○ 会社は誰のものかではありません。「誰のためのモノか」です。一言で言えばステークホルダーのモノですね。即ち、主なステークホルダーは、以下の3者ですね。
1) お客様&取引先-:お客様が気に入ってサービス・製品を買ってくれないと会社は存続しません。また、その会社は、他の会社(仕入元とか銀行等の取引先)のお客様ですから、お客様は循環するわけですね。
2) 役職員:企業の価値を創造するのは役職員以外いません。役職員が働いて付加価値を生み、価値ある製品・サービスをお客様が購入してくれてはじめて企業が存在するわけですね。
3) 株主:事業を起こす元手の提供者ですね。資本が無いと事業が出来ません。
これら3者に加え、国や地方公共団体、あるいは地域住民、投資家等も加えると、社会の為に存在する。従い、存在価値は、社会への貢献であり、また社会のためのモノ、即ち社会の公器ということになります。
○ 米国ではどれだけ、「会社は誰のためのモノか」という議論・考え方が確立しているのか知りません。「会社は誰のモノか」と言われると「株主のモノ」という単純な考え方が一般的かもしれません。もっとも、「株主のモノ」と考えても、年金基金等も株主ですから、周り回って従業員も間接的に所有者と言えるとは思いますが。
○ 企業価値には、いろいろな見方があります。従業員の立場から見た企業価値、顧客から見た企業価値、投資家・株主から見た企業価値があります。また、存在意義という社会学的な見方もありますが、どうも世間一般では、企業価値の単なる一面である経済的価値&投資家・株主から見た価値ばかり強調され、企業価値の極大化を、即ち、例えば株式時価総額(+有利子負債のエンタープライズバリュとかFCFの現在価値の総額等という見方もある)を上昇させることであり、これが経営者の責務であるような言い方をしている人がいます。あまりに単細胞の発想です。
○ 会社は誰のためのモノかを考えるときに、非常に示唆に富む理念を標榜し・体言し・実践している米国の会社があります。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)ですね。J&Jのコアバリューは、「我が信条(Our Credo)」ですね。企業理念・倫理規定として、J&Jが果たすべき4つの責任とその対象を明確にしています。↓これによると4つの責任を宣言しています。(4つ目だけ原文そのまま)
・ 第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。
・ 第二の責任は全社員に対するものである。社員一人一人は個人として尊重され、その尊厳と価値が認められなければならない。社員は安心して仕事に従事できなければならない。待遇は公正かつ適切でなければならず、働く環境は清潔で、整理整頓され、かつ安全でなければならない。
・ 第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。我々は良き市民として、有益な社会事業および福祉に貢献し、適切な租税を負担しなければならない。我々は社会の発展、健康の増進、教育の改善に寄与する活動に参画しなければならない。
・ 我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。事業は健全な利益を生まなければならない。我々は新しい考えを試みなければならない。研究・開発は継続され、革新的な企画は開発され、失敗は償わなければならない。新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。逆境の時に備えて蓄積をおこなわなければならない。
これらすべての原則が実行されてはじめて、株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。
日本の会社の中には、米国の軽薄な企業文化に染まりかけている会社もありますが、J&Jのような模範とすべき会社もありますね。