とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『ルースエドガー』を見ました。

2020-07-26 09:25:34 | 映画
 映画『ルースエドガー』を見ました。人種差別をこれまでとは違った角度から描いた作品です。小さいころに身に付けたものは、結局は人間の思考を作ってしまいます。時にはそれは偏向した思考になります。その思考はゆがみを生み、そのゆがみが悲劇を生んでいきます。これはアメリカ人だけの問題ではありません。世界中の人々の突き付けられる問題であり、逃げてはいけない問題です。

監督    ジュリアス・オナー
出演者  ケルヴィン・ハリソン・Jr オクタヴィア・スペンサー ナオミ・ワッツ ティム・ロス

(あらすじ)
エドガー夫妻(ピーターとエイミー)は紛争が続くエリトリアから子供を一人養子に取った。それから10年後、ルース・エドガーは学業とスポーツの両面で優れた成績を収める高校生へと成長した。ルースはその人柄の良さもあって近所の人たちから愛されていた。ルースが通う高校で教鞭を執るハリエットは「ルースの活躍によって、アフリカ系の同級生たちは良い刺激を受けることだろう」と確信していた。そんなある日、ハリエットが宿題を採点していると、ルースの出してきたレポートにフランツ・ファノンにまつわる急進的な思想が見え隠れしていることに気が付いた。ハリエットは「青年には良くあることだ」と思ったが、どうにも不安になったため、ルースのロッカーをチェックすることにした。最悪なことに、ハリエットの嫌な予感は的中してしまったのである。

 ルースはスピーチで自分の名前について語ります。ルースは、生まれ育った土地で自らのアイデンティティを尊重する思想を身に付けていました。ところがルースはアメリカ人の養子になります。そして自分の本来の名前を棄てられて、アメリカ人としての名前を与えられたのです。ルースはスピーチではそれを前向きにとらえていますが、映画を見ている人はそれがルースをゆがめていく原因となったのだと気づきます。本来の自分を棄てさせられ、品行方正な「アメリカ人」になってしまったのです。無理がゆがみを生みます。

 エドガー夫妻はルースを愛しています。しかしそれは自分たちが「ルース」と名付けた想像上の優等生を愛しているにすぎません。本来の「ルース」を愛しているわけではないのです。両親はその偽善に次第に気づいていくのですが、それを認めることは自分の心の醜さを認めることです。だから無意識に隠そうとします。冷静な逆に判断しなければいけないことも、知らず知らずに自分が許されるような判断を繰り返していきます。

 「世間」というのはそのような無意識の偽善によって形成されていきます。この映画はその構造を見事に見せてくれます。いい映画でした。




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