映画『グランメゾン・パリ』を見ました。展開は雑でしたが、ラストの料理は見ているだけで満足になりました。料理シーンだけでも映画になると感じました。
大人気テレビドラマの映画化です。ドラマなので大人から子供まで受けるように作られているのはわかるのですが展開が雑すぎます。
木村拓哉演ずる尾花はパリで2つ星シェフです。2つ星シェフは相当すごいです。それなのに3つ星を取らなければならないと必死です。唯我独尊状態になり、みんなが引いていきます。オーナーを含めた重要な客を呼んでのディナーでひどい料理を出してしまって、店の立ち退きを要求されます。
尾花が3つ星をとれないのは、食材の仕入れで差別的な扱いをされているからです。パリではよそ者にいい食材を売ってくれません。だから3つ星になれないのです。このあたりの描き方が雑すぎます。いくらなんでもフランス人を馬鹿にしすぎています。借金取りのヤクザもフランス人を馬鹿にしています。こんな雑な展開はうんざりです。
もう一つ3つ星をとれない理由があります。鈴木京香演ずるスーシェフの倫子さんが、コロナのせいで味覚障害になってしまったのです。それを倫子さんは隠しています。しかし尾花は気付いています。これはありえない。高級レストランのシェフが味覚障害になってそれを隠しているなんてあるはずがないじゃないですか。しかもシェフが気付いていながら気づかないふりをしているなんてありえない。いくらドラマのようにわかりやすい展開を考えたからと言って、ここまで雑で許されるはずがないじゃないですか。
それ以外にもいろいろ雑な面ばかり見えて、いやになってきたところで、展開が逆転し、料理の場面になります。これがいい。本当に素晴らしい料理の数々に驚いてしまいます。もちろん素人なので、その料理がどれだけのものなのかは実際にはわかりません。しかし、工夫や見かけ、そして想像させる味など、映画だからこその見事な料理です。この場面だけでも見て損はしません。
せっかく料理に時間をかけていい場面を作り上げたのですから、前半をもう少し丁寧に作ったら、本当に素晴らしい映画になったと思います。