東京都は、今年4月以降に教員や都や市区町村の技術系の職員として採用された人に対し、奨学金の返還を最大150万円支援する方針だという。おそらく多くの人は肯定的に捉えるだろう。しかしこの安直な方針は本当にいいことなのか。
1点目。まず考えてほしいのは東京だからできる政策だということだ。東京だけ人が減らない。東京だけ景気がいい。地方はどんどん人が減る。どんどん人が減るから税の収入も減る。そんな中で教員の志望者も減っているのだから、東京のようにできるわけではない。本来ならば国がやるべきことを東京がやっているのだと、都知事は胸を張るのかもしれないが、そんなスタンドプレーはおかしなことなのではないか。もしこんなのが許されるならば、地方の人口減が加速しかねないではないか。
2点目。なぜ教員と技術者だけなのか。人手不足はあらゆる業種で喫緊の課題である。教員だけではあるまい。特に日本の未来を考えた時、科学技術を担う人材を多く必要としている。だから理系の生徒に対する学費の援助の方を優先すべきであろう。
3点目。そもそもの問題は日本の教育予算が少なすぎるということだ。人気取りのために高校無償化を優先してしまったが、それと同時に大学の学費の負担を援助するような政策も考えなければいけないはずだ。どれだけの学費援助の予算がさけるのか、そしてその額をどう振り分けるか、そういう全体を見た政策をしないで、思い付きで票になりそうな政策を行っていく。それでは未来が見えて来ない。
さまざまな要素が絡み合っている問題を単純化し、人気につなげる。そんな権力が小池氏にあるのは、東京がそもそも金持ちだからなのであり、地方は消えて行くしかないという気持ちになる。