○ 先のブログで、監査・監督委員会設置会社制度の創設は馬鹿げていると言いました。今回は、「親会社による子会社株式等の譲渡」についての「けち」です。法制審議会会社法制部会で決定された要綱案の該当箇所(P14)には、下記のように記載されています。<o:p></o:p>
○ 「株式会社は,その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡をする場合であって,次のいずれにも該当しないときは,当該譲渡がその効力を生ずる日(以下3において「効力発生日」という。)の前日までに,株主総会の特別決議によって,当該譲渡に係る契約の承認を受けなければならないものとする。<o:p></o:p>
① 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)を超えないとき。<o:p></o:p>
② 当該株式会社が,効力発生日に,当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有するとき。」<o:p></o:p>
○ 現行会社法467条(事業譲渡等の承認等)の規定で、総資産の1/5超の資産を譲渡する場合の特別決議による承認と同じ趣旨で、企業グループ・連結で考えれば株式譲渡等でも同じではないかという事で、会社法改正に盛り込まれたものだと思います。米国の模範事業会社法でも同じような規定をおいています(§12.02)。<o:p></o:p>
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○ この要綱案っておかしくないですか?「いずれにも該当しないとき」と言っています。つまり①にも②にも該当しないときという意味ですよね。①では「1/5を超えないとき」と言っていますので「該当しないとき」とは「1/5を超えるとき」ですので、これに加えて②でも該当しないときは総会特別決議が要るということですね。従い、②のケースでも①と同様に、「議決権総数の過半数を有しないとき。」と記載しないといけないと思いますね。即ち、今の「過半数の議決権を有するとき」では、「該当しないとき」は「有しないとき」ですから、10%や20%の場合に総会特別決議が必要となり、50%超の株式譲渡は特別決議不要となりますね。要綱案の書き方が「ちょんぼ」しているのでしょうか?
会社法制部会の委員には、有名大学の多くの教授、有名東京地裁判事等錚々たる人が就任しています。要綱案をきちんと読んでるんでしょうかね?<o:p></o:p>
○ 株式による会社支配権の移動は、事業譲渡等と違って、やはり迅速性が必要なのではないでしょうか。確かに独禁法の企業結合の事前届出制度ができて(昔は事後の株式保有報告でしたが)、一定規模以上の場合には、20%/50%超の場合には30日(届出日は届出書を公取に持ち込んだ日ではないので要注意)の取得禁止期間が出来ました。子会社株式譲渡で、特別決議が必要となると、大きな企業では総会開催に2ヶ月必要ですし、迅速性が無いですね。また、会社法で定めると小さな企業集団の小さな規模の株式譲渡にも総会特別決議が必要ですね。確かに株主の意向を無視して経営陣が行う危険性はありますが、有力株主には事前説明をして、内諾を得てから行うのがビジネス界の常識ですから、わざわざ会社法で規定することもないと思います。
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○ 株式譲渡だと抜け道が出来るのではないでしょうか。例えば、100%子会社の売却ですね。まず50%を売却して、翌日に1株を別の会社、あるいは買収企業の関係者個人に第三者割当増資をすれば、旧親会社は50%未満になりますね。いろんな規制が出来ても、いろいろ違法ではない抜け道ができるものです。
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