ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

アップル社のタブレット型「iPad 3」の発売間近で高まる、あるうわさを考えました

2012年03月05日 | 汗をかく実務者
 米国のアップル社のタブレット型携帯機器「iPad 3」の発売についての発表が3月7日とのうわさが流れています。

 その「iPad 3」に、IGZO(通称はイグゾウ)という新しい酸化物製の半導体TFT(薄型トランジスタ)が採用されるかどうかといううわさに、電機関係の技術者は関心を高めています。特に、日本の電機関係の技術者は強い関心を持っているようです。

 実は、このIGZO酸化物製の半導体TFTは、2011年当初は「iPad 2」に採用されるとのうわさでしたが、実際には採用が延期になったとのうわさが流れました(iPad 2は2011年3月2日に米国で発売が公表され、3月11日に米国で発売されました)。

 アップル社は新製品の投入時期や製品仕様を事前には公表しません。発表後には、世界的なヒット商品になる「iPad」や「iPhone」に、ある部品が採用されると、その採用量は膨大です。その結果、その部品はちょっとした事業規模になり、設備投資費を回収できることになります。特に、新技術を採用した部品にとっては、実用化のきっかけになるため、大きな分岐点になります。

 IGZOはインジウム・ガリウム・亜鉛のそれぞれの酸化物で構成されるために、その組成元素(In・Ga・Zn・O)の頭文字をとった略称です。この略称の愛称が“イグゾウ”です。IGZO酸化物半導体TFTは電子などのキャリア移動度が速く,特性のバラつきも小さいために、使いやすい点が評価されています。

 日本の電機技術者が強い関心を持っているのは、その発明者が東京工業大学フロンティア研究機構教授の細野秀雄さんだからです。



 細野教授の研究成果であるIGZO酸化物半導体TFTは今後、大型の液晶テレビ(LCD)や有機EL(Electro-Luminescence)テレビなどにも採用される可能性が高いと、考えられています。

 日本発の新技術であるIGZO酸化物半導体TFTの特許は、日本の特許庁では成立しながら、韓国の特許庁では一度は拒絶されました。韓国の特許庁が細野教授が出願した基本特許を「容易に推定できる」という理由で、特許としての独自性を否定したのです。

 細野教授は学会などで国際的に独創的な研究成果と認められている有名な内容であっても、特許の世界では認められるとは限らないという事実に驚いたそうです。このため、細野教授は当該特許申請の代理人が頼んだ弁理士の“補助説明者”として、韓国の特許庁の拒絶決定不服の場に出廷し、特許しての新規性を訴え、特許として成立させたそうです。その苦心談を先日、お伺いしました。

 独創的な研究成果を特許して成立させるには、かなりの苦労があるとのお話でした。ご多忙な研究生活の中で、お時間をいただきました。