ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

山口大発ベンチャー企業のTST社長の山口徹さんにお目にかかりました

2011年11月18日 | 汗をかく実務者
 TSテクノロジー(TST)は山口大学大学院の研究成果を事業化するために創業された山口大学発ベンチャー企業です。同社を率いる代表取締役は山口徹さんという20歳後半の若者です(本ブログでは2010年11月18日に一度、ご紹介済みです)。

 山口さんは同大学院の博士課程に在学中に、同社の事業計画を立案し、その事業化の可能性を求めて創業した起業家です。



 日本では大学院生がいきなり起業するのは、まだ珍しいことです(米国などの大学院では、多くの大学院生が在学中にいきなり起業するのですが)。同社は山口大と共同研究を行ったりするため、工学部のビジネスインキュベーション棟に入居しています。

 同社はフルネームではTransition State Technologyと表記され 、平成21年(2009年)6月23日に創業されました。山口大学大学院理工学研究科の分子設計研究室(堀憲次教授)の研究成果である、量子化学による理論計算によって化学合成の反応経路などを理論計算し、化学反応の最適な反応経路を見い出すことを事業化しています。

 同社のクライアントは化学メーカーなどです。新しい化学品を化学合成する際に、どんな化学反応の経路をたどらせると、実用面で優れているかを、量子化学による理論計算によって探ります。化学反応では、複数の反応が同時に起こることがあり、どの反応を優先させ、どの反応を抑えるかがカギになります。この複数の化学反応経路を理論計算で解くのが、同社の独創技術です。

 同社は、Diels-Alder反応という化学反応の分子の動きを動画サイトのYouTubeサイトで公開しています。



 その理論計算を素早く実施するために、並列高速コンピューターを利用しています。例えば、NGX-R12クラスターという、小さなスーパーコンピューター相当を導入しているそうです。計算ではソフトウエアとハードウエアの最適な組み合わせを提供するそうです。

 クライアントの化学メーカーは、同社に理論解析サービス(量子化学計算委託)を頼むと、最適な化学反応経路を算出してくれます。実際には、いくつかの化学反応を実験して最終的には化学反応経路を決めることになるのですが、化学反応経路の中で不合理な反応を予め、理論解析サービスの計算結果から除外できるので、実験費用が少なくて済みます。

 TSテクノロジーに委託研究費を支払っても、実際の実験経費が安く済めば意味があります。実験に使う人件費も削減できます。このコスト削減分が同社の事業モデルです。

 最近は、製薬業などの付加価値の高い化学品を合成する場合は、同社に理論解析サービスを依頼する可能性が高まっています。また、新しい触媒や導電性高分子などの化学反応などの委託研究が理論解析サービスの対象になっているそうです。

 山口さんのような若手起業家が日本でも増えると、日本の産業競争力が高まると期待しています。

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