○ 前回少し触れましたが、今回は会社法449条1項についての「けち」です。449条1項では、資本金・準備金を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)、債権者は異議を述べることができるけれども、準備金のみ減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでないと定めています。即ち、債権者は異議を述べることが出来ない。従い、会社側としては債権者保護手続は不要ということですね。総会の決議だけで減少が出来るわけですね。
①号 定時株主総会において前条第一項各号(減少する準備金の額、全部・一部を資本金とするときは、その旨とその額、減少効力発生日)に掲げる事項を定めること。
②号 前条第一項第一号の額(減少する準備金の額)が前号の定時株主総会の日(439条前段に規定する場合にあっては、436条III項の承認があった日=会計監査人設置会社の場合は、取締役会承認のあった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
○ これを受けて会社計算規則151条では、「法449I②に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる額(零、零から分配可能額を減じて得た額)のうちいずれか高い額をもって欠損の額とする方法とする。」というよく分からない規定をおいています。
● ここでの疑問点は以下です。
(1) 定時総会では何を決めるのでしょうか。会計監査人設置会社以外では、計算書類の承認・確定ですね。3月決算会社で言えば、6月中下旬に定時株主総会を開催して、3月末現在の欠損金の金額が記載されている計算書類が確定されます。定時株主総会の日における欠損の額ではありません。取締役会で計算書類を確定できる会社(会計監査人設置会社)でも同様ですね。前期の決算の確定を行います。
(2)定時株主総会の日(会計監査人設置会社の場合は、取締役会承認のあった日)に、その日(あるいは前日最終の)欠損の額は、分かりますか。例えば、3月31日の決算期に決算日における欠損の額はわかりますか?ということですね。分かる分けないでしょ。
どんなにコンピュータが発達しても3/31に全部入力して、同時に決算調整して、その日あるいは4/1朝一番に前日の決算数字を出すのは現実的には無理ですね。例えば4月1日に取引先からの3/31付の請求書なりが到着したりします。インプットは4/1にならざるを得ません。現状一番早い会社でも4月5日ぐらいでしょうか?
その日の欠損の金額がその日に分かるというのは、現在のところあり得ません。実務上殆ど不可能です。法律で、不可能な事書いて良いのですか?
(3)定時株主総会の日における欠損の額というのは、当然決算手続を経て決めるものですね。
ですから、定時総会で3月末の決算承認・確定をして、更に総会の日における臨時決算をするという意味でしょうか?それは、上記の通り現実的には無理ですね。
(4) 定時総会というのは、毎年一回しか行われません。当然ですね。3月決算会社は、通常6月に総会を行います。この総会では上記通り前期決算の承認・確定を行います。つまり、「定時株主総会の日における」という文言は、その日に決めないと、翌年の定時総会では、またその直前期の決算承認が行われるのです。つまり、この文言は、定時株主総会の日において欠損の額を決めて、その定時総会で決めない限り出来ないということですね。私に言わせれば、この規定は「何が言いたいねん!」ですね。削除した方が良いのではないですか。
全く不思議な文言です。まあ、実際は、定時総会の日では無く決算期の欠損金の額を準備金から減少する総会決議をしていますけどね。