2005年8月14日(日)
#278 ザ・ブラック・クロウズ「THREE SNAKES AND ONE CHARM」(FUN HOUSE/AMERICAN FHCA-1008)
アメリカのロックバンド、ザ・ブラック・クロウズ、96年のアルバム。ジャック・ジョセフ・ピュイグ、そして彼ら自身によるプロデュース。
ジョージア州アトランタにて84年に結成されて以来、大ヒット曲こそないものの、確実に成長を続けている彼らの、代表作といっていい一枚だ。
ブラック・クロウズといえば、その演奏力を買われて99年にはジミー・ペイジとともにワールド・ツアーを組んだという実績もある。つまり、ペイジをフィーチャーして、往年のZEPサウンドを再現してみせたのだ。
まあ、そのときのライブ・アルバムは、頑固なZEPファン連中にはおおむね不評だったのだが、ペイジが、あまたあるバンドの中から彼らを抜擢したときは、なかなかの”炯眼”だなと思ったものだ。
きょうび活動しているロックバンドの中では珍しく、彼らは実に「引き出し」が多い。さまざまな表現スタイルを、自分たちのものとしている。
他のバンドの大半が、自分たち自身の曲しか演奏出来ず、自分たちのカラーのサウンドしか作り出せないのに、彼らは実に器用に他のバンドのスタイルをも取り込んで、多様なサウンドを作り上げている。
それはこのアルバムを聴くとよくわかる。
ブラック・クロウズの基本は、ハードなロックン・ロール。
よくいわれることだが、ヴォーカルのクリス・ロビンソンは、今は亡きスティーヴ・マリオットによく似た、ハスキーでソウルフルな歌声の持ち主。
それゆえに、スモール・フェイシズやハンブル・パイの亜流バンド、トリビュート・バンドみたいに見られがちだが、もちろん、クロウズはそんなチンケなバンドではない。
マリオットはブラック・ミュージックをこよなく愛し、理解し、完全に自家薬籠中のものとした上で、自分自身のサウンドを作っていったが、クロウズもまた、白人先輩バンドのコピーではなく、オリジナルのブラック・ミュージックを表から裏まで追究した上で、彼らなりのロックを打ち立てた。
これが、他の凡百の白人ロックバンドとの決定的な「差」なのだと思う。
白人ロックをお手本に新しいロックを作り出そうとしても、しょせんは「縮小再生産」に過ぎない。
ロックのみなもとであるブルースをとことん追究してこそ、初めてロックの本質をつかむことが出来る。
クロウズの音楽にプンプン漂うブルースの匂い、これはやはり「ホンモノ」の証拠だ。
さてさて、能書きばかりだらだらと書いてしまったが、この一枚、とにかく聴いていただくのが一番。
曲によってその持ち味は、ストーンズだったり、フェイシズだったり、エアロスミスだったり、ハンブル・パイだったり、はたまたCSN&Yだったり、ザ・バンドだったりするわけだが、いずれも決して物まねではなく、彼ら流のオリジナル・サウンドに昇華されているのはさすがである。
「売れ筋」とはあまりにかけ離れたタイプの音楽なのだが、筆者のような「骨太の音楽」にこだわるリスナーにとっては、まさにストライクゾーン。
いま売れているロックバンドにはどうも食指がのびないという、昔からのロックが好きな方々には、絶対のおすすめ。
ソロ・ヴォーカル、コーラス、演奏ともに、実にハイ・レベル。もはや途絶えてしまったかに思われた「アメリカン・ロック」の伝統を、かたくなに守る貴重なバンド、それがザ・ブラック・クロウズであります。
<独断評価>★★★★