2005年7月24日(日)
#275 V.A.「BLUE INSTRUMENTALISTS:GUITAR」(EMI/BLUE NOTE 7243 5 398991 2 5)
ブルーノートのコンピレーション盤。レーベルが保有する膨大な音源の中から、テーマにそって曲をセレクトした、「ブルー~」を冠するシリーズのうちの一枚。
筆者もBNのコンピ・シリーズは好きで、よく週末のBGMとして流している。
ブルーノートだけにハイ・クォリティの演奏なれど、へんに重たくなく、さらりと聴ける曲が揃っているのがいい。
この一枚では、グラント・グリーン、ケニー・バレルといったブルーノートの看板ギタリストを中心に、タル・ファーロウ、ケヴィン・ユーバンクス、パット・マルティーノ、スタンリー・ジョーダン、ジョン・スコフィールドら新旧の名手が一堂に集合している。非常にお買い得である。
メインのグリーン、バレルはもちろん、王者の風格を感じさせる、正統派の演奏を聴かせてくれるのだが、他にもちょっと面白い、ちょっとおいしいトラックがいくつかある。
そのひとつが、黒人ギタリスト、ケヴィン・ユーバンクスの「マーシー・マーシー・マーシー」。
おなじみ、ジョー・ザヴィヌルのペンによる、ジュリアン・キャノンボール・アダレイのヒット曲。96年のライヴ録音。
このファンキーな一曲を、ピアノ・トリオをバックにホーン抜きで演奏しているにだが、意外にイケるんである、これが。
ルースなビートにのっかった、パーカッシヴで、ちょっとレイジーなギターがいい。
テクをひけらかすといった感じではまるでなく、とにかく自ら曲のグルーヴを楽しんでいるケヴィン。
スローで、おまけに音量も控えめ。こういうダルダルのテンションでも、聴衆をしっかりとひきつけられるんだなぁと、目からウロコ状態の筆者でありました。
白人ギタリスト、パット・マルティーノの「オール・ブルース」もいい。2001年のライヴ録音。
これまた有名なマイルス・デイヴィスの作品のカヴァーなのだが、原曲同様ゆったりしたビートに乗って展開される、モノローグめいたソロがまたカッコええ。
これぞクール・スタイルやね。
抑えめのパットのプレイを陰で支えているのが、オルガンのジョーイ・デフランチェスコ。パットとは対照的にホットでアグレッシヴな音がこれまたいい。
もう一曲、おすすめを挙げておこう。ジョン・スコフィールドの「ファット・リップ」。90年のスタジオ録音。
一応ジョン・スコ氏のオリジナルということになっているけど、一聴して明らかにわかるのは、ミーターズあたりのニューオーリンズ系ジャム・バンドの影響。そのリフといい、リズムといい、かなり近いものがある。
いってみれば、ジョン・スコ版「シシィ・ストラット」。テンポはこっちのほうがうんと速いけどね。4分たらずと尺は短いが、熱く、凝縮された演奏だ。
他にもバカテク・ギタリスト、スタンリー・ジョーダンの弾く「カズン・メアリー」やら、めずらしやマンボ・スタイルによるロニー・ジョーダンの「マンボ・イン」やら、いろいろあるが、あんまり好みの音じゃないんで、説明は割愛させていただく。
同様にメインストリーム派についても、オリジナル・アルバムで触れる機会もまたあるだろうから、省略。
とにかく一枚を通して聴いて感じることは、ギターほど弾き手によって、演奏スタイルが種々多様に分かれてくる楽器はそうないってこと。まさしく、百花繚乱状態。
まさにそれこそが、ギター・ミュージックの醍醐味といえそうだね。
<独断評価>★★★