戦争の悲惨さと、人間の美しさを訴える好舞台でした。
作・演出 野田秀樹
キャスト 松たか子 上川隆也 広瀬すず 志尊淳 橋本さとし 小松和重
伊勢佳世 羽野晶紀 野田秀樹 竹中直人 他
源平の争いと「ロミオとジュリエット」がモチーフになっています。平清盛の子供「平ロミオ」と、源義仲の子供「源ジュリエ」の禁断の愛が物語の軸です。ロミオは若い時は志尊淳、年配になってからは上川達也が演じます。同じようにジュリエは広瀬すずと松たか子が演じます。なぜ二人に分けなければいけなかったのかは、今のところ私には理解できていません。
ロミオとジュリエは源平の歴史の示す通り決して結ばれることはありません。ロミオは源平の争いが終わった後、戦犯としてシベリアに島流しになります。ロミオだけは恩赦もおりずにシベリアに一人取り残されます。このシーンは「俊寛」と重なります。ロミオの悔しさは心を打ちます。
しかしロミオはすでに名もなき戦士となっていました。戦争でも、戦争が終わってから島流しになってからの過酷な生活においても、名もなき戦士はモノのように扱われ、次々と死んでいなくなります。名もなき戦士の屍の山にこそ、戦争の真実があることをこの芝居は訴えます。しかし一人一人には本当は名前があり、愛の物語があります。ラストシーンは、名もなき戦士の屍一人一人がそれぞれの物語の光を放つような演出がなされます。美しいラストシーンでした。
ただし巨大な銃撃音や、くり返される竹刀を打ち付ける音など、暴力的な音が私にはきつく感じました。