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とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

新国立劇場で『タージマハルの衛兵』を見ました。

2019-12-22 18:53:17 | 演劇
 横暴な権力が人々を苦しめる状況が描かれる。これは誇張した形で描かれるのではあるが、社会の状況を考えると誇張とは思えない。権力に追い詰められる人民の苦悩がリアルに伝わってくる。

 作 ラジヴ・ジョセフ
 翻訳 小田島創志
 演出 小川絵梨子
 キャスト 成河 亀田佳明

 舞台はタージマハル建設中のムガル帝国。登場人物はフマーユーンとバーブルの2人。タージマハルの建設現場で夜通し警備をするのだが、タージマハルの完成したとき、その建築責任者が褒美として、働いた2万人がそのタージマハルを見ることを認めてもらうことを願いでる。それに起こった皇帝は2万人の手を切る命令を出す。ふなゆーんとバーブルが手を切り落とす役目を与えられる。それをやり終えた二人は精神的に壊れていく。そしてさらに悲劇は連鎖していく。

 この作品は「ことぜん」シリーズの第三弾である。「ことぜん」とは「個人」と「全体」の関係を描く作品を連続上演する企画の名称だ。

 現在の日本の状況を見ると、国家のために「個」を見失っている人が多い。それが本当に国家のためならばわからなくもない。しかし実際には一部の権力者のわがままのためなのだ。人間は自分のやっていることに正義を求める。だから自分のやっていることが客観的に見れば悪でも、自分で理屈を捻じ曲げて正義にしてしまう。自分は正しいことをしていると思いこんでいる。今、安倍政権に忖度している官僚はみんなそうなのだろう。こうなってしまえば悪の連鎖は終わることはない。

 健全なる「個」を取り戻すためには、健全なる「全体」を築く必要がある。それは簡単なことではない。しかし諦めてはならない。やはり大切なのは健全な「個」を育てる努力である。正義を見つめる「個」の努力である。
深く考えさせられる作品であった。
コメント (2)
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映画『家族を想うとき』を見ました

2019-12-22 08:26:50 | 映画
 生活を向上させるためには過酷な状況でも働かなくてはならない。しかし過酷な労働は家族の時間を奪っていく。現代の日本にも通じる問題を冷静な目で描写する佳作だ。

 監督はケン・ローチ。

 リッキーとデビーにはふたりの子供がいる。リッキーは家族のために家族のために運送業を始める。週6日の14時間労働である。(日本の学校の教員も同じようなものだ。)デビーは訪問介護の仕事をしている。さまざまな問題があるために毎日ストレスをためていく。

 ふたりの子供も問題を抱えている。家族の時間が必要なのに、家族の時間がとれない。家族はバラバラになっていく。しかし生きていくために働かなければならない。問題が発生すると、その問題を解決するために次の問題が生まれる。修復する時間がないまままた次の問題が生まれる。こうして家族に悲劇の循環が続いていく。

 サッチャー政権はイギリスに格差を生み出したと聞く。その経済政策を追随した日本でも今や格差は広がる一方である。この映画の問題は日本の問題そのものである。果たして家族は家族を取り戻せるのか。現代人に突き付けられた大きな問題である。

 この映画は押し付けることはなく、現実を描写している。このリアリティが見るものの心に届く。
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