○ 監査役の職務と権限は、取締役の業務執行の法令・定款違反と著しい不当な行為をチェックすることですね。即ち、取締役の裁量的判断の妥当性のチェックはしません。監査を行い、これを報告にまとめないといけません。職務を執行する為に、調査権と子会社調査権(子会社は正当事由があれば報告・調査を拒む事が出来ます)を有します。義務としては、取締役会への出席と不正行為、法令・定款違反の事実・行為を発見したときは、取締役会(取締役会非設置会社は取締役)に報告をしなければいけません。
○ 監査役の監査の対象を、公開会社以外の会社(監査役会設置会社又は会計監査人設置会社を除く)では、定款の規定で、監査権限の範囲を会計監査に限定する事が認められています。
○ 会計監査人は、計算書類等の監査をする者ですので、監査対象が計算書類等ですが、対象が限られるだけで、権限としては監査役と同列に考えられますね。即ち、職務を執行する為に、会計帳簿の閲覧権を有し、報告を求めることが出来、子会社調査権を有します。
○ 計算書類等の監査等については、法436条で以下の様に規定しています。
1 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類(貸借対照表、損益計算書&会社計算規則91条に定める株主資本等変動計算書及び個別注記表)及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
2 会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
一 前条第二項の計算書類及びその附属明細書 監査役及び会計監査人
二 前条第二項の事業報告及びその附属明細書 監査役
○ 会社法施行規則129条では、監査役の監査報告の内容について定めていますが、同条2項では、「前項の規定にかかわらず、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社の監査役は、前項各号に掲げる事項に代えて、事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を作成しなければならない。」と規定しています。
○ 436条1項は欠陥規定ですね。括弧書が「ちょんぼ」です。なぜこんな書き方をするのでしょう。「計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、監査役(会計監査限定監査役を含む)の監査を受けなければならない。」と言いながら、規則129条で、「事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告書を作成」と言っています。法律の規定を規則が変更しているとも読みとれます。矛盾していますね。