「バイオミメティックス」(Bio mimetics)は「生体模倣技術」などと翻訳されています。生体の持つ優れた機能などをまねして役立つ人工物をつくる技術です。
この生体模倣技術は、生物の体は我々が想像する以上に優れた高機能を持っているので、それを模倣して人類の生活に役立てましょうという点で注目されているものです。例えば、オリンピックの水泳競技の時に、サメ(鮫)肌をまねた表面組織の水着が話題になりました。水泳時の水の流体抵抗が小さくなり、いい記録が出やすくなったとのことでした。
7月28日午後に東京都千代田区神田練塀町の“秋葉原”界隈で開催された「東北大学‐産総研 連携公開講演会」を聞きに行きました。この中で、東北大学原子分子材料科学高等研究機構の下村 政嗣教授か講演された「次世代バイオミメティクスがもたらす技術革新」を拝聴しました。
以下、その単純な受け売りです。
ハス(蓮)の葉は、ご存じのように、水滴が表面をコロコロと転がる表面構造を持っています。この超撥水(はっすい)性を持つ表面構造をまねて、セルフクリーニング用のコーティング塗料が開発されたようです。昆虫のガ(蛾)の眼は光を反射しません。入射光は規則正しく並んだ円柱状の構造の中で吸収されるのです。もし、反射して眼がきらりと光ると、野鳥に対して「ガがここにいます」と知らせることになり、食べられてしまうからです。この光を反射しない“モスアイ”構造を利用した無反射フィルムが開発されています。無反射フィルムは液晶テレビの表面の反射光を抑えるものです(現在の反射防止フィルムがモスアイ構造を利用したものかどうかは未確認です)。ある種のステルス表面になるのです。
このほかにも、ヤモリはガラスなどのつるつるした引っかかりがない表面にも留まることができます。つるつるした壁や天井にへばりつくことができます。ヤモリの足の先はナノスケールの細長い繊維の束になっていて、この1本がガラス表面に接して“ファンデルワールス力”という原子と原子が引き合う力を発生させます。多数の繊維がファンデルワールス力を発生させるので、ヤモリの体重を支えるぐらいの力になり、スベスベしたガラスなどに貼り付くことが可能になるそうです。現在は、こんなに細い繊維の束を巧みにつくるナノテクノロジーは開発されてなく、実用化はまだです。
ハチドリやある種のガは羽根を動かし続けて、空中に一カ所に浮かび続けるホバリングができます。人類は羽尾を動かすやり方ではホバリングは実用化していません。ペリコプターの仕組みでしかホバリングできません。羽根をばたばたして飛び上がることもできません。こうしてみると、自然界に生きる動物が獲得した機能などのごく一部しか、人類は実現できていません。やっと真似できる技術をいくつか手にいれた段階です。
実は、今年6月8日に下村政嗣教授は「次世代バイオミメティックス材料の研究動向と異分野連携」シンポジウムを東京都台東区上野公園の国立科学博物館日本館で開催しました。
日本では、学術シンポジウムを国立科学博物館の講堂で開催することはかなり珍しいことです。下村教授は生物学の拠点である同講堂で開催したいと考え、苦心の末に実現したようです。国立博物館に展示物を見るのではなく、講演を聴きに行ったのは初めての体験です。
この講演会では、東北大大学院環境科学研究科の石田秀輝教授が「アフリカなどのサバンナ地帯に住むシロアリのアリ塚の中は、温度が摂氏30度に保たれている。自然の原理のクーラー・温度調節器があることになる。これを実用化したい。また、カタツムリの殻は汚れない。自然に汚れが落ちる表面構造を持っている。これを利用したい」と分かりやすく、生体模倣技術を解説されました。現在、トンボの羽根の動きをまねた風力発電用の羽根を開発しているそうです。石田教授はこうしたバイオミメティクスを追究し「ネイチャーテクノロジー研究会」を主宰されています。
6月8日のシンポジウムでは、下村教授は日本のバイオミメティックス研究開発拠点をつくることを訴えました。最近の欧米などのバイオミメティックスの研究開発成果をみると、「日本は二周遅れ、あるいは三周遅れで研究開発が進んでいる」と、下村教授は警告します。
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が日本で開催される今年にバイオミメティックス研究開発拠点を築く動きを活発化させたいようです。
バイオミメティックスの研究開発は、人類がやっと各生物が持っているさまざまな高機能性を模倣可能なナノテクノロジーなどをいくつか持ち始め、これを実用化してイノベーション創出を起こせる入り口に立ったことを伝えています。
この生体模倣技術は、生物の体は我々が想像する以上に優れた高機能を持っているので、それを模倣して人類の生活に役立てましょうという点で注目されているものです。例えば、オリンピックの水泳競技の時に、サメ(鮫)肌をまねた表面組織の水着が話題になりました。水泳時の水の流体抵抗が小さくなり、いい記録が出やすくなったとのことでした。
7月28日午後に東京都千代田区神田練塀町の“秋葉原”界隈で開催された「東北大学‐産総研 連携公開講演会」を聞きに行きました。この中で、東北大学原子分子材料科学高等研究機構の下村 政嗣教授か講演された「次世代バイオミメティクスがもたらす技術革新」を拝聴しました。
以下、その単純な受け売りです。
ハス(蓮)の葉は、ご存じのように、水滴が表面をコロコロと転がる表面構造を持っています。この超撥水(はっすい)性を持つ表面構造をまねて、セルフクリーニング用のコーティング塗料が開発されたようです。昆虫のガ(蛾)の眼は光を反射しません。入射光は規則正しく並んだ円柱状の構造の中で吸収されるのです。もし、反射して眼がきらりと光ると、野鳥に対して「ガがここにいます」と知らせることになり、食べられてしまうからです。この光を反射しない“モスアイ”構造を利用した無反射フィルムが開発されています。無反射フィルムは液晶テレビの表面の反射光を抑えるものです(現在の反射防止フィルムがモスアイ構造を利用したものかどうかは未確認です)。ある種のステルス表面になるのです。
このほかにも、ヤモリはガラスなどのつるつるした引っかかりがない表面にも留まることができます。つるつるした壁や天井にへばりつくことができます。ヤモリの足の先はナノスケールの細長い繊維の束になっていて、この1本がガラス表面に接して“ファンデルワールス力”という原子と原子が引き合う力を発生させます。多数の繊維がファンデルワールス力を発生させるので、ヤモリの体重を支えるぐらいの力になり、スベスベしたガラスなどに貼り付くことが可能になるそうです。現在は、こんなに細い繊維の束を巧みにつくるナノテクノロジーは開発されてなく、実用化はまだです。
ハチドリやある種のガは羽根を動かし続けて、空中に一カ所に浮かび続けるホバリングができます。人類は羽尾を動かすやり方ではホバリングは実用化していません。ペリコプターの仕組みでしかホバリングできません。羽根をばたばたして飛び上がることもできません。こうしてみると、自然界に生きる動物が獲得した機能などのごく一部しか、人類は実現できていません。やっと真似できる技術をいくつか手にいれた段階です。
実は、今年6月8日に下村政嗣教授は「次世代バイオミメティックス材料の研究動向と異分野連携」シンポジウムを東京都台東区上野公園の国立科学博物館日本館で開催しました。
日本では、学術シンポジウムを国立科学博物館の講堂で開催することはかなり珍しいことです。下村教授は生物学の拠点である同講堂で開催したいと考え、苦心の末に実現したようです。国立博物館に展示物を見るのではなく、講演を聴きに行ったのは初めての体験です。
この講演会では、東北大大学院環境科学研究科の石田秀輝教授が「アフリカなどのサバンナ地帯に住むシロアリのアリ塚の中は、温度が摂氏30度に保たれている。自然の原理のクーラー・温度調節器があることになる。これを実用化したい。また、カタツムリの殻は汚れない。自然に汚れが落ちる表面構造を持っている。これを利用したい」と分かりやすく、生体模倣技術を解説されました。現在、トンボの羽根の動きをまねた風力発電用の羽根を開発しているそうです。石田教授はこうしたバイオミメティクスを追究し「ネイチャーテクノロジー研究会」を主宰されています。
6月8日のシンポジウムでは、下村教授は日本のバイオミメティックス研究開発拠点をつくることを訴えました。最近の欧米などのバイオミメティックスの研究開発成果をみると、「日本は二周遅れ、あるいは三周遅れで研究開発が進んでいる」と、下村教授は警告します。
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が日本で開催される今年にバイオミメティックス研究開発拠点を築く動きを活発化させたいようです。
バイオミメティックスの研究開発は、人類がやっと各生物が持っているさまざまな高機能性を模倣可能なナノテクノロジーなどをいくつか持ち始め、これを実用化してイノベーション創出を起こせる入り口に立ったことを伝えています。