2005年10月17日(月)
#289 ドクター・ジョン「AFTERGLOW」(BLUE THUMB BTD-7000)
ドクター・ジョンといえば、アルバム「GUMBO」に代表されるようなニューオーリンズ・サウンドのひとであるが、彼はまたジャズのひとでもある。これは彼のもうひとつの顔を知ることのできる、ピュア・ジャズな一枚。95年リリース。
コンテンポラリ-なジャズの宝庫、GRPレーベルの社長でもある、トミー・ラピューマがプロデュースしている。
当然、バックをかためるミュ-ジシャンたちも豪華だ。ベースにレイ・ブラウン、ジョン・クレイトン、ドラムスにジェフ・ハミルトン、ギターにフィル・アップチャーチと、巧者ぞろい。寸分の隙もないサウンドを繰り広げてくれる。
でも、筆者的に気に入っているのは、その選曲だな。とにかく、ゴキゲンのひとこと。
おなじみの「ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」をはじめとして、「アイム・ジャスト・ア・ラッキー・ソー・アンド・ソー」「ブルー・スカイ」「ソー・ロング」などなど、粋なナンバーが目白押し。
ホーンやストリングスも配した、リッチなサウンドに、ドクター・ジョンのあの塩辛声が乗っかると、まさに大人のムード。
いったん彼の歌を聴いてしまうと、若手ジャズ・シンガー、たとえばハリー・コニック・ジュニアの声なんか甘ったるく思えてしまう。人生の酸いも甘いもかみわけた男だけが表現できる、辛口(ドライ)な世界が、そこにある。
もちろん、歌だけでなく、ピアノの演奏もパーフェクト。鍵盤の上を自在に転がる、ドクター・ジョンの指は、文字通りマジック・フィンガーズ。
極上のウィスキー、あるいはキリキリに冷えたマティーニと一緒に、ぜひどうぞ。
<独断評価>★★★☆