まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

平取締役の監督義務の実効性

2008-12-02 10:02:35 | 商事法務

     取締役は種々の義務を負っています。会社法330条では、株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従うと記載されていますので、民法644条の善管注意義務を負いますし、会社法355条には忠実義務の規定があります。また、3624項には、大会社では内部統制システム構築義務も規定されています。その他に36222号では「取締役会は取締役の職務の執行の監督を行う」と規定されていることにより、この規定に従えば、代表権の有無に拘らず取締役会のメンバーである取締役は、(必要あれば自ら招集して)取締役会を通じて他の取締役の行為を監督する義務があるとされています。今回は、この監督義務の実効性についてです。

     整理すると以下ですね。

1】監督義務の対象者

1)     代表取締役は他の代表取締役の職務執行の監督義務がある。

2)     代表取締役は他の平取締役(主として業務執行取締役)の監督義務を負う。

3)     平取締役といえども、代表取締役の職務執行の監督義務を負う。(最判昭48.5.22民集275655頁)

4)     平取締役は他の平取締役の監督義務を負うとされている。

5) 業務執行を行わない取締役は監督義務の対象者となるのか?

2】監督義務の範囲

     取締役会に上程された事項(報告事項&決議事項)のみか、それともそれ以外の事項も含めるべきか?これについては判例(上記の判例等)/通説では、取締役会に上程されない事項についても監督義務があるとされているようですね。

     上記【11)&2)は当然のことなので、3)以下についてコメントをしましょう。

  まず【13)についてです。普通の企業は代表取締役に人事権を握られています。社外取締役も、代表取締役により指名されている例が多いです。平取締役が会長・社長の行った行為を監督し、これを問題視することは現実的には非常に難しいのが実情ですね。そうかといって法律上の建前としては、勿論監督義務を負うとしていいのですが。

  上記【14)について、大企業では一般的に平取締役といえども所管部門について一定の範囲内で権限を有し業務執行を行っています。自分の所管の事項について、他の平取締役からとやかく言われたくないし、相手もそうですから、相互に他部門の事は口を挟まない傾向にあります。従い、いきおいどんなことでも口を挟めるのは職能担当の役員ということになります。平取締役は他の平取締役に対する監督義務があるといわれても、実際はなかなか監督できません。また、担当役員が専決で行ったことの詳細情報など他の役員に情報がいきませんので、この意味からも実効性は乏しくなりますね。

  上記【15)についてです。理屈上は、平取締役は、取締役会の単なるメンバーですから、取締役会から業務執行権を付与されていなければ、例えば社外取締役等は業務を執行しないわけですね。業務執行を行わない取締役に対しては監督義務が無いとなりますが、業務執行権が無いにも拘らず業務執行するような取締役に対しては、当然その範囲で監督義務があるということになるでしょう。しかし、業務執行とは関係ない事項まで監督義務が及ぶか不明ですね。

 上記【2】についてです。取締役としては、他の部門の担当取締役がその権限内で行った業務執行について、取締役会以外でも社内情報回付等で報告を受けるでしょうけど、監督義務を果たせるにたる十分な情報は、社内の正式ルートからは入手できないでしょうね。現実的には、取締役会に報告・決議された事項ぐらいが最大の監督範囲だと思います。また、他部門の業務にはお互い関知しない風土の会社が多いですね。内政干渉になりますからね。それが企業における責任分担ということでしょう。

     では、上記の体質・実効性の無さをどのように改善すれば良いのでしょうか。それはやはりシステムを作ることですね。内部統制システムですね。他の部門でも内部統制違反の場合は、取締役会報告・決議事項にすることですね。それと眠っている?人もときどきいると思いますが、監査役も機能を発揮すべきでしょうね。企業でよくあるケースですが、やましい事は隠して行います。現実問題として、事務レベルなら上から政治的圧力がかからない限り指摘できます。しかし、役員レベルとなると、種々の政治的思惑なども出てきますので、職能担当役員以外は、監督義務の発揮というのは難しいと思っております。

コメント
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