まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

矛盾放置の監査役制度

2009-11-11 00:32:23 | 商事法務

○ 監査役制度ほど機能していない制度も無いですね。原因はどこにあるのでしょうか。簡単です、法務省・学者(法制審議会会社法部会)の怠慢・放置・無作為が大きな原因の一つです。

       監査役の職務と権限は、取締役の業務執行の法令・定款違反と著しく不当な行為をチェックすることですね。即ち、取締役の裁量的判断の妥当性のチェックはしません。監査を行い報告にまとめないといけません。職務を執行する為に、調査権と子会社調査権(子会社は正当事由があれば報告・調査を拒む事が出来ます)を有します。義務としては、取締役会への出席と不正行為、法令・定款違反の事実・行為を発見したときは、取締役会(取締役会非設置会社は取締役)に報告をしなければいけません。

○ 矛盾している点・放置されてきた点をいくつか挙げてみましょう。

1)     計算書類というのは、公正妥当かどうかです。即ち公正妥当な会計処理の基準に合致しているかどうかです。妥当性チェックの権限を監査役に付与しないで、会計監査もやれとはどういうことですか?定款の規定で監査権限を会計監査に限定された監査役は、何をするのですか?会計監査のなかに何故妥当性監査をいれないのですか?

2)      社外監査役を増やして来ました。月に一度ぐらいしか来ない社外監査役に、どうして法令・定款違反の監査が出来るのですか?社内事情に詳しく。かつ社内のネットワークを持たなければ、どの部門で、どんな悪さをしているか・しようとしているか等わかりません。

3)     取締役会は正式の会議です。正式の会議で、違法なことやりますよなどという馬鹿なことを議題に計る取締役がいますか?

4)      内部統制は、監査役制度の無いアメリカの制度です。アメリカの猿まねです。なぜ日本では監査役を利用しなかったのですか?業務に組み込まれて構築されるから取締役の業務執行だと考えたのですか。統制環境・統制活動・情報と伝達・モニタリング等の内部統制の要素は監査役がきちんとやるべきですね。

5)      法令・定款違反の事実・行為を発見したら、それをやってる取締役がいる取締役会に報告するのはおかしくありませんか?取締役会ではなく、直接他の取締役に報告できる制度を作るとか、株主に報告出来る制度などが必要ですね。

6)      監査役の指名は代表取締役がしている例が多いですね。総会に選出議案を出すには監査役(会)の同意が必要ですけど、自分を選んでくれた取締役が指名するのを反対できますか?

○ 小手先の目くらましの監査役制度の変更は、頻繁に行われてきましたね。1993年に社外監査役を導入、2001年に要件を強化し員数を増やしましたね。監査役会の制度も作りました。任期については、もう行ったり来たりの何の思想もないですね。1950年に2年を1年に短縮し、74年にもとの2年に戻し、93年に3年に延ばし、2001年で4年に伸張されました。どうしようとしているのか、どういう方向性を目指すのか、全く不明です。

○ 内部統制制度構築の絶好の機会もあったのに、なぜこの機会を監査役に与えなかったのですか。なぜ、日本に導入するときに、会社法も現代化・大改正のときに、きちんと考えなかったのでしょうか?米国の制度を少し簡略化しただけの猿まねです。こういう発想・対応しか、日本の学者・法務省は出来ないのですか?