ、俺も運命のフール(道化)になってしまった」です。”
しかし実際にはロミオは、ここで初めて運命の道化となったのではない。考え無しに突っ走る彼自身の性格がかかる事態を招いた訳で、彼はもともと星の運命のフールだった。シェイクスピアはこれを書いた頃から、性格と運命を結びつけていた(後のシェイクスピア作品では、より明確に「運命とは性格である」ことが打ち出されている)。…というのがこの本における「ロミオとジュリエット」の解説です。
***
これを読んだ後で大ちゃんのFSを見ると面白い。
まず冒頭。「オペラ座の怪人」では、過去を回想するオルゴールの音を効果的に使い、壮大な物語の幕開けを表現していました。
一方、「ロミオとジュリエット」では、まるで彼らの未来に横たわる暗い運命を暗示するような、最初の出足からして重苦しい音楽。初めから星の運命に捕われていたロミオ。そうとも知らずジュリエットと出会い、甘い時間を過ごしたのも束の間。感情のままに振り回す刃が、やがて彼自身を追い詰めて行く。運命に追い立てられるように破滅へと向かい、そして…。
何気にモロゾフさんのこのプログラムは、ロミオの本質をよく掴んでるなあ…と思うのは私のヒイキ目なんでしょうか。
でも正直、「ロミオとジュリエット」をやると聞いた時には、従来の「純情な優男」のロミオ像になるのかなあと思って、それはちょっと嫌かもと思っていたのでなにげに嬉しかったんですよね。
「シャキーン!」という効果音(?)と共に剣を抜き放ち、斬り合いに突入するサーキュラーステップはかなりお気に入りです。血の気多いぞロミオ。
***
大ちゃんの演技に私が惹かれる理由のひとつが、これを見て改めて分かったような気がします。
リアルなんですよね、感情が。
彼の演じるロミオは、夢の中の王子様ではなく、現実にいるそこら辺の、考えの足りない16歳の男の子に見える。
♪やばい恋 青い恋 もう後戻りはできない …という渡辺美里の歌の一節が似合うような、未熟で不器用な恋をする少年。
彼がもっと大人であれば、恋も加減やブレーキを覚えて、もっと上手く乗り切ることもできたろう。だけど立ち止まることも知らず、アクセル全開で駆け抜けて行くような恋は、大人になってしまうとできない訳で、大人はそこに一抹の寂しさを覚える、かも知れない。
愚かにも全開で恋して死んでしまったロミオとジュリエット、考えようによっては幸せなのかも…などと思ってみたり。いや、悲劇は悲劇に違いないんだけど、もうそういう恋ができない大人たちからみれば、ちょっとだけ羨ましい存在だったりして。
…なんてことを考えてしまいました。
付記。
上記のあんちょこ本は、これ↓の続編です。
誰も書かなかった白雪姫の復讐―34編の物語の意外な真相…
文庫も出てるみたいですが、やっぱり新品の在庫はないみたいです…。
誰も書かなかった白雪姫の復讐
文庫版の表紙が怖い。ハードカバーの方は、田口智子さんの美麗なイラストがステキなんですが。
(それと、一般的には「優男の王子様」なんだ?!ってことに、ハッと気付いたりもして。)
そもそも、ロミオって、物語の冒頭ではロザラインという女性に恋してて、恋煩いでヘロヘロなんですよね。それを見かねた友人達が、ロザラインが来ている舞踏会にロミオを引っぱって行くんですが、そこでジュリエットと出会って一目惚れするんです。
それが、あの大暴走の発端。おいおい…、ってかんじじゃないですか?大人からすると、ね(;^_^A
なので、「猪突猛進」とか「血の気の多い」(イタリア人ですし・笑)とか、はたまた「考えの足りない16歳の男の子」っていう虹川さんの直感は正解だと思います。
私も、舞台を見た時の感想は、「若さゆえの暴走」!
もし、ロミオもジュリエットも20代以上だったら、あんな1週間やそこらで燃え尽きる結末にはならなかったでしょうからね。
また、その舞台の演出家も「コンセプトはパッション」って仰ってましたから。
実は今回、虹川さんの文を読ませていただいて、私の見方も改まったんですよ。
というのも、高橋くんの『ロミオとジュリエット』の当初の感想は、「盛り上がりっぱなしで、私もしんどいわ」的なものだったんですが、わかりました!これはそういう物語なんだよ、それでいいの!…なーんて、悟りました(笑)
これからは、「血の気の多い16歳の男の子」だと思って、このプログラムを鑑賞したいと思います(^^)
長々とすみません。
実際に舞台をご覧になってる方のご意見ってとても参考になります(私も本来なら見てから語るべきなんですが/汗)。
シェイクスピアって有名な割に、きちんと話を筋で追う機会が少ないような気がするんですよね。「ハムレット」を先日初めて見たんですが、これも一般には「生きるべきか、死ぬべきか」の台詞だけが一人歩きしているような(汗)。
「ロミオ~」も「敵味方で愛し合う」という悲恋と、バルコニーのシーンが有名なので、イメージも甘い方向に引きずられてたんですが。
舞台だとやっぱり血の気が多いんですね。
ていうかロミオ、ロザラインさんの立場から見れば「なめとんのか」と思うようなキャラですね…。
私は個人的には、完璧超人ではなく欠点のあるキャラの方が好みなので全然OK、寧ろ歓迎ですが。
>>「盛り上がりっぱなし」
落ち着いて恋愛する余裕なんてどこにもなく、盛り上がったまんま突っ走って行っちゃいましたからね…。見ていてしんどいのはロミオのせいだということで(笑)。
私も「純情な優男ロミオ」は嫌だなあと思っていたので、高橋君のロミオは大歓迎です。
日米ではじめて見た時から、これはオペラ座より好きになるなと思いました。
アレッサンドラ・フェリのバレエ版「ロミジュリ」ファンの私にとって、ロミジュリは「ジュリエットの成長物語」だったので、ロミオの印象が限りなく薄かったんです。(相手役のロミオがジュリエットの存在感に負けていたようなところもあったので・・・)、でも、高橋君のロミオを見てロミオがどういう人間か、はじめてはっきりわかった気がしました。
NHK杯、行かれるのですね。
虹川さんのレポ楽しみにしています。
バレエ版の「ロミジュリ」をご覧になってるのですね。バレエ版も複数あるみたいで、それぞれ解釈が違ってたりするんでしょうか。
私にその辺の知識があれば、もっと比較して遊べるんですが。
ジュリエットが主役になってしまうと、ロミオのキャラは薄くなってしまうのかも知れないですね。
大ちゃんのロミオは困ったちゃんな所もありますが(笑)、キャラが立ってて見応えがありますよね。
NHK杯、大したものは書けないかも知れませんが、私なりに精一杯応援できたらと思います。