NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#276 ブライアン・セッツアー・オーケストラ「VAVOOM!」(INTERSCOPE 0694907332)

2022-08-17 05:00:00 | Weblog

2005年7月31日(日)



#276 ブライアン・セッツアー・オーケストラ「VAVOOM!」(INTERSCOPE 0694907332)

ブライアン・セッツアー・オーケストラ、2000年のアルバム。われらがバンド、ナイクロのベーシスト、S氏も大推奨の一枚である。

ブライアン・セッツアーといえば、スリーピース・ロカビリー・バンド、ストレイ・キャッツを率いて80年代に登場、そのシンプルでノスタルジックなサウンドで一世を風靡したものである。

日本にもファンが多く、そのフォロワー的なロカビリー・バンドが雨後のタケノコのごとく生まれた。たとえば、ブラック・キャッツとか。

既存のバンドでも、ハウンド・ドッグの「浮気な、パレット・キャット」(82年)のように、露骨にそのサウンドをパクる手合いが多かったのを覚えている。

そんな大ブームのストレイ・キャッツではあったが、誰もが彼らのことを「一発屋」で終わるだろうと思っていたのも事実である。

彼らの人気は実際のところ、リーダーのブライアンの、その甘い、というか甘ったる~いルックスによるところの、アイドル的な魅力に支えられていたのも確かであった。

事実、ブームはそのうち終焉を迎え、彼らの名前もそのまま忘れ去られた‥‥かに思えた。

ところがどっこい、ギター&ヴォーカルのブライアン・セッツアーだけはしぶとく生き残った。ビッグ・バンドのリーダーとして。

やはり、ただのアイドル・ロッカーではなく、ギタリストとして、シンガーとして、そして作編曲者として確かな実力を持っていたのである。

このアルバムは、そんな彼の新バンドの代表作的一枚だ。

まずはいかにもスウィング・ジャズなイントロから「PENNSYLVANIA 6-5000」がスタート。

これはもちろん、グレン・ミラーの代表的ナンバーのカヴァー。

ノリノリのリズムに見事マッチした、ブライアンの軽快なギター・プレイとラフなシャウト。そう、ビッグバンド・ジャズとロカビリーの完璧な融合なのである。

「JUMPIN' EAST OF JAVA」はブライアンのオリジナル。これまた軽快なテンポのジャンプ・ナンバー。彼の煌めくようなソロ・ギターが炸裂する。

「AMERICANO」はイタリアのアーティスト、レナート・カロゾーネによる、ラテン風味満点のナンバー。コテコテのアレンジが実に楽しい。

「IF YOU CAN'T ROCK ME」はふたたび、ブライアンのオリジナル。ロカビリー・ジャズとでもいうべき、ブライアンならではのサウンド。思わず体が動いてしまうこと、うけあいです。

「GETTIN' IN THE MOOD」は、スウィング・ジャズの象徴ともいえる名曲、「イン・ザ・ムード」のカヴァー。アーティ・ショー楽団やグレン・ミラー楽団の看板曲ともいえる。

この曲に関しての小ネタを書くと、モーニング娘。のヒット・シングル「Mr. Moonlight~愛のビッグバンド~」(01年)のサビやコーラスやアレンジ、間奏部等がこの「GETTIN' IN THE MOOD」に酷似していることが、よく知られている。

聴き比べてみると、まんまパクりという感じはしないが、たしかに似ている。作曲のつんく♂や編曲の鈴木俊介が、曲作りにあたってこの一曲をかなり意識していたのは間違いないだろう。

なにせ「愛のビッグバンド」だもんね。コンセプトからして、見事にカブっている。

このセッツアー版「イン・ザ・ムード」はひたすら明るく軽快な、お祭り騒ぎの一曲であります。

「DRIVE LIKE LIGHTNING(CRASH LIKE THUNDER)」は、ブライアンの作品。「テケテケ」なエレキ・サウンドがなんとも懐かしい感じ。

「MACK THE KNIFE」はクルト・ワイルによる、おなじみのミュージカル・ナンバー。

ここではブライアンの、ちょっとシブめのヴォーカルが聴ける。

一般にギタリストとして話題にされることはあっても、シンガーとしてどうこう言われることはまずない彼だが、どうしてどうして、シャウト・スタイルからクルーナー・スタイルまで、なかなか引き出しの多い歌い手でもある。

続くはインスト・ナンバーの「CARAVAN」。もう、説明不要の一曲だ。

この曲もノーキー・エドワーズをはじめとしていろんなインスト・ヴァージョンがあるが、ブライアン版も、もちろん手堅い出来である。

「THE FOOTLOOSE DOLL」はブライアンのオリジナル。スウィングのリズムに乗せて、ブライアンのトリッキーなギター・ソロが全開モード。

「FROM HERE TO ETERNITY」も、彼のオリジナル。マイナーな曲調がちょっと異彩を放っている、スウィング・ナンバー。バックのホーン・アレンジも、本格派ジャズという感じで、重厚だ。

「THAT'S THE KIND OF SUGAR PAPA LIKES」は、その意味深長なタイトルや歌詞から見るに、援助交際の歌? 

まあそれはともかく、ブライアンのユーモアたっぷりの歌唱がなかなかいい。

「'49 MERCURY BLUES」はブライアン作、ストレイ・キャッツ時代のサウンドを彷彿とさせるロカビリー・ナンバー。もちろん、ビッグバンド・ジャズの隠し味も入ってます。

「JUKEBOX」もオリジナル。ブライアンのシャウト、そしてギターも絶好調のジャンプ・ナンバー。実に楽しげに歌い、かつプレイしているね。

ラストはドゥ・ワップの名曲、「グロリア」をジャズィなアレンジで。

ここでブライアンは、渾身の熱唱を聴かせてくれる。シンガーとしてのブライアンの面目躍如な一曲である。

あえてコーラスを交えず、ソロ一本で歌い切るブライアン。実にイカしている。

マンハッタン・トランスファーのアラン・ポールに勝るとも劣らぬ堂々たる歌いぶり。皆さんにも、ぜひ一度チェックしていだきたいナンバーである。

とにかく、全編、エネルギー、パワー、気合いに満ちあふれた一枚。聴いて元気が出ること間違いなし。音楽とは、こういうものでなくちゃ。

では最後にもう一度、モーニング娘。がらみのネタで締めくくることにしたい。

「モーニング娘。の新メンバー、久住小春(13歳)は、ブライアン・セッツアーにソックリである」。お粗末!!

<独断評価>★★★★