とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

新国立劇場で『かもめ』を見ました

2019-04-22 19:08:07 | 演劇
 2019年4月20日(土)13:00
 スタッフ
  作:アントン・チェーホフ
  英語台本:トム・ストッパード
  翻訳:小川絵梨子
  演出:鈴木裕美
 キャスト
  アルカージナ:朝海ひかる
  トレープレフ:渡邊りょう
  ソーリン:佐藤正宏
  ニーナ:岡本あずさ
  シャムラーエフ:俵木藤汰
  ポリーナ:福麻むつ美
  マーシャ:伊勢佳世
  トリゴーリン:須賀貴匡
  ドールン:天宮良
  メドヴェジェンコ:松井ショウキ
  ヤーコフ:山崎秀樹
  料理人:高田賢一
  小間使い:中島愛子

 チェーホフの『かもめ』は最初の湖畔での劇中劇の前衛性とラストシーンの衝撃によって私にとってとても気になる作品ではあった。しかし、何度見てもその良さがよくわからなかった。最近になり少しずつこの作品の良さがわかり始めた。今回の『かもめ』はとてもおもしろく感じた。登場人物の愚かさと、人間らしさがからみあって話が進行する「演劇」が本質的に持つよさが感じられたからだ。

 第一幕の印象はよくなかった。役者の演技がオーバーすぎて、素人くさく感じてしまったのだ。しかしそれがだんだんと収まっていく。つまり素人臭いオーバーな演技は演出家の意図だったのだ。なぜこういう演出をしたのか。考えてみると、演技のブレがなかったのはアルカージナだけである。つまり役者は変化しなかった。第一幕でオーバーな演技をしていた人物も徐々に役者になっていく。そしてこの芝居の板についていくのである。人生は演劇である。「かもめ」のはく製がその象徴となっている。

 今回の演劇の特徴は二つある。ひとつはオールオーディションということだ。失礼ながら私にとっては普段あまり見ることがない役者さんたちが多く出ているが、適材適所であり演出家の意図がしっかりと感じられるキャスティングになっていた。だから演出の意図が伝わりやすかったのではないか。また準備に時間をかけることもできたのだろう。しっかりとした舞台になっていた。

 もう一つは、トム・ストッパードが英訳したものを翻訳したことである。トム・ストッパードが英訳したさい、かなりテキストをいじっている。それによってわかりやすくなったのは確かだ。しかしチェーホフこれが許されるのだとすれば、台本の改変はどこまで許されるのかが問題になっていくだろう。

 いずれにしても何度も見続けることは大切なことなんだと学んだ芝居だった。『かもめ』という芝居のすばらしさを改めて知ることができたいい演劇だった。

コメント
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