○ 新聞によれば、金融庁は金融商品取引法の内閣府令を改正し2010年3月期から上場企業などに役員報酬の公表を、有価証券報告書で義務付ける方針との事ですね。方向としは結構な話ですが、どこまで真剣にやるのでしょうね。差し当たり①役員報酬総額のほか、②支払形態や③報酬額の決定方法の開示だけのようです。これではあまりに不十分ですね。何の進歩もありません。会社法施行規則121条と殆ど同じです。役付役員以上は、役員報酬の個別開示をして欲しいですね。
○ 取締役の報酬等については法361条に規定されています。(監査役は387条)取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として受ける財産上の利益(=「報酬等」)については、定款に定めていないときは、総会決議による。総会決議では、確定額のときはその額、確定していないものについてはその具体的な算定方法、金銭でないものについてはその内容を定める事になっていますね。
○ 委員会設置会社は、報酬委員会がお手盛りで決められますね。一応、事業報告には、報酬内容の決定に関する方針を定めて記載しないといけませんが、きっちりやっているという振りをするということですね。取締役報酬は優秀な人材を確保し、監督機能を有効に機能させるため、また執行役報酬は、優秀な人材を確保し、業績向上のインセンティブとして有効に機能させるため等と記載しています。こんなもん書いたことになりませんね。
○ 事業報告の内容を定めた施行規則121条1項四及び六では、以下のように定めています。が、恐らく大半の会社が、下記の四のイの記載しかしていませんね。
四 当該事業年度に係る会社役員の報酬等について、下記区分に応じ、下記の事項
イ 会社役員の全部につき取締役、監査役等ごとの報酬等の総額を掲げることとする場合は、取締役、監査役ごとの報酬等の総額及び員数
ロ 会社役員の全部につき当該会社役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合は、当該会社役員ごとの報酬等の額
ハ 会社役員の一部につき当該会社役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合は、当該会社役員ごとの報酬等の額並びにその他の会社役員についての取締役、監査役等ごとの報酬等の総額及び員数
六 各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定に関する方針を定めているときは、当該方針の決定の方法及びその方針の内容の概要
○ 公表の方針について、伝統的経営者側には根強い抵抗があるようですね。何か後ろめたいことがあるのでしょうか?そうなんです。あるんです。日本の伝統的企業でトップに上り詰めた人は、必ずしも実力・実績・成果でその地位を得た人ではないですからね。それだけ会社に儲けさせたと、周りもその貢献を認めて納得している人では無いからです。実力会長・社長に取り入って、その後釜になった人も居ますね。大規模なM&Aに失敗したら責任とるとカッコ良いこと言ったくせに、数百億円も減損処理しても、社長は会長になった会社もあります。おまけに誰が見てもいまいちで能力のないのを執行役員にしたりしています。自分達を支える派閥形成もやってるわけですね。
○ 日本の伝統的大企業は、実力主義で役員になったりしません。自分の上司が偉くなって引き立ててくれた。その派閥でうまくやった。あるいは風見鶏でうまく立ち回った。社内政治でうまく立ち回った。ともかく運がよかった。会社では無く、社長・会長に尽くした。まあ、ある人によれば昔某ガス会社などはひどかったようです。公共企業のくせに。岡田時代の三越もそうだったかもしれません。いまだに程度の差はあるにしてもこういった風土の伝統的大企業もまだありますね。
○ 報酬の算定基準もきちっ基準が無い会社も多そうですね。従来の慣行等もありますが、ルールがきちんとしていません。役員以上には、会社への貢献とか言って、権利行使価額1円でストックオプション等をやったりしている会社もあります。しかも有利発行なのに総会の特別決議も取らずにですね。これは会社法違反です。