ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

アントレプレナーシップセミナー「伝統産業に新価値創造」を拝聴した話の続きです

2015年02月28日 | 汗をかく実務者
 アントレプレナーシップ(起業家)セミナーとの冠をつけた「伝統産業に新価値創造!新たな『市場』を生み出す取り組み」という講演会を拝聴した話の続きです。

 この講演会に登壇した株式会社和える(あえる、東京都港区)の代表取締役の矢島里佳さん(2015年2月27日編をご参照)に続いて、株式会社せん(秋田市)の代表取締役の水野千夏さんが事業化している内容をお話しされました。

 株式会社せんの代表取締役の水野千夏さんは、「あきた舞妓」の事業化を2014年8月から始めました。単なる舞妓の復活事業かと最初は思いましたが、その動機は秋田市の再生という志(こころざし)の高いものでした。このため、秋田市の商工会議所などのメンバーが応援団になっています。



 水野さんは故郷の秋田県・秋田市(水野さんの生まれは秋田県の別の市ですが秋田市で育っています)の人口が年々減少しており、このままでは将来、秋田市が消え、そこに根付いた文化も消滅すると感じました。このため、故郷の秋田市に強い観光資源を再生し、秋田市が再び栄える道を考えました。そこでたどり着いたコンセプトは「秋田美人」という言葉でした。その秋田美人の再生を具現化したものが“あきた舞妓”という事業でした。

 秋田市には美味しい食べ物や素晴らしい観光資源があるにもかかわらず、人口が減って少しずつ寂れていっています。そのためには、県外から人を呼ぶ仕掛けをつくろうと考えます。調べてみると、秋田市の繁華街・歓楽街は以前、川反(かわばた)芸者という接客業の方々がいて賑わっていました。これを再生し、秋田市の観光の目玉にするという発想でした。

 水野さんは高校卒業後に上京し、神奈川県内の大学で学び、そのまま化粧品会社に就職します。しかし、将来もこのまま首都圏で生活することがイメージできず、約1年で秋田市にUターンし、観光業の会社に就職します。そこで秋田県・秋田市の魅力を考える内に、秋田市に観光客を呼ぶ仕組みが足りないと思ったそうです。

 そこで“あきた舞妓”事業を考えつきます。一般には舞妓や芸子(芸妓、げいぎ)は、従来のお茶屋制度によって若い女性に芸事を仕込んで一人前にします。これを、芸事を学んだ若い女性のコンパニオン的な“会える秋田美人”という派遣業として復活させます。“会える○○”はAKB48の影響でしょうか・・

 派遣条件は「1時間、2名からで、1時間当たり舞妓1人当たり1万円(プラス消費税)」と明解です。通常のお座敷派遣と同時に、観光イベントや企業広告イベントなどへの派遣も対応しています。派遣の際には、舞妓の指名はできない仕組みです(この辺が伝統とは異なります)。

 現在、“あきた舞妓”は3人います。



 この3人の募集の仕方が賢かったです。2014年4月14日に、水野さんは事業会社「せん」を設立し、その記者会見を開催します。記者会見によって、創業したばかりの会社の事業内容を地元のマスコミを通じて広報します。同時に、あきた舞妓のなり手を募集します。

 このあきた舞妓の募集が当たって、約30人も応募してきます。「舞妓になりたい」という志願者は不採用にし、「秋田観光を盛り上げたい」という意志を表明した3人を採用します。この3人に踊りや三味線などを学ばせています。「このお稽古事の費用が馬鹿にならない」と解説します。

 秋田市に人を呼び込む仕掛けの“あきた舞妓”事業は、秋田県・秋田市では話題を呼び、その事業のサポーターが増え、観光イベントなどに呼んでもらうことが増えているそうです。現在は、“あきた舞妓”の常設館も開設する計画を練っています。

 若い女性が秋田市の魅力を“温故知新”によって発掘・再生する事業は、地元で共感を呼び、順調に事業がスタートしたようです。起業の時は、起業目的を明確にすることが基本と感じました。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
若い起業家 (VC)
2015-02-28 07:11:09
今回の若い女性は、ずばり地方再生を実行しているかたです。自分の故郷を活性化する仕組み作りに励む地元の若者が増えれば、その地方自治体は活性化します。
自分たちで自分たちの働く場をつくり出そうとしている点に感心しました。
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地方再生 (魔方陣)
2015-02-28 08:41:04
日本は少子高齢化によって、人口が減っていきます。この結果、主要な巨大な都市部以外は人口減の影響を受けます。
このため、その地に育った伝統工芸や伝統の祭りなども参加者が減り、衰退していきます。人口が減ると、そこに住む若者の仕事が減り、ますます衰退します。
こうしたことを食い止めようと、若い女性が活性化事業を始めたことに感心しました。
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地方再生 (グラッパ)
2015-02-28 15:54:18
今回、ご紹介された女性の起業家のように、各地でその地方の再生策を競い合えば、大都市部への人口集中が止まり、それぞれが互いに良さを発揮するのではないでしょうか・・
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あきた舞妓 (だるま大師)
2015-04-15 20:19:59
今日のお昼の番組で、「あきた舞妓」を紹介していました。
このブログで紹介している水野さんの活動を紹介していて、とても賢い方と感じました。
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