まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

無機能取締役会の改革

2008-05-18 18:23:16 | 商事法務

     会社の先輩である会長・社長が人事権を持ち、例えば副社長以上の4-5人が業務を決定し、その単なる追認機関としての取締役会が決議を行い、取締役以下が業務を執行しているのが多くの日本企業の実態ではないでしょうか。取締役会の無機能化が言われて久しいですね。これの弊害を除去するため、特別取締役会の制度などが設けられていますが、特別取締役を置いている会社は殆ど無いのではと思います。従い、客観的で適正かつ経営陣の顔を伺う必要の無い独立取締役を増やすべきだという声が増えて来ています。

     社外取締役・社外監査役(定義は21516)については、会社法施行規則1244号で、活動状況・発言状況、その意見により決定が変更されたときはその内容等を事業報告に記載することになりました。ところが、多くの企業の事業報告では、取締役会への出席回数等を記載して、発言状況としては「中立かつ客観的観点から、当社の経営上有用な意見等を行っております」等と記載されています。要するに、思いついた素人のコメントを少し述べた、それを「有り難いご意見」ということで記載していると言うことだと理解しています。活動状況と記載していますが、実際は取締役会への出席回数ぐらいしか記載がありません。一ヶ月に1回ぐらい開催される取締役会だけに出るぐらいで、何がわかるのですか?

     業務執行取締役は、①代表取締役、②代表取締役以外の業務を執行する取締役(原則は業務執行取締役として選定された者:業務担当取締役(*)、あるいは選定業務執行取締役と呼ぶ人もいます)ですね。業務執行取締役と社外取締役をたとえて見れば、代表取締役は総理大臣、業務担当取締役は例えば経済産業大臣、国土交通大臣等ですね。社外取締役は無任所大臣ですね。専門でもない無任所大臣が、総理大臣や経済産業大臣間で協議し、閣議(取締役会)に出される議案に、反対して変更出来ますか?あるいは、変更している事例がどれだけありますか?ということですね。こんな制度が機能しますかということですね。

     対内的権限だけと学者は言っています。現実的には対外的権限を持っているのが一般的です。また、14条によれば、使用人、例えば部長でも権限を持ちます。実体を無視した考え方ですね。以下のBlogをご参照下さい。

http://masaru320.mo-blog.jp/business/2008/03/post_4818.html

     仮に、弁護士等に社外取締役に就任してもらえばどうでしょうか?今から違法な事をやりますので決議して下さい等と、取締役会に議案を出す馬鹿な人がいますか?ということです。

○ 小手先で、社外取締役・独立取締役を増やしても、殆ど効果は見込めないと思います。(効果が無いとはいいませんが)取締役会は活性化しないというのが、私の考えです。ではどのようにすれば活性化するか、機能を発揮するか考えてみましょう。取締役会活性化の方策は以下です。

     取締役の選任は累積投票で行う。即ち、大多数の企業で、累積投票を定款で排除していますが、定款を持ってしても排除出来ないように、即ち累積投票排除を禁止する事です。

     取締役候補の指名は、株主上位5社迄が指名する事です。即ち、株主総会で株主は取締役を選任しますが、候補者の指名も、長老の会長・社長から人事権を剥奪して、本来の株主が持つことです。株主は、どんどん株主提案権を行使して、役員選任議案を出しましょう。

     代表取締役以外の取締役の業務執行を禁止して、執行役に行わせる事です。委員会設置会社でなくても、多くの会社で採用している執行役員制度を活用することですね。代表取締役以外は、執行役と取締役の兼任を禁止しましょう。即ち、本来の趣旨である、取締役は単に取締役のメンバーであり、経営事項を決定する機関にすることですね。

     その他、取締役の人数を限定することですね。人数を、少なく絞り込み、取締役会では執行役などを呼んで、きちんと議論をし、意思決定をすることですね。

上記の①―④のポイントは、人事権を現会長・社長から取り上げ、業務執行は執行役に任せて、業務の決定・意思決定を取締役会で十分協議・検討しましょうということです。これが本来会社法が予定したことでしょ。上記を実施すれば、ねじ曲げられた取締役・取締役会制度を機能するものにできるでしょということです。こういった会社がでてきて欲しいですね。