ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

八方尾根自然研究路で出会った高山植物の話です

2010年07月22日 | 旅行
 八方尾根自然研究路を散策した話の続きです。
 白馬岳(しろうまだけ)を中核とする一連の北アルプスの連峰は、“花の名山 白馬”としてアピールしています。特に7月下旬はその最盛期として、白馬村はスキーシーズンに加えて、春から夏、秋にかけての観光にも力を入れ、集客に成功しています。

 標高1974メートルの石神井ケルン(八方山ケルン)の下側には、ある程度の規模の雪渓が広がっています。7月下旬に残雪に会える点でも驚きです。この雪渓は猛烈な勢いで溶けて小川をつくり、周辺に清水を供給しています。この結果、ワタスゲなどを中心とした高山植物のお花畑がトレッキングの路の周辺に広がっています。

 トレッキング客にとってはちょうど目指す八方池までの中間地点になるため、お花畑を見ながら一休みする絶好の場所になっています。半分まで歩いてきたと、ほっとするいい場所です。木道の路の両側にベンチが設けられ、休みをとる雰囲気を醸しだしています。ここでは、休憩をとりながら、高山植物の“図鑑”などと照らし合わせて、花の名前を熱心に調べる方や、正確な名前は知らなくても、きれいな高山植物を見て満足する方など、反応はさまざまです。

 ちょうどワタスゲの開花時期だったので一番目に付きました。緑色の絨毯の上に、綿のような白い花が風になびいて心安らぐ雰囲気です。


 辺り一面は高山植物のお花畑で緑色に染まっています。岩がごろごろしている乾いた感じの部分が多い中で、高山植物が広がっているお花畑はまさにオアシスです。見事な緑色の眺めです。ユキワリソウ、チングルマ、ハクサンチドリ、ハクサンフウロ、タカネマツムシソウ、ミヤマダイモンジソウ、コイワカガミ、ショウジョウバカマなどが所々に咲いていました。

 どの花も、一般の高原など(私の場合は、霧ヶ峰高原の八島湿原などが比較対象です)で見かける花より一回りか二回り分小さく、地面にしがみついている感じでした。高原などの高山植物の亜種で、「タカネ」「ミヤマ」「コ」などの名前が付いています。

 例えば、標高1100メートルの荒船高原ではショウジョウバカマ(猩々袴)は5月上旬ごろに、浅間山に近い湯の丸高原の上側にある標高2000メートルの池の平湿原ではハクサンチドリ(白山千鳥)は6月下旬ごろにそれぞれ咲きます。今年はハクサンチドリの花に会いに行く機会をつくれなかったと思っていたため、今回出会えて予想外の驚きと幸せを感じました。

 八方尾根では雪渓の下で雪解けまで待って、湿地が出現し、高山植物は急速に成長して花を咲かせ、実をつけて次の初夏までじっと待っているのが、八方尾根の高山植物の一生のようです。

 今回、初めて出会ったのは、ミヤマダイモンジソウ(深山大文字草)です。2カ所で花を見ました。そう多くはなく、意識して探さないと見逃してしまいます。


 普通の園芸植物のダイモンジソウに比べて、葉が小さく少ないです。花も数輪つけているだけでした。可憐です。

 花が少し小さく、全体に地を這うような感じのチングルマは、やはり高山植物の代表格でした。高山植物のイメージを具現化した感じだからです。もうすぐに実を付けます。この実をつけた風情もなかなかかわいいのです。


 ユキワリソウ(雪割草)も小さなサクラソウの感じがしました。か弱い感じのサクラソウです。荒船高原に5月に咲くサクラソウは可憐ですが、力強く群生しています。

 このお花畑以外では、出発点から石神井ケルンまではミヤマアズマギクやクガイソウが、到達点の八方池付近ではタカネバラとチシマギキョウがそれぞれ印象に残りました。タカネバラはハマナスに似た花で、低木に咲く花なので目立ちます。鮮やかな赤色の花です。

 八方尾根自然研究路では、このように、多彩な高山植物がいくつも観察できるので、みんな苦労して上っていきます。可憐な高山植物の“ショールーム”になっています。スキー場のリフトやゴンドラなどのおかげで、歩き始める個所として、標高1800メートルまで一気に上れるからできる芸当です。上り始める個所は、1998年に開催された長野冬季オリンピックでは、大回転競技の滑り始める場所だったそうです。文明に支援されながら、ご年配の方々や子供たちは高山植物を楽しんでいます。おそらく、数10年前は秘境だった場所です。