○ 2008年10月27日に「基準日と株主総会の手続の省略」↓という表題でブログを書きました。これが予想外にアクセスされています。検索用語「基準日 省略」等で検索された方がご覧になっているようです。真面目な人が、臨時株主総会等を開催するときのスケジューリング等で悩んでおられるのかもしれません。
http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20081027
○ このブログでは、株主総会の手続省略を規定する法300条では、「前条の規定(招集の通知)にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。」としているが、前条には基準日の規定(124条)については何も触れられていないので、形式的には基準日公告をしないといけないことになっていると述べています。勿論、この基準日の規定は、世の中であまり遵守されていませんが。
○ 今回は、この基準日公告をしなかったこと、即ち総会招集手続きの瑕疵と総会の効力をどのように考えればよいかということですね。結論を言うと、総会後3ヵ月間、株主等から文句を言われなかったら(=総会決議取消の訴えの無い場合)、決議の瑕疵を争う余地が無くなり、瑕疵は治癒されます。基準日公告などしても、実際見ている人など殆どいませんね。いろいろ内紛のある会社は別ですが、仮に公告等しなくても、争いになる例などまずないですね。では、どういう理屈でこうなるのかですが、総会決議の瑕疵について整理して考えれば良いですね。
○ 株主総会の手続きあるいは決議内容に瑕疵がある場合とは、どういった整理になっているのでしょうか?瑕疵の軽重に応じて2つの制度がありますね。
― A瑕疵の程度が軽い場合:①招集手続や決議方法が法令・定款に違反、または著しく不公正の場合、②決議内容が会社の自治規則である定款に違反するとき、③特別利害関係人が議決権を行使した結果、著しく不当な決議がなされたとき等
― B瑕疵の程度が重い場合:①総会決議の内容が、法令に違反している場合、②株主総会そのものや、総会決議そのものが不存在である場合等ですね。
軽微な場合は、決議取消事由になるに過ぎず、形成訴訟の決議取消の訴え(831条)によって取り消されない限り、その決議は有効なものとして取り扱われますね。重い場合には決議の不存在又は無効の確認の訴え(830条)ですね。
しかし、具体的にどちらのケースに該当するか判断が難しい場合も多いのではないでしょうか。例えば、特定株主からの自社株有償取得の特別決議の場合、当該株主は議決権行使が出来ません。ところが議決権を行使してしまったらどうなるのでしょう。その株主の議決権を算入してもしなくても議案の成否に影響しない場合と影響する場合等、影響しなければ瑕疵の程度は低いですが、影響する場合は、やはり法令違反になるのかもしれません。
また、内部的規律である定款違反等は第三者にその瑕疵を主張する利益がないから、瑕疵の程度が低い等と言っている人がいます。果たしてそうですかね?例えば、自社が消滅会社として合併する場合だけ特別決議の議決要件を2/3以上では無く、3/4以上に定款で強化していたとき、うっかりこれを忘れて2/3と3/4の間で承認決議されたとき等は、反対株主の利益を無視しています、この場合瑕疵の程度が軽い等とは言えないのではないでしょうか。
「うっかり忘れ」という事は、実は世の中結構多いんですね。株主総会事務などは総務部に任せていますから、総務部の担当者のちょんぼが、ほいほいとそのまま通ってしまうこともあるのです。取締役や監査役がきちんと目を光らせておけばすんだのに、そのまま見逃すことも時々あります。なにしろ、大企業の取締役会等、かなりの企業が単なる形式・儀式ですから、きちんと内容を種々検討し議論などしていませんからね。それで、何事も起こらず済んでしまうこともありますね。
○ 会社訴訟は、会社・株主・債権者等関係者が多いので、法的安定性と画一処理が強く求められます。事案によっては登記の抹消などもあります。従い対世的効力(確定判決の効力を拡張して第三者に対してもその効力を有する。838条)が認められています。瑕疵の程度が低いものについては、831条に従い3ヶ月以内に決議取消の訴えを提訴して、その認容判決を得て遡及的に無効としない限り、決議は有効なものとして取り扱っていますね。