NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#277 ザ・スタイル・カウンシル「OUR FAVOURITE SHOP」(Polydor 825 700-4)

2022-08-18 05:00:00 | Weblog

2005年8月7日(日)



#277 ザ・スタイル・カウンシル「OUR FAVOURITE SHOP」(Polydor 825 700-4)

ザ・スタイル・カウンシルのセカンド・フル・アルバム。85年リリース。彼ら自身によるプロデュース。

スタカンといえば、のちに「シブヤ系」などとよばれる一連のアーティストにも強い影響を与えたユニット。ザ・ジャム出身のポール・ウェラー(vo,g)、マートン・パーカス、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ出身のミック・タルボット(vo,kb)の二人が生み出すハイ・クオリティなサウンドは、高感度なリスナーを中心に、根強い支持を得ていた。

そんな彼らの代表作。なんといっても、曲が粒ぞろいなのだ。言ってみれば、捨て曲なし、パーフェクトなラインナップ。

オープニングの「HOMEBREAKERS 」は二人の共作。ミドル・スロー・テンポのファンク・ナンバー。ポールのギター・ソロをフィーチャー。ミックのオルガンやバックのホーンがこれを盛り立てる。

続く「ALL GONE AWAY」はポールの作品。アコギをフィーチャーし、フルートで味付けをしたボッサ・ノヴァ・スタイルのナンバー。センスのいいこと、カッコいいことなら何でもやってしまおうという、スタカンのポリシーを感じさせる一曲。

「COME TO MILTON KEYNES」はこれまたポール作の、陽気なポップ・チューン。アレンジにどこかラテン風というか、アメリアッチな雰囲気が漂う。

「INTERNATIONALISTS」はハードにドライヴするロックな一曲。二人の共作。ソフトな歌いぶりから一転、シャウトしまくる二人。ポールの激しいギター・ソロも聴ける。

「A STONE THROWN AWAY」はストリングスをフィーチャ-したバラード。ポールの作品。どこかビートルズをほうふつとさせる。一曲一曲、サウンドを切り替えてくるのは、さすが引き出しの多い彼らならでは。

ラップ風の語りも交えたファンク・ナンバー「THE STAND UP COMICS INSTRUCTIONS」もカッコいい。二人のハモりしかり、オルガン・プレイしかり。

「BOY WHO CRIED WOLF」はマイナーのメロディが実に美しいナンバー。バックのファンキーなリズムと、意外とマッチしている。スタカンのポップなセンスが横溢した一曲。やっぱ、ポップの基本は、いかにいいメロディを作れるかどうかでっせ。

B面トップの「A MAN OF GREAT PROMISE」は二人の共作。教会の鐘のSEで始まる、アップ・テンポの力強いナンバー。ささやくようなポールのファルセット・ヴォーカルに、ミックのハモりが見事に重なる。これがなんとも素晴らしい。彼らこそは、レノン=マッカートニー以来のパーフェクトなヴォーカル・コンビネーションではなかろうか。

「DOWN IN THE SEINE」はポールの作品。ジャズ・ワルツ風のビートが面白い一曲。ミックのピアノにのせて、ソフト、でも熱ーい歌を聴かせるポール。バックのアコーディオンがコンチネンタルな隠し味(タイトルのTHE SEINEとはセーヌ川のことである)としてなかなか効いている。

「THE LODGERS」もポールの作品。こちらはかなりアメリカな音。女声ヴォーカルをフィーチャーした、ファンクな一曲。ベース・ラインが実に気持ちいい。

ポールの作品が続く。「LUCK」はややアップテンポのナンバー。骨太なR&Bとバカラック風の都会的ポップ・センスがほどよくブレンドされたサウンド・カクテル。

フルートのソロが印象的なボッサ・ノヴァ調ナンバーは「WITH EVERYTHING TO LOSE」。ポール、そしてスティーヴ・ホワイトの作品。サックスも交えたジャズィなアレンジが、実に秀逸だ。

お次はミック作のインスト曲「OUR FAVOURITE SHOP 」。当アルバムのタイトル・ナンバーでもある。これがまた、実にカッコいい。シンプルで力強いリフにのせて繰り広げられるファンキー&ジャズィな演奏は、スタックス系のソウル、ことにブッカー・T&MG'Sのサウンドに共通するものがある。ゲフィン・レコードから出されたアメリカ盤では残念ながらこの一曲はカットされ、アルバム名も「INTERNATIONALISTS」に変更されている。

ラストは「WALLS COME TUMBLING DOWN」はポールの作品。モータウン系のR&B、ソウルを、見事に彼ら流に消化した一曲。ここでのポールのシャウトは実にいい。ヴォーカリストとしての面目躍如な出来ばえだ。

とにかく、二人の持てる才能のすべてを投入して作り上げられた一枚。60年代以降のR&B、ソウル、ロック、ファンクの総決算的なそのサウンドは、圧巻の一言だ。

繊細にして、骨太。パワーに満ちあふれ、しかも奥が深い。まさに音の玉手箱。

あまりに「本物志向」が強くて、マイケルやマドンナみたいにミーハーな一般層の支持こそ得られなかったが、スタカンこそ80年代最強のアーティストのうちのひとつであると筆者は信じて疑わない。

まる20年経ったいま聴いても、実に新鮮なその響き。皆さんも、ぜひ、もう一度聴いてみてほしい。

<独断評価>★★★★★



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